余剰分析とは・消費者余剰と生産者余剰
30秒でわかる余剰分析
余剰は、市場で売り買いしたことで、買い手と売り手が得をした額です。余剰分析では、この得の大きさを需要曲線と供給曲線の間の面積で読み、税や価格規制でどれだけ失われるかを比べます。
消費者余剰
生産者余剰
総余剰
死荷重(超過負担)
先に読む論点需給の均衡
この図の市場(需要曲線 、供給曲線 。 は価格〔円〕、 は数量〔個〕)では、20個が60円で取引されます。消費者余剰は 円、生産者余剰は 円、総余剰は600円です。このページでは、この市場を「基本の市場」と呼び、各タイプの例で使います。
試験での出方
| 地方上級 | ★★ | 特別区Ⅰ類 | ★★ |
|---|---|---|---|
| 市役所 | ★★ | 国家総合職 | ★★ |
| 国家一般職 | ★★ | 国家専門職 | ★★★ |
どの受験先でも出ている論点で、計算・図の面を選ぶ問題・文の正誤の3つの形がそろっています。
よく出るタイプ
余剰分析の問題は、次の5つのタイプに分けられます。カードを押すと、そのタイプの解き方に切り替わります。
- タイプ1余剰の定義と性質文の正誤。曲線の高さ・総余剰に入るもの
- タイプ2従量税と死荷重1個あたり一定額の税。税収・死荷重・負担の割合
- タイプ3従価税価格の何%の税。供給曲線の傾きが急になる
- タイプ4税収を最大にする税額税収が最大になるように税額を決める
- タイプ5価格規制と二重価格上限価格・下限価格・政府の買い入れと売り渡し
このほか、小国の関税収入を最大にする問題(問題を解く)は貿易政策の論点、独占による死荷重は独占の論点で扱います。
基本の図需要・供給と余剰
余剰の図の読み方(消費者余剰・生産者余剰の求め方)
- 需要曲線:右下がりの線。高さは、その数量の最後の1個に買い手が払ってもよい最大の額わかること1個目なら80円近くまで払う人がいて、数量が増えるほど払ってもよい額は下がる
- 供給曲線:右上がりの線。高さは、その数量の最後の1個をつくるのにかかる費用わかること1個目は20円でつくれ、数量が増えるほど1個ぶんの費用は上がる
- 均衡点:2本が交わる点Eわかること20個が60円で取引される
- 消費者余剰:払ってもよい額と、実際に払った60円との差を20個ぶん足すわかること需要曲線と60円の線の間の三角形で、20円の高さ(80−60)・20個の幅の半分の200円
- 生産者余剰:受け取った60円と、1個ずつの費用との差を20個ぶん足すわかること60円の線と供給曲線の間の三角形で、40円の高さ(60−20)・20個の幅の半分の400円
- 総余剰:2つを合わせた600円わかること需要曲線と供給曲線の間の、点Eまでの三角形全体
図の見方
- 需要曲線の高さは、その数量の最後の1個に買い手が払ってもよい最大の額です。これを支払意思額(留保価格)と呼びます。それまでの平均ではありません。
- 供給曲線の高さは、その数量の最後の1個をつくるのに追加でかかる費用です。これを限界費用(MC)と呼びます。売り手が多く1人では価格を動かせない市場(完全競争)では、1個追加でつくる費用が価格より安いうちはつくるほど得なので、供給曲線は限界費用の線です(短期なら平均可変費用の最低点より上の部分。市場の供給曲線は各売り手の分を横に足したもの)。
- 2本の交点 E を均衡点と呼びます。基本の市場では20個・60円です。
面積は、次のように境界の線で決まります。どの余剰も、左は縦軸(数量0)から測ります。
| 余剰 | 上の境界 | 下の境界 | 右の境界 |
|---|---|---|---|
| 消費者余剰 | 需要曲線 | 買い手が払う価格 | 取引された数量 |
| 生産者余剰 | 売り手が受け取る価格 | 供給曲線 | 取引された数量 |
| 総余剰 | 需要曲線 | 供給曲線 | 取引された数量 |
税や規制が入ると、買い手が払う価格と売り手が受け取る価格が別々になったり、取引量が均衡からずれたりします。どのタイプも、この表の境界を入れ替えて読むだけです。価格が変わって買う量が変わるのは、同じ曲線に沿って点が動くこと(需要量の変化)です。税で供給曲線そのものが上へずれるのは、曲線ごと動くこと(シフト。供給の変化)です。
タイプ1余剰の定義と性質
消費者余剰・生産者余剰の定義と性質
見分け方:問題文の最後が「余剰に関する記述として、妥当なのはどれか」で、「需要曲線の高さは」「総余剰は」のような文が5つ並びます。数字が無いことも、式が付いていることもあります。
なぜそうなるか均衡で総余剰がいちばん大きくなる理由
1個取引するごとに、社会全体では「払ってもよい額 − つくる費用」の得が生まれます。この差は均衡より左でプラス、右でマイナスなので、均衡の数量で総余剰は最大になります(ほかの人に迷惑や恩恵が及ぶこと(外部性)が無い、完全競争の市場の場合)。
- 均衡:2本が点Eで交わり、20個が取引される
- 左の1個:8個目は、買い手が払ってもよい額72円が、つくる費用36円を上回るわかること取引すれば社会全体で36円の得
- 右の1個:26個目は、つくる費用72円が、払ってもよい額54円を上回るわかること取引すると18円の損
- 行き過ぎ:20個を超えて26個まで取引すると、2本の間の三角形54円だけ総余剰が減るわかること得になる取引だけを全部行う均衡で、総余剰はいちばん大きい
判定のしかた
- 1
曲線の高さは「最後の1個」の値
需要曲線は最後の1個の支払意思額、供給曲線は最後の1個の限界費用です。「それまでの平均」「それまでの合計」とあれば誤りです(それまでの合計は曲線の下の面積)。 - 2
余剰は「差」を足したもの
消費者余剰は支払額(価格と数量の積)ではありません。払ってもよい額が価格より低い人は買わないので、その人の余剰はマイナスではなく0です。 - 3
生産者余剰 = 売上 − 可変費用
可変費用は、つくる量で変わる費用(限界費用の合計)です。利潤は売上から費用全部(可変費用+固定費用)を引いた残りなので、生産者余剰は(短期では)利潤+固定費用に等しく、固定費用が増えても変わりません。 - 4
総余剰に何が入るか
税収は入れ、補助金は引きます。死荷重はだれにも移らず失われる部分で、税収とは別です。 - 5
大きさと分け方は別
均衡で最大になるのは総余剰です。消費者余剰と生産者余剰が等しいとは限らず、分け方が公平とも限りません。
例で確かめる生産者余剰が「売上 − 可変費用」になることを確かめる
基本の市場で、60円で20個売ったときの生産者余剰を、売上と費用から出します。
- 均衡:20個が60円で取引される
- 売上:60円で20個売るので、長方形の1200円
- 可変費用:1個ずつの費用(供給曲線の高さ)を20個ぶん足すわかること供給曲線の下の台形で、20円と60円の平均40円が20個ぶんの800円
- 生産者余剰:売上1200円から可変費用800円を引いた残りわかること60円の線と供給曲線の間の三角形400円。固定費用はどこにも出てこない
売上は 円、可変費用は供給曲線の下の台形で 円です。差の400円は、三角形で出した生産者余剰と同じです。固定費用はどこにも出てきません。
余剰分析の例題(余剰の定義と性質)
自分で解いてみる余剰分析の例題1(余剰の定義と性質)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 3
均衡は より 個、価格は 円です。
- 1:2,400円は支払額です。消費者余剰は 円で、支払額を余剰と取り違えた文です。
- 2:30個目の支払意思額は需要曲線の高さの80円です。125円は170円と80円の平均で、高さを平均と取り違えた文です。
- 3:可変費用は供給曲線の下の台形 円で、 円は三角形 と一致します。正しい文で、正解は3です。
- 4:35個目では費用85円が払ってもよい額65円を上回り、総余剰は 円減ります。
- 5:消費者余剰1,350円・生産者余剰450円で、等しくありません。
| 余剰 | 値 |
|---|---|
| 消費者余剰 | 1,350円 |
| 生産者余剰 | 450円 |
| 総余剰 | 1,800円 |
タイプ2従量税と死荷重
死荷重の求め方(従量税と税の負担)
見分け方:「1個あたり24円の税」のように、1単位あたり一定額の税(従量税)が出てきます。聞かれるのは税収・死荷重(超過負担とも呼びます)・価格・負担の割合です。
なぜそうなるか税を納める人と負担する人は違う
売り手に課すと供給曲線が上へ、買い手に課すと需要曲線が下へずれますが、どちらでも取引量と、買い手が払う価格・売り手の手元に残る価格の2つは同じになります。税をだれが実際に負担するか(税の帰着)は、だれが納めるかではなく曲線の傾きで決まり、傾きが急な(価格が変わっても量があまり変わらない)側ほど多く負担します。
- 課税前:点Eで20個が60円
- 売り手に:1個24円を売り手が納めるなら、供給曲線が24円上へわかること新しい交点Aで12個、買い手が払う価格は68円
- 買い手に:同じ24円を買い手が納めるなら、需要曲線が24円下へわかること交点Bでやはり12個、売り手の手元に残るのは44円
- 負担:どちらでも、買い手は60円から68円へ8円(60円から点Aまでの縦の線)、売り手は60円から44円へ16円(点Bから60円までの縦の線)の負担わかること負担を決めるのは曲線の傾きで、だれが納めるかではない
ここでは需要曲線を 、供給曲線を と書きます。 は需要曲線が1個につき何円下がるか、 は供給曲線が1個につき何円上がるか(傾きの大きさ)、・ は のときの価格(縦軸と交わる高さ=切片)です。基本の市場なら ・・・ です。
使える条件:2本とも直線のとき。
解き方の手順
- 1
「価格=」の形にする
「需要量 」のような形なら、 について解きます。 - 2
供給曲線を税額だけ上へずらす
を にします( は税額)。「数量=」の形のままなら、 を に置き換えます。売り手は、払われた 円から税 円を納めた残りの 円を見て量を決めるからです(例: なら )。 - 3
需要曲線と連立する
交点が課税後の数量と買い手の払う価格です。売り手の手取りは、そこから税額を引いた額です。 - 4
面積にする
税収 = 税額 × 課税後の数量
死荷重 = 税額 × 減った数量 ÷ 2
買い手の負担 =(買い手が払う価格 − 課税前の価格)× 課税後の数量
例で確かめる基本の市場に1個24円の税をかける
基本の市場で、売り手に1個24円の従量税を課します。
- 課税前:点Eで20個が60円で取引される
- 供給を上へ:売り手は1個ごとに24円を納めるので、同じ数量を売るのに24円高い価格が要るわかること供給曲線が24円上へ平行に動く
- 2つの価格:新しい交点Aで12個わかること買い手が払うのは68円、売り手の手元に残るのは68−24=44円(点B)
- 税収:68円と44円の間の長方形わかること24円が12個ぶんで288円
- 負担の内訳:課税前の60円の線で上下に分けるわかること上は買い手の負担で8円が12個ぶんの96円、下は売り手の負担で16円が12個ぶんの192円
- 死荷重:取引が20個から12個に減った8個ぶんわかること24円の高さ・8個の幅の三角形で96円。だれの余剰にもならない
課税後の供給曲線は です。需要曲線と等しいとおいて より12個、買い手が払う価格は 円、売り手の手元は 円です。
| 項目 | 課税前 | 課税後 |
|---|---|---|
| 消費者余剰 | 200円 | 72円 |
| 生産者余剰 | 400円 | 144円 |
| 税収 | 0円 | 288円 |
| 総余剰 | 600円 | 504円 |
総余剰の減少 円が死荷重で、三角形 と一致します。税収288円は総余剰に入れて数えます。
死荷重の例題(従量税)
自分で解いてみる死荷重の求め方の例題(従量税)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 1
課税前は より20個・110円、課税後は より17個です。死荷重は高さ18円・底辺3個の三角形で 円、正解は1です。
54円は2で割り忘れた値、81円は税がまるごと買い手に乗る(数量11個)とした値、153円は底辺を17個とした値、306円は税収です。買い手が払う価格は 円、売り手の手元は 円です。負担は買い手が110円から116円へ6円、売り手が110円から98円へ12円で、買い手の割合は です。
タイプ3従価税
従価税の課税後の均衡の求め方
見分け方:「税抜価格の50%」のように、税が価格に対する割合で書かれています(従価税)。税抜価格は売り手の手元に残る価格、税込価格は買い手が払う価格です。
なぜそうなるか従価税で供給曲線が回転する理由
税は税抜価格の何%なので、税抜価格が高い右側ほど1個の税が大きくなります。上乗せの幅が右ほど広がるので、課税後の供給曲線は平行に上がらず、傾きが急になります(試験では「回転する」と言います)。切片も傾きも1.5倍です。
- 元の供給:売り手の手元に残る価格(税抜価格)は、今までの供給曲線の高さ
- 税を足す:税は税抜価格の50%わかること4個のところは32円に16円、10個のところは50円に25円を上乗せ
- 課税後:上乗せの幅が右へ行くほど広いわかること切片も傾きも1.5倍の線になり、平行移動ではなく回転する
使える条件:供給曲線を「価格=」の形 で書き、税率が税抜価格に対する率のとき。1個の税額は、税抜価格 × 税率です。税込価格から出すときは、税込価格 × 税率 ÷(1+税率)です。
解き方の手順
- 1
切片と傾きの両方に(1+税率)を掛ける
税率50%なら1.5倍。切片だけに掛けると平行移動(従量税の扱い)になってしまいます。 - 2
需要曲線と連立する
交点が課税後の数量と税込価格です。 - 3
税抜価格と税額を出す
税抜価格は元の供給曲線に数量を入れた値です。税額 = 税込価格 − 税抜価格、税収 = 税額 × 数量。
例で確かめる税抜価格の50%の税をかける
需要曲線 、供給曲線 の市場で、生産者に税抜価格の50%の従価税を課します。
- 課税前:点Eで15個が65円
- 課税後の供給:税込価格は税抜価格の1.5倍わかることP=1.5(20+3Q)=30+4.5Q
- 新しい均衡:95−2Q=30+4.5Q から10個わかること買い手は75円(点A)、売り手の手元は元の供給曲線の高さの50円(点B)
- 税収:1個の税は75−50=25円(50円の50%)わかること25円が10個ぶんで250円
- 死荷重:15個から10個に減った5個ぶんわかること25円の高さ・5個の幅の三角形で62.5円
課税後の供給曲線は で、 より10個です。税込価格75円、税抜価格50円()、1個の税25円、税収250円です。切片だけを1.5倍にすると13個・69円になり、誤ります。
従価税の例題
自分で解いてみる従価税の例題(1個あたりの税額)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 3
課税後の供給曲線は です。 より20個、税込価格は 円です。税抜価格は 円で、税額は 円です。正解は3です。
| 項目 | 課税前 | 課税後 |
|---|---|---|
| 数量 | 30個 | 20個 |
| 買い手が払う価格 | 80円 | 90円 |
| 売り手の手取り | 80円 | 60円 |
45円は税込価格90円にそのまま50%を掛けた値です(税込価格からなら 円)。40円は課税前の価格80円の50%、10円は買い手の負担だけ、20円は売り手の負担だけを答えた値です。
タイプ4税収を最大にする税額
税収を最大にする税額の求め方
見分け方:問題文に「税収が最大になるように、1個あたりの税額を定める」と書かれています。税額が のような文字で置かれていることも多いです。
なぜそうなるか税収が山の形になる理由
税収は「1個の税額 × 取引量」です。税額を上げると1個の税は増えますが取引量が減り、ある所から減る効果が勝つので、税収は増えてから減ります。死荷重(灰の三角形)は広がり続けます。点Aは買い手が払う価格、点Bは売り手の手元に残る価格です。
税額30円:取引 10個・税収 300円・死荷重 150円(税収がいちばん大きい)
使える条件:2本とも直線で、従量税のとき。・ はタイプ2と同じく、「価格=」の形で読む縦軸の切片( のときの価格)です。
導き方:課税後は を解いて 、税収は税額と数量の積で です。山の頂上では税額を少し動かしても税収が増えも減りもしない(傾きが0)ので、 で微分して0とおくと です。微分はべき乗の微分( を微分すると 。 なら 、 なら1)だけを使います。
解き方の手順
- 1
「価格=」の形にして切片を読む
需要曲線の切片 と供給曲線の切片 を読みます。「数量=」の式の定数( の120など)をそのまま使うと誤ります。 - 2
切片の差の半分が税額
です。 - 3
聞かれているものに直す
数量は課税前のちょうど半分、税収は です。
例で確かめる基本の市場で税収が最大になる税額
基本の市場では、切片の差は 円なので、税収を最大にする税額は30円です。式で確かめると、 より 、税収は で、微分した を0とおいて です。数量は10個、税収は300円です。
この図だけ、横軸は1個あたりの税額、縦軸は税収です。点Mが頂上(30円で300円)、点Aがタイプ2の24円(288円)です。税額が60円になると取引が0になり、税収も0です。
税収最大化の例題
自分で解いてみる税収を最大にする税額の例題
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 2
「価格=」の形に直すと、需要曲線は 、供給曲線は です。切片の差は 円なので、税収を最大にする税額は25円です。正解は2です。
このとき数量は 個、税収は750円です。税額を動かすと次のようになります。
| 税額 | 数量 | 税収 |
|---|---|---|
| 0円 | 60個 | 0円 |
| 15円 | 42個 | 630円 |
| 25円 | 30個 | 750円 |
| 35円 | 18個 | 630円 |
| 50円 | 0個 | 0円 |
75円は「数量=」の式の定数120と−30の差150の半分、50円は半分にし忘れた値、30円は数量です。15円は、課税前の価格30円( より)に税がまるごと乗り、数量が になるとして、 を最大にした値です。
この単元の演習には関税の問題も入っています。自国がどれだけ買っても世界の価格が変わらない国(小国)では、国内の価格が「世界での価格+関税」になることを使い、輸入量を関税の式にして解きます(貿易政策の論点で扱います)。
タイプ5価格規制と二重価格
価格規制と二重価格の死荷重
見分け方:「価格に上限を設け」(上限価格)、「下限を設け」(下限価格)、「生産者から高く買い入れ、消費者に安く売り渡す」(二重価格制度)と書かれています。図の a〜j の面から選ぶ問題が多いです。
なぜそうなるか取引量は「少ない側」で決まる
上限価格40円では、買いたい量が40個あっても、売り手は10個しか出さないので、取引は少ない側の10個です。下限価格では逆に、高い価格のせいで買いたい量のほうが少なくなり、そちらが取引量です。取引量が均衡から減った分だけ死荷重が生まれます(上限価格は均衡価格より低いとき、下限価格は高いときだけ効きます。試験では、払ってもよい額の高い買い手から買い、費用の低い売り手から売れる分だけつくると考えます)。
- 規制前:点Eで20個が60円
- 上限価格:40円より高く売り買いできないわかること40円では、買いたい量は40個(点G)、売りたい量は10個(点F)
- 取引量:売り手が10個しか出さないので、少ない側の10個しか取引されない
- 規制後:消費者余剰(橙)は40円の線より上で10個まで、生産者余剰(青)は40円の線より下で10個まで
- 移る長方形:40〜60円・10個の長方形200円は、規制前は売り手の余剰、規制後は買い手の余剰わかること売り手から買い手へ移っただけで、失われてはいない
- 死荷重:10個から20個の、2本の曲線の間の三角形わかること30円の高さ(70−40)・10個の幅の半分の150円
判定のしかた
- 1
取引量を決める
上限価格なら売りたい量、下限価格(売れ残りを買い上げない)なら買いたい量が、少ない側として取引量です。二重価格では、買入量は供給曲線、売渡量は需要曲線で読みます。 - 2
余剰の境界の価格を決める
消費者余剰は買い手が払う価格より上、生産者余剰は売り手が受け取る価格より下です。二重価格では同じ面が両方に入ることがあります。 - 3
政府の支出を引く
二重価格の支出 = 買入額 − 売渡額。売れ残りの分も買入額に入ります。 - 4
面ごとに数える
二重価格では、政府の支出の面を「消費者余剰の増加」「生産者余剰の増加」「どちらにも入らない面」に分けます。どちらにも入らない面が死荷重です(例で確かめるの図の e)。
下限価格70円なら、取引は買いたい量の10個で、死荷重は上限価格40円のときと同じ三角形です。違うのは、60円と規制価格の間の長方形(10個ぶん)の移る向きで、上限価格では売り手から買い手へ、下限価格では買い手から売り手へ移ります。
- 規制前:点Eで20個が60円
- 下限価格:70円より安く売り買いできないわかること買いたい量は10個(点H)、売りたい量は25個(点K)
- 規制後:取引は少ない側の10個わかること生産者余剰(橙)は70円の線より下で10個まで、消費者余剰(青)は70円の線より上
- 移る長方形:60〜70円・10個の長方形100円は、規制前は買い手の余剰、規制後は売り手の余剰わかること買い手から売り手へ移っただけ
- 死荷重:10個から20個の三角形150円わかること上限価格40円のときと同じ形。取引量が同じ10個だから
例で確かめる二重価格の死荷重を求める
政府が売り手から1個68円で売りたいだけ買い、買い手に1個56円で買いたいだけ売ります。
- 制度の前:点Eで20個が60円
- 2つの価格:売り手は68円なら24個つくり(点J)、買い手は56円なら24個買う(点L)わかることちょうど売り切れる
- 政府の支出:68円で買って56円で売るので、差の12円が24個ぶんで288円
- 死荷重:20個を超えた4個は、費用(供給曲線)が払ってもよい額(需要曲線)を上回るわかること12円の高さ・4個の幅の三角形24円
買入量は より24個、売渡量は より24個で、ちょうど売り切れます。
| 項目 | 制度の前 | 制度の後 |
|---|---|---|
| 消費者余剰 | 200円 | 288円 |
| 生産者余剰 | 400円 | 576円 |
| 政府の収支 | 0円 | −288円 |
| 総余剰 | 600円 | 576円 |
政府の支出は12円が24個ぶんの288円です(制度の後の消費者余剰やタイプ2の税収と同じ額なのは偶然です)。このうち消費者余剰の増加88円(288−200)と生産者余剰の増加176円(576−400)は、だれかの得として残り、 円だけが死荷重です。
a・b が生産者余剰の増加、c・d が消費者余剰の増加、e が死荷重です。
使える条件:直線で、買入量と売渡量が等しいとき。余りが出るとき(余りは捨てられ価値を生まないとき)は、この式は使えません。死荷重は、均衡から売渡量までの2本の曲線の間の三角形(高さは売渡量での供給曲線の高さ − 売渡価格)と、売渡量から買入量までの供給曲線の下の面積(余った分をつくった費用)の合計です。
二重価格の例題
自分で解いてみる二重価格の死荷重の例題
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 4
均衡は より20個・70円です。買入量は より26個、売渡量は より26個です。
死荷重は高さ18円・底辺6個の三角形で 円、正解は4です。
468円は支出をそのまま死荷重とした値(うち414円は余剰の増加として残ります)、312円は買入価格と均衡価格の差だけで とした値、234円は底辺を26個とした値、36円は均衡価格70円より上の部分だけを数えた値です。
まとめ覚えることと間違いやすい点
覚えることの表(介入ごとの死荷重)
外部性が無く、需要曲線が右下がり・供給曲線が右上がりの完全競争市場で、価格規制は効く側(上限価格は均衡より下、下限価格は均衡より上)に置かれた場合です。死荷重は、均衡の数量と介入後の数量の間で、2本の曲線に挟まれた三角形が基本です。
| 介入 | 取引量 | 死荷重になる面積 | 覚えること |
|---|---|---|---|
| 従量税 | 減る | 減った数量の範囲の三角形(高さは税額) | 税収は総余剰に残る。負担は傾きの比 |
| 従価税 | 減る | 同じ形の三角形(高さはその数量での税額) | 供給曲線は平行移動でなく回転 |
| 補助金 | 増える | 取引が増えすぎた分(均衡を超えた数量)の三角形 | 供給曲線が補助金の額だけ下がる。支出は総余剰から引く |
| 上限価格 | 減る(売りたい量) | 減った数量の範囲の三角形 | 価格差の長方形は売り手から買い手へ |
| 下限価格 | 減る(買いたい量) | 減った数量の範囲の三角形 | 価格差の長方形は買い手から売り手へ |
| 二重価格 | 増える | 均衡を超えた数量の範囲の三角形 | 支出の大部分は両者の余剰の増加 |
| 二重価格(余りあり) | 生産が販売より多い | 均衡から売渡量までの三角形と、余りの生産費用 | 余りの分も買入額に入る |
基本の市場では、従量税30円・上限価格40円・下限価格70円のどれでも取引は10個で、死荷重は同じ150円です。違うのは、残った余剰がだれに行くかだけです。
よくある間違い
| 誤りの文 | 正しくはこう |
|---|---|
| 消費者余剰は、価格と数量を掛けた支払額 | 払ってもよい額から払った額を引いた差の合計。支払額は余剰に入らない |
| 需要曲線(供給曲線)の高さは、それまでの平均 | 最後の1個の支払意思額(限界費用) |
| 固定費用が増えると、生産者余剰は減る | 生産者余剰は売上−可変費用。減るのは利潤 |
| 課税後の総余剰は消費者余剰と生産者余剰の合計 | 税収も足す。課税で減るのは死荷重だけ |
| 死荷重は消費者余剰(生産者余剰)の減った分 | 総余剰の減った分。税収や移った長方形は入らない |
| 税は、納める側がすべて負担する(半分ずつ負担する) | 傾きの急な側ほど多く負担する。割合は傾きの比 |
| 売り手への課税で、 を とする | 供給関数の を に置き換えて (買い手への課税なら需要関数の を に) |
| 従価税で供給曲線を平行に上げる | 切片も傾きも(1+税率)倍にする |
| 従価税の税額は、税込価格に税率を掛ける | 税抜価格に税率を掛ける |
| 税率を2倍にすれば、税収も2倍になる | 取引量が減るので2倍にはならず、ある所からは減る |
| 二重価格で余りが出ても、死荷重は三角形だけ | 余りの分の生産費用がまるごと加わる |
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