外部性とは・外部不経済と外部経済
30秒でわかる外部性
外部性(外部効果)は、ある人や企業の活動が、市場の売り買い(価格)を通さずに、ほかの人の費用や満足を変えることです。工場の排水が下流の漁業の費用を増やすように損をさせるものを外部不経済(負の外部性)、得をさせるものを外部経済(正の外部性)と呼びます。
企業がもう1個つくると自分の費用が増える額を私的限界費用(PMC)、その1個で周りの人に新たに生じる費用を外部限界費用と呼びます。外部不経済を正すために政府が1個あたりにかける税をピグー税と呼びます。
社会的限界費用(SMC)
社会的に最適な量
ピグー税(1個あたり)
先に読む論点余剰分析
企業は自分の費用だけを、買い手は自分の便益だけを見るので、外部不経済ならつくりすぎ、外部経済ならつくらなすぎになります。外部費用を本人の損得に入れさせることを外部性の内部化と呼びます。
試験での出方
| 地方上級 | ★★★ | 特別区Ⅰ類 | ★★ |
|---|---|---|---|
| 市役所 | ★★ | 国家総合職 | ★★ |
| 国家一般職 | ★★★ | 国家専門職 | ★★ |
図の面を選ぶ問題・計算・文の正誤の3つの形がそろい、必修の問題も多い論点です。
よく出るタイプ
外部性の問題は、次の5つのタイプに分けられます。カードを押すと、そのタイプに切り替わります。
- タイプ1負の外部性と余剰図の面から死荷重・外部費用・総余剰を選ぶ
- タイプ2正の外部性SMCがPMCの下。つくる量が少なすぎる
- タイプ3ピグー税の計算総費用と外部費用の式から税額・税収を出す
- タイプ4合併と当事者どうしの交渉2企業の合併・コースの定理
- タイプ5排出権取引排出権の均衡価格を出す
このほか、外部性の種類(技術的外部性・金銭的外部性など)の文の正誤も出ます。用語の意味はまとめのタブの表にあります(必修の1問を解く)。
基本の図私的限界費用と社会的限界費用
外部不経済の図の読み方(社会的限界費用と死荷重)
- 需要曲線:買い手が払ってもよい額の線(D)。この市場では P=120−Q
- 私的費用:企業が自分で負担する限界費用の線(PMC)。P=20+Qわかること完全競争の企業は価格とPMCが等しくなる量をつくるので、PMCが市場の供給曲線になる
- 社会的費用:PMCに外部限界費用40円を縦に足すとSMCわかること1個つくるたびに周りの人が負う40円も社会の費用なので、SMCはPMCのちょうど40円上を通る
- 市場の均衡:DとPMCが交わる点Eで50個・70円わかること企業はPMCしか見ないので、市場はここに落ち着く
- 社会的最適:DとSMCが交わる点Fで30個・90円わかること周りの人の費用まで入れると、30個までが社会の得になる
- 死荷重:30個を超えて50個までは、SMCがDより上わかること社会の費用が買い手の払ってもよい額を上回る分が、三角形の400円だけ失われる
- ピグー税:1個40円の税でPMCが40円上がり、SMCとぴったり重なるわかること企業が選ぶ量が点Fの30個になり、死荷重が消える
図の見方
- 需要曲線(D)の高さは、最後の1個に買い手が払ってもよい最大の額で、社会にとっての「1個の値打ち」と見ます(消費の側に外部性が無いとき)。
- PMCの高さは、最後の1個に企業が自分で払う費用です。1人では価格を動かせない市場(完全競争)では、PMCが供給曲線です。
- 外部限界費用は、PMCとSMCの縦の差です。この市場では1個40円で一定なので、SMCはPMCを40円上へ平行に動かした線です。外部限界費用が量とともに増えるなら、SMCはPMCより急になります(タイプ3)。
- 点E(DとPMCの交点)が市場の均衡、点F(DとSMCの交点)が社会的に最適な点で、外部不経済ならEはFより右です。
このページでは、この市場(需要曲線 、PMC 、外部限界費用40円。 は価格〔円〕、 は数量〔個〕)を「基本の市場」と呼びます。社会的総余剰は、消費者余剰と生産者余剰の和に、税収と外部便益を足し、外部費用と補助金の支出を引いたものです。
| 面積 | 図のどこか | 基本の市場 |
|---|---|---|
| 消費者余剰+生産者余剰 | 市場の量までの、Dの下・PMCの上 | 2,500円 |
| 外部費用の総額 | 実際につくった量までの、PMCとSMCの間の帯 | 2,000円 |
| 社会的総余剰 | 上の2つの差 | 500円 |
| 死荷重 | 最適な量から市場の量まで、SMCの下・Dの上の三角形 | 400円 |
タイプ1負の外部性と余剰(図)
外部不経済の余剰と死荷重の求め方
見分け方:「外部不経済(負の外部性)」の図に D・PMC・SMC と、ア〜カのような面があり、死荷重・外部費用・総余剰・税収などを面の和で選ばせます。
なぜそうなるか外部費用を引くと、余剰の一部が打ち消し合う理由
余剰の和と外部費用の帯は市場の量まで重なっているので、引き算すると重なった所が消え、最適な量までのDとSMCの間の三角形(900円)から死荷重の三角形(400円)を引いた額が残ります。
- 市場の均衡:介入しないと点Eで50個つくられる
- 2つの余剰:消費者余剰と生産者余剰の和は、50個までのDとPMCの間わかること1250+1250=2500円
- 外部費用:50個までのPMCとSMCの間の帯わかること1個40円が50個ぶんで2000円。Dより上にはみ出した部分も入る
- 差し引き:重なった所は打ち消し合うわかること残るのは30個までのDとSMCの間の900円から、死荷重400円を引いた500円
判定のしかた
- 1
交点を2つ決める
市場の均衡はDとPMCの交点、最適はDとSMCの交点です。外部不経済ならSMCが上なので、最適が左です。 - 2
外部費用は帯の全体
実際につくった量(介入しないなら市場の量)までの、PMCとSMCの間の帯です。Dより上の部分も入ります。 - 3
死荷重はDより上の三角形だけ
最適な量を超えた区間の帯はDで上下に分かれ、死荷重は上(SMCの下・Dの上)の三角形だけです。 - 4
税収は長方形
ピグー税の税収は、税額×最適な量の長方形です。外部限界費用が一定(2本が平行)なら、最適な量までの外部費用の帯と同じ面積、0から量に比例して増える(2本の直線が縦軸の同じ点から開く)なら帯は三角形で税収の半分です。どちらでもなければ別々に求めます。
例で確かめる基本の市場にピグー税をかける
基本の市場で、1個40円のピグー税を課します。企業の限界費用は PMC+40円=SMC になり、生産は30個、買い手の払う価格は 円、売り手の手取りは 円です。
- 課税後:点Fで30個。買い手が払うのは90円、売り手の手取りは点Gの50円
- 2つの余剰:消費者余剰は90円より上の450円、生産者余剰は50円より下の450円
- 税収:40円が30個ぶんで1200円わかること90円と50円の間の長方形
- 外部費用:30個までのPMCとSMCの帯で1200円わかること税収の長方形(灰)と面積が同じなので、足し引きすると0になる
- 総余剰:残るのは消費者余剰450円と生産者余剰450円わかること合わせて900円
| 項目 | 課税前 | 課税後 |
|---|---|---|
| 消費者余剰 | 1,250円 | 450円 |
| 生産者余剰 | 1,250円 | 450円 |
| 税収(足す) | 0円 | 1,200円 |
| 外部費用(引く) | 2,000円 | 1,200円 |
| 社会的総余剰 | 500円 | 900円 |
税額がピグー税(最適な量での外部限界費用)なので、社会的総余剰は 円増え、課税前の死荷重 円と一致します。
外部不経済の例題(社会的総余剰)
自分で解いてみる外部不経済の例題(社会的総余剰)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 3
SMCは です。市場の量は より40個、最適な量は より30個です。
最適な量までのDとSMCの間は 円です。死荷重は、40個でのSMCの高さ 円と需要曲線の高さ 円の差20円を高さ、 個を底辺とする三角形で 円です。社会的総余剰は 円で、正解は3です。
1,200円は外部費用を、900円は死荷重を引き忘れた値です。725円は死荷重を三角形でなく、30個から40個までのPMCとSMCの間の帯全体(175円)として引いた値、400円は外部費用の総額です。
タイプ2正の外部性
外部経済(正の外部性)と補助金
見分け方:問題文に「外部経済(正の外部性)」とあります。生産の外部経済なら、図ではSMCがPMCより下にあります。使うことで周りが得をする場合(消費の外部経済。予防接種など)は、需要曲線に周りの得を足した社会的限界便益(SMB)の線が描かれます。
なぜそうなるか外部経済だと、つくる量が少なすぎる理由
企業は周りの得を受け取れないのでPMCで量を決めますが、社会全体の費用(SMC)はそれより低いので、最適な量は市場の量より多く、足りない分の三角形が死荷重です。
- 曲線:SMCはPMCの20円下わかること1個つくるたびに周りの人が20円ぶん得をするので、社会全体で見た費用はその分だけ安い
- 市場の均衡:DとPMCが交わる点Eで40個わかること企業は周りの人の得を受け取らないので、PMCで量を決める
- 社会的最適:DとSMCが交わる点Fで50個わかること市場の量は最適より少なすぎる
- 死荷重:40個から50個までは、DがSMCより上わかることつくれば社会の得になるのにつくられない分の三角形100円
判定のしかた
- 1
線の上下を確かめる
生産の外部経済ならSMCはPMCの下(消費の外部経済なら、SMBが需要曲線の上)。市場の均衡は左の交点、最適は右の交点です。 - 2
死荷重は足りない区間の三角形
市場の量から最適な量までの、Dの下・SMCの上の三角形です(消費の外部経済なら、SMBの下・PMCの上)。 - 3
外部便益の総額は帯
実際につくった量までのPMCとSMCの間です(消費なら需要曲線とSMBの間)。補助金で量が増えると、Dより上の部分も入ります。 - 4
政策の向き
最適な量での外部限界便益と同じ額の、1個あたりの補助金でPMCを下げます。課税すると量がさらに減って逆効果です。
例で確かめる補助金で最適な量にする
需要曲線 、PMC の市場で、1個つくるごとに周りの人が20円得をします(SMCは )。市場の量は より40個、最適な量は より50個です。
- 補助金前:点Eで40個
- 補助金:1個20円でPMCが20円下がり、SMCに重なるわかること企業が選ぶ量が点Fの50個になる
- 支出:20円が50個ぶんで1000円わかること50個までのPMCとSMCの間の帯(2本が平行なので長方形と同じ面積)
- 死荷重:補助金の後の総余剰は前より100円大きいわかること増えた10個ぶんの三角形(死荷重)が消えた分
| 項目 | 補助金なし | 1個20円の補助金 |
|---|---|---|
| 消費者余剰 | 800円 | 1,250円 |
| 生産者余剰 | 800円 | 1,250円 |
| 外部便益(足す) | 800円 | 1,000円 |
| 補助金の支出(引く) | 0円 | 1,000円 |
| 社会的総余剰 | 2,400円 | 2,500円 |
売り手は価格50円に補助金を足して 円を受け取ります。総余剰の増加は、死荷重 円と一致します。
外部経済の例題(死荷重)
自分で解いてみる外部経済の例題(死荷重)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 2
SMCはPMCより15円低い です。市場の量は より20個(価格40円)、最適な量は より30個(価格30円)です。死荷重は、20個での需要曲線の高さ40円とSMCの高さ 円の差15円を高さ、 個を底辺とする三角形で 円です。正解は2です。
150円は2で割り忘れた値、300円は市場の量での外部便益の総額、450円は補助金の支出総額(15円を30個ぶん)、50円は高さを価格の差10円にした値です。
タイプ3ピグー税の計算
ピグー税の求め方(税額・税収)
見分け方:需要曲線・総費用 に加えて、外部費用(1個あたりか総額 )の式があり、最適な量・税額・税収を聞かれます。
なぜそうなるか税額を「最適な量での」外部限界費用にする理由
課税後の企業は PMC+税額=価格 の量(図の点T)をつくるので、最適な量で PMC+税額=SMC、つまり税額=最適な量での外部限界費用にします。小さくても大きくても死荷重が残ります。
税額 40円・生産量 40個・死荷重 0円
使える条件:完全競争で、1個あたり一定額の税のとき。外部限界費用が一定なら税額はその額です。
解き方の手順
- 1
総費用を微分して限界費用にする
「もう1個つくると増える費用」は総費用を微分して出します。使うのはべき乗の微分だけで、 を微分すると です。 のような1乗の項は に、数だけの項は0になります。 なら です。 - 2
外部費用も微分して足す
外部費用の総額 も微分して外部限界費用にし、PMCに足します。被害が排出量の式で与えられたら、「排出量=3Q」のような式を代入して、生産量 の式にしてから微分します。 - 3
需要曲線=SMCで最適な量
需要が「数量=…」なら、先に「価格=…」に直します。 - 4
最適な量で税額を測る
税額=最適な量での外部限界費用、税収=税額×最適な量です。課税前の量で測りません。
例で確かめる外部費用が総額で与えられたとき
需要曲線 、私的な総費用 、外部費用の総額 の市場で、ピグー税の税額と税収を出します。
- 微分して、PMC=、外部限界費用=、SMC= です。
- より、最適な量は40個です。
- 税額は 円、税収は 円です。課税後の企業は より40個を選びます。
- 3本の線:需要曲線D、PMC=10+Q、SMC=PMC+外部限界費用(20+0.5Q)=30+1.5Q
- 最適:DとSMCが交わる点Fで40個・90円
- 税額:40個でのSMCとPMCの縦の差わかること90−50=40円
- 誤り:課税前の60個で測るとわかること60個でのSMCの高さ120円とPMCの高さ70円の差で、120−70=50円。課税後の企業は60個をつくらないので、この差は使わない
- 税収:40円が40個ぶんで1600円
課税前の60個で測ると 円で、税が大きすぎます。この市場では、外部費用の帯(1,200円)と税収(1,600円)は別々に求めます。
ピグー税の例題(税収)
自分で解いてみるピグー税の例題(税収)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 4
微分すると、PMC=、外部限界費用=、SMC= です。 より最適な量は10個です。税額は 円、税収は 円で、正解は4です。
700円は税額35円に課税前の量20個を掛けた値、450円は税額を課税前の20個で測った45円に10個を掛けた値、300円は最適な量での外部費用の総額()です。600円は、総費用を微分せず1個あたりの費用 を使った値(15個・税額40円)です。図の点Eは、税が無いときの量20個です。
タイプ4合併と当事者どうしの交渉
コースの定理と合併(外部性の内部化)
見分け方:一方の企業の生産量が、もう一方の費用の式に入っています。合併したときの量や、それを税で実現する税額の計算と、コースの定理の文の正誤があります。問題の書き方に合わせて、生産量を ・ と書きます。
なぜそうなるかコースの定理:権利をどちらに与えても同じ量になる理由
図はこのタブの例(採石場と隣の農園)で、横は採石場の生産量 です。限界利潤はもう1個つくると増える利潤(価格150円−限界費用 = 円)、限界被害はそのとき農園に増える被害( 円)です。
交渉にかかる費用(取引費用)が無視でき、汚してよい権利か汚されない権利かがはっきり決まっていれば、得になる取引が残る限り交渉が続き、どちらに権利があっても2本の線が交わる量に落ち着きます。変わるのは、どちらが払うか(所得の分配)だけです。これがコースの定理です。当事者が消費者で、効用に所得効果があると、権利の帰属で交渉後の量が変わることがあります。
- 2本の線:採石場がもう1個つくると増える利潤(限界利潤)と、そのとき農園が負う被害(限界被害)
- 採石場に権利:交渉が無ければ60個わかること32個を超える分は被害が利潤より大きいので、農園が見返りを払って減らしてもらう
- 農園に権利:はじめは0個わかること32個までは利潤が被害より大きいので、採石場が農園に払ってつくらせてもらう
- どちらでも:2本が交わる点Kの32個に落ち着くわかること変わるのは、どちらがどちらに払うか(所得の分配)だけ
解き方の手順
- 1
別々に決めるとき
加害側の企業は自分の総費用だけを微分し、価格=自分の限界費用 で を決めます。 - 2
合併したとき
利潤の合計を で微分して0とおくと、相手の費用に入る の項も微分されて、価格=自分の限界費用+外部限界被害 になります。 で微分するときは をただの数と見ます(たとえば を で微分すると です)。 - 3
被害に y が入るとき
と を含む2本の式を連立して解きます。 を合併前の値に止めると誤ります。 - 4
合併と同じ量にする税
税額=合併したときの量で測った外部限界被害です。課税前の量で測りません。
例で確かめる採石場と農園の合併
採石場(企業1)の製品は1個150円、総費用は です。隣の農園(企業2)の産物は1個90円、総費用は粉じんの被害を含めて です(・ は生産量〔個〕)。
- 別々:採石場は より 、農園は より です。
- 合併:利潤の合計は です。 で微分すると被害の分 が加わり、 より です。被害に が入らないので、農園は40のままです。
- 税:32個での外部限界被害 円を税額にすると、 より です。
| 場面 | 採石場 | 農園 | その量での外部限界被害 |
|---|---|---|---|
| 別々 | 60個 | 40個 | 84円 |
| 合併 | 32個 | 40個 | 56円 |
| 1個56円の税 | 32個 | 40個 | 56円 |
コースの定理の例題
自分で解いてみるコースの定理の例題
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 1
効率的な量は、限界利潤と限界被害が等しい より です。交渉が無ければ、限界利潤が0になる50個までつくります。
- 1:31〜50個目は被害が利潤より大きく、茶畑が払って減らしてもらうと2人とも得です。正解は1です。
- 2:30個目までは利潤が被害より大きく、製材所が払ってつくらせてもらい30個になります。
- 3:どちらでも30個です。変わるのは、どちらが払うか(所得の分配)だけです。
- 4:当事者が多いと取引費用が大きく、まとまらないことがあります。
- 5:30個でも被害は残ります(総額 円)。
| 権利をもつ側 | 交渉の前 | 交渉の後 | 払う側 |
|---|---|---|---|
| 製材所 | 50個 | 30個 | 茶畑 |
| 茶畑 | 0個 | 30個 | 製材所 |
タイプ5排出権取引
排出権取引の価格の求め方
見分け方:排出権(排出枠)を割り当てて売買させ、均衡価格を聞きます。削減の費用が与えられる問題と、生産量に比例して排出する問題があります。
なぜそうなるか取引すると、限界削減費用が排出権の価格にそろう理由
もう1トン減らす費用(限界削減費用)が排出権の価格より安いうちは自分で減らす(余りを売る)ほうが得、高いうちは買うほうが得です。落ち着くと各社の限界削減費用が価格に等しくなり、総量を最も少ない費用で減らせます。
- Aの線:Aがもう1トン減らすのにかかる費用(限界削減費用)。減らすほど高くなる
- Bの線:Bの限界削減費用を右端から左へ描くわかること右端がBの削減量0で、そこから左へ測った長さがBの削減量。Aの削減量との合計はいつも60トン
- 割当どおり:割当60トンまで減らすと、Aは100−60=40トン、Bは80−60=20トン。そこでの限界削減費用はAが80万円・Bが120万円わかること安く減らせるAが代わりに減らせば、合計の費用が下がる
- 均衡:2本が交わる点Kで、価格90万円。Aは45トン、Bは15トン減らすわかること2社の限界削減費用が価格にそろい、合計の削減費用がいちばん小さい
使える条件:各社が排出権の価格を動かせないとき。割当は売り手・買い手と支払いの額を変えるだけで、価格と各社の削減量は変えません。
解き方の手順
- 1
各社の負担を式にする
削減費用+排出権の価格×(排出量−割当)。生産量に比例して出すなら、利潤=売上−費用−排出権の価格×(排出量−割当)。 - 2
微分して0とおく
削減量で微分すると、限界削減費用=排出権の価格。生産量で決める問題では、生産量で微分して、製品の価格−限界費用=1単位の排出量×排出権の価格。割当は数だけの項なので消えます。 - 3
合計を上限に合わせる
各社の削減量(排出量)を価格の式で表し、合計が上限に合う価格を解きます。
例で確かめる2つの工場の排出権
工場Aは規制が無ければ100トン、工場Bは80トン排出します。 トン減らす費用は、Aが 万円、Bが 万円です。上限を120トンとし、排出権を60トンずつ割り当てます。
- 減らす合計は トンです。
- 排出権1トンの価格を 万円とします。Aの負担 を で微分して0とおくと 、Bも同じく です。
- より 万円で、Aは45トン、Bは15トン減らします。
| 項目 | 工場A | 工場B |
|---|---|---|
| 減らす量 | 45トン | 15トン |
| 排出量 | 55トン | 65トン |
| 割当60トンとの差 | 5トン売る | 5トン買う |
排出権取引の例題(価格)
自分で解いてみる排出権取引の例題(価格)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 3
排出権の価格を 円とします。企業1は kg 出すので、割当16kgを超えた kg を買います。利潤 を で微分して0とおくと 、企業2は です。、 を に入れて解くと 円です。正解は3です。
49円は企業1の条件で1単位2kgを落として とした値、23円は上限95kgを生産量の合計に当てた値、70円は2で割り忘れた値、32円は割当どおりのときの1kgあたりの額(企業1は53円、企業2は11円)の平均です。
| 項目 | 企業1 | 企業2 |
|---|---|---|
| 生産量 | 20 | 55 |
| 排出量 | 40kg | 55kg |
| 売買 | 24kg買う | 24kg売る |
| (製品の価格−限界費用)÷1単位の排出量 | (130−60)÷2=35円 | (130−95)÷1=35円 |
まとめ覚えることと間違いやすい点
覚えることの表(外部性の結論)
完全競争で、需要曲線が右下がり・PMCが右上がりの場合です。
| 場面 | 市場の量 | 死荷重になる面積 | 正す政策 |
|---|---|---|---|
| 生産の外部不経済 | 多すぎる | 最適な量から市場の量まで、SMCの下・Dの上 | 1個あたりの税(最適な量での外部限界費用) |
| 生産の外部経済 | 少なすぎる | 市場の量から最適な量まで、Dの下・SMCの上 | 1個あたりの補助金(最適な量での外部限界便益) |
| 消費の外部経済 | 少なすぎる | 市場の量から最適な量まで、SMBの下・PMCの上 | 1個あたりの補助金(同上) |
減産補助金は、生産を1個減らすごとに政府が企業に払う方法です。
| 方法 | 政府が決めるもの | 覚えること |
|---|---|---|
| ピグー税 | 1個あたりの税額 | 政府は外部限界費用を知る必要がある。税収を被害者に回さなくても量は最適 |
| 減産補助金 | 減らした1個あたりの額 | 企業の数が一定なら、選ぶ量は同じ額の税と同じ。利潤は税より大きい(長期には参入を招きうる) |
| 排出権取引 | 排出の総量 | 価格は市場で決まり、限界削減費用が価格にそろう。各社に同じ量を減らさせると、限界削減費用が異なる限り総費用は最小にならない |
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 技術的外部性 | 価格を通さず、直接ほかの人の費用や満足を変える。市場の失敗の原因 |
| 金銭的外部性 | 価格の変化を通じた影響。競争市場では非効率を生まない |
| ネットワーク外部性 | 利用者が増えるほど、1人の利用者の便益が増える |
| 集積の利益 | 企業が1か所に集まって各企業の費用が下がる(1企業の内部の規模の経済ではない) |
よくある間違い
| 誤りの文 | 正しくはこう |
|---|---|
| SMC=PMC−外部限界費用 | 外部不経済なら足す。SMCはPMCより上 |
| ピグー税の税額は、課税前の量での外部限界費用 | 最適な量で測る(総額なら微分してから) |
| 税収は税額×課税前の量 | 税額×最適な量 |
| 外部経済にも課税で対処する | 補助金。課税すると量がさらに減る |
| ピグー税で被害は0になる | 最適な量でも被害は残る |
| コースの定理は、当事者が多いほど成り立つ | 取引費用が無視でき、権利がはっきりしているときだけ |
| 排出権の価格は政府が決める | 価格は市場で決まる |
| 割当が多い会社ほど、取引の後も多く出す | 取引の後の排出量は割当によらない |
次にやること
先に読む論点
次に読む論点











