ゲーム理論とは・利得表の読み方
30秒でわかるゲーム理論
ゲーム理論は、自分の得が相手の選び方でも変わる場面で、それぞれがどう選ぶかを考える道具です。選ぶ人をプレイヤー、選べる行動を戦略、結果として得る点数(利益など)を利得と呼び、この3つを利得表にまとめます。
利得表の読み方
支配戦略
ナッシュ均衡
パレート最適
先に読む論点寡占
行の人の利得は同じ列の中で縦に、列の人の利得は同じ行の中で横に比べます。問題文の「左側の数は企業Aの利得」という但し書きを最初に確かめましょう。
試験での出方
| 地方上級 | ★★ | 特別区Ⅰ類 | ★★ |
|---|---|---|---|
| 市役所 | ★ | 国家総合職 | ★★ |
| 国家一般職 | ★★ | 国家専門職 | ★★ |
確率を使わずに1つの戦略を選ぶ(純粋戦略)利得表の問題が中心で、国家公務員の試験では混合戦略・逐次手番・繰り返しゲームも出ます。
よく出るタイプ
ゲーム理論の問題は、次の5つのタイプに分けられます。カードを押すと、そのタイプの解き方に切り替わります。
基本の図利得表とナッシュ均衡
ナッシュ均衡の求め方(利得表に印を付ける)
A社とB社が、商品の価格を「据え置き」にするか「値下げ」するかを、同時に1回だけ選びます。マスの左の数がA社、右の数がB社の利得です。このページでは、この表を「基本の利得表」と呼びます。
| B社 | ||
|---|---|---|
| A社 | 据え置き | 値下げ |
| 据え置き | (6,4) | (2,7) |
| 値下げ | (9,2) | (3,3) |
マスの数は(A社の利得,B社の利得)
- A社に印:B社が据え置きなら値下げ(9>6)、B社が値下げなら値下げ(3>2)
- B社に印:A社が据え置きなら値下げ(7>4)、A社が値下げなら値下げ(3>2)わかること両社の印がそろう (値下げ, 値下げ) がナッシュ均衡
図の見方
- A社に印:B社の戦略(列)を1つ決め、その列の左の数を縦に比べて大きいほうに印。相手の戦略を決めたときの自分のいちばん良い戦略を最適反応と呼びます。
- B社に印:A社の戦略(行)を1つ決め、その行の右の数を横に比べます。
- 両社の印がそろったマスがナッシュ均衡です。どちらも自分だけ戦略を変えても利得が上がりません(この表では下がります)。
この表では、A社の印はどちらの列でも値下げの行に付きます。相手が何を選んでも値下げが得なので、値下げはA社の支配戦略です。B社も同じで、両社が支配戦略を選んだ組 (値下げ, 値下げ) を支配戦略均衡と呼びます。
ところが、均衡の (3, 3) から (据え置き, 据え置き) の (6, 4) に移ると、両社とも利得が上がります。両社が支配戦略を選んだ均衡がパレート最適でない、この形を囚人のジレンマと呼びます。
タイプ1ナッシュ均衡と支配戦略
支配戦略均衡とナッシュ均衡・パレート最適の見分け方
見分け方:利得表が1つか2つあり、「純粋戦略のナッシュ均衡」「支配戦略」「パレート最適」を含む文が5つ並びます。表の一部が ・ の文字で、「ナッシュ均衡となるための条件」を選ぶ問題もこのタイプです。
なぜそうなるか支配戦略が無くても均衡はあり、均衡が良いとは限らない
A社とB社が、共同の販売キャンペーンに参加するかどうかを同時に選びます。2社とも、相手と同じ戦略を選びたい表です。印は相手によって変わるので支配戦略はありませんが、印がそろうマスは2つあります。(不参加, 不参加) の (3, 4) は、(参加, 参加) の (7, 5) に移れば両社とも上がるので、均衡なのにパレート最適ではありません。
| B社 | ||
|---|---|---|
| A社 | 参加 | 不参加 |
| 参加 | (7,5) | (0,3) |
| 不参加 | (2,1) | (3,4) |
マスの数は(A社の利得,B社の利得)
- A社に印:B社が参加なら参加(7>2)、B社が不参加なら不参加(3>0)
- B社に印:A社が参加なら参加(5>3)、A社が不参加なら不参加(4>1)わかること印がそろうマスが2つ。どちらもナッシュ均衡
判定のしかた
- 1
両社の印を付けて均衡を数える
印がそろうマスがナッシュ均衡です。2つ以上のことも、1つも無いこともあるので、全マスを確かめます。 - 2
支配戦略は印の並びで見る
印がいつも同じ戦略に付けば、それが支配戦略です。両者にあればその組が支配戦略均衡で、必ずナッシュ均衡でもあります。片方にしか無ければ支配戦略均衡はありません。 - 3
パレート最適は全マスと比べる
そのマスより「両者とも下がらず、少なくとも一方が上がる」マスが1つでもあれば、パレート最適ではありません。一方が上がっても他方が下がる移動は数えません。 - 4
文字の条件は比べる相手を絞る
ナッシュ均衡の条件は、行の人は同じ列、列の人は同じ行のマスとだけ比べた不等式です。支配戦略均衡の条件は、相手のすべての戦略について比べた不等式を全部満たすことです。
例で確かめる文字を含む利得表の条件
次の表で、(増産, 現状) がナッシュ均衡になる条件と、支配戦略均衡になる条件を求めます(「戦略を変えると利得が必ず下がる」ことを条件にするので、不等式に等号は入れません)。
| B社:増産 | B社:現状 | |
|---|---|---|
| A社:増産 | (5, 1) | (x, 3) |
| A社:現状 | (2, 6) | (4, y) |
- ナッシュ均衡:A社は現状の列の左の数を比べて 。B社は増産の行の右の数を比べ、 でもう成り立っています。条件は だけです。
- 支配戦略均衡:A社の増産が支配戦略になるには、増産の列の と現状の列の 。B社の現状が支配戦略になるには、増産の行の と現状の行の 。条件は かつ です。
ナッシュ均衡の例題
自分で解いてみるナッシュ均衡とパレート最適の例題(3行3列の利得表)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
A社とB社が、営業に力を入れる時間帯を「朝」「昼」「夜」から同時に1回だけ選ぶ。各マスの左の数はA社、右の数はB社の利得である。このゲームに関する記述として、最も妥当なのはどれか。
| B社:朝 | B社:昼 | B社:夜 | |
|---|---|---|---|
| A社:朝 | (2, 3) | (8, 2) | (4, 7) |
| A社:昼 | (3, 7) | (9, 6) | (9, 2) |
| A社:夜 | (2, 0) | (6, 4) | (5, 7) |
正解は 1
A社の印はどの列でも昼の行に付くので、昼がA社の支配戦略です。B社の印は、A社が朝なら夜、昼なら朝、夜なら夜で、相手によって変わります。両社の印がそろうのは (昼, 朝) だけです。
| B社 | |||
|---|---|---|---|
| A社 | 朝 | 昼 | 夜 |
| 朝 | (2,3) | (8,2) | (4,7) |
| 昼 | (3,7) | (9,6) | (9,2) |
| 夜 | (2,0) | (6,4) | (5,7) |
マスの数は(A社の利得,B社の利得)
- A社に印:B社が朝なら昼(3が2・2より大きい)、B社が昼なら昼(9が8・6より大きい)、B社が夜なら昼(9が4・5より大きい)
- B社に印:A社が朝なら夜(7が3・2より大きい)、A社が昼なら朝(7が6・2より大きい)、A社が夜なら夜(7が0・4より大きい)わかること両社の印がそろうのは (昼, 朝) だけ
(昼, 朝) の (3, 7) は、(夜, 夜) の (5, 7) に移るとA社が上がりB社は変わらないので、パレート最適ではありません。正解は1です。
- 2:B社の印は、A社が朝・夜の行では夜に付きますが、昼の行では朝の7に付きます。朝と夜の行だけを見て決めた文です。
- 3:B社に支配戦略が無いので、支配戦略均衡はありません。大きい数の (9, 6) に引かれた文です。
- 4:均衡でもパレート最適とは限りません。
- 5:(昼, 朝) に移るとB社は6から7に上がりますが、A社は9から3に下がります。他方が下がる移動は数えないので、(昼, 昼) はパレート最適です。
タイプ2マクシミン戦略
マクシミン戦略の求め方
見分け方:問題文に「マクシミン戦略とは、…最小の利得が最も大きい戦略をいう」と定義が書いてあります。「保証される利得」を聞かれることもあります。
なぜそうなるか相手を読まずに、最悪どうしを比べる
マクシミン戦略は、相手の選び方を予想せず、自分の各戦略で起こりうる最悪の利得だけを比べて、それがいちばん大きい戦略を選ぶ考え方です。A社の大型店には9もありますが最悪は0、小型店の最悪は2なので、A社のマクシミン戦略は小型店です。小型店なら、B社が何を選んでも少なくとも2は得られます(「2が保証される」と言います)。
このタブの表では、印は最適反応ではなく各戦略の最悪の利得に付き、最後に橙で囲むマスもナッシュ均衡ではなく2社のマクシミン戦略の組です。
| B社 | ||
|---|---|---|
| A社 | 大型店 | 小型店 |
| 大型店 | (0,1) | (9,3) |
| 小型店 | (2,6) | (4,5) |
マスの数は(A社の利得,B社の利得)
- A社の最悪:大型店なら0、小型店なら2わかること最悪がいちばん大きい小型店がマクシミン戦略(2を保証)
- B社の最悪:大型店なら1、小型店なら3わかること最悪がいちばん大きい小型店がマクシミン戦略(3を保証)
この表のナッシュ均衡は (大型店, 小型店) と (小型店, 大型店) で、マクシミン戦略の組 (小型店, 小型店) とは一致しません。
判定のしかた
- 1
自分の数だけを拾う
行の人は左の数、列の人は右の数だけを見ます。 - 2
戦略ごとの最小を出す
行の人は行ごと(横)に、列の人は列ごと(縦)に、最小の利得を拾います。 - 3
最小がいちばん大きい戦略を選ぶ
その最小の値が「保証される利得」です。両者がマクシミン戦略をとったときに実際に得る利得とは別に読みます。
例で確かめる3行3列の表でマクシミン戦略を決める
A社とB社が、駅の東口・西口・北口のどこに出店するかを同時に選びます。
| B社 | |||
|---|---|---|---|
| A社 | 東口 | 西口 | 北口 |
| 東口 | (6,6) | (3,9) | (4,2) |
| 西口 | (2,3) | (3,8) | (1,4) |
| 北口 | (0,6) | (4,2) | (6,9) |
マスの数は(A社の利得,B社の利得)
- A社の最悪:東口なら3、西口なら1、北口なら0わかること最悪がいちばん大きい東口がマクシミン戦略(3を保証)
- B社の最悪:東口なら3、西口なら2、北口なら2わかること最悪がいちばん大きい東口がマクシミン戦略(3を保証)
マクシミン戦略の組は (東口, 東口) の (6, 6) です。ナッシュ均衡は印がそろう (北口, 北口) の (6, 9) で、こちらに移ればA社は変わらずB社が上がるので、マクシミン戦略の組はパレート最適でもありません。
マクシミン戦略の例題
自分で解いてみるマクシミン戦略の例題(保証される利得)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
A社とB社が、販売の方法を「直販」か「代理店」から同時に1回だけ選ぶ。各マスの左の数はA社、右の数はB社の利得である。マクシミン戦略とは、自分の各戦略について相手の選び方によって生じうる最小の利得を比べ、その最小の利得が最も大きい戦略をいう。B社がマクシミン戦略をとるとき、B社に保証される利得はいくらか。
| B社:直販 | B社:代理店 | |
|---|---|---|
| A社:直販 | (3, 4) | (1, 6) |
| A社:代理店 | (5, 7) | (7, 3) |
正解は 2
B社は列ごとに右の数を縦に見ます。直販の列は4と7で最小4、代理店の列は6と3で最小3です。最小が大きい直販がマクシミン戦略で、保証される利得は4です。正解は2です。
| B社 | ||
|---|---|---|
| A社 | 直販 | 代理店 |
| 直販 | (3,4) | (1,6) |
| 代理店 | (5,7) | (7,3) |
マスの数は(A社の利得,B社の利得)
- A社の最悪:直販なら1、代理店なら5わかること最悪がいちばん大きい代理店がマクシミン戦略(5を保証)
- B社の最悪:直販なら4、代理店なら3わかること最悪がいちばん大きい直販がマクシミン戦略(4を保証)
7は、両社がマクシミン戦略(A社は代理店、B社は直販)をとったときにB社が実際に得る利得です。3はB社が左の数(A社の利得)で最小を拾った値、6は各列の最大(7と6)を拾って小さいほうを選んだ値、5はA社に保証される利得です。
タイプ3混合戦略
混合戦略のナッシュ均衡の求め方
見分け方:「混合戦略」「確率」の語があり、均衡での確率か期待利得を聞かれます。各マスに数が1つずつしか無く「相手の利得は符号を反転したもの」とあれば、2人の利得の合計がいつも0のゼロサムゲームです。
なぜそうなるか相手の2つの戦略を同じ得にする確率になる理由
確率で重みを付けた利得の平均を期待利得と呼びます。次のゼロサムゲームの表の数は、A社がB社から奪う顧客の数(百人)で、B社の利得はその符号を反転した数です。
| B社:攻め | B社:守り | |
|---|---|---|
| A社:攻め | 5 | −5 |
| A社:守り | −1 | 4 |
A社の攻めと守りの期待利得を、B社が攻めを選ぶ確率 ごとに描きました。 が交点より小さいと守りだけ、大きいと攻めだけが得です。この表には印がそろうマスが無いので、均衡ではA社も必ず混ぜています。混ぜても損をしないのは2本が交わる のときだけなので、B社の確率はA社の2つの戦略を同じ得にする値になります。
- 攻め:A社が攻めると、B社も攻めれば5、守れば−5わかること期待利得は 5q−5(1−q)=10q−5
- 守り:A社が守ると、B社が攻めれば−1、守れば4わかること期待利得は −q+4(1−q)=4−5q
- 交点:2本は q=3/5 で交わり、どちらも1わかることqが3/5より小さいと守りだけ、大きいと攻めだけが得。A社が確率を混ぜても損をしないのは、ちょうど3/5のときだけ
使える条件:2行2列の表で、両者が2つの戦略をどちらも選ぶ(確率が0でも1でもない)均衡を求めるとき。
解き方の手順
- 1
確率を文字でおく
A社が上の行を選ぶ確率を 、B社が左の列を選ぶ確率を とします。 - 2
相手の期待利得を等しくする
B社の2つの戦略の期待利得(右の数を と で重み付け)を等しくおくと 、A社の2つの戦略(左の数を と で重み付け)なら が出ます。 - 3
期待利得は相手の確率で出す
A社のどちらか1つの行で、左の数に 、右の数に を掛けて足します(均衡ではどちらの行でも同じ値)。
例で確かめるゼロサムゲームの確率と期待利得
上の表で、均衡の確率とA社の期待利得を求めます。
- :A社の攻めは 、守りは 。等しくおいて 、 です。
- :B社の利得は表の符号を反転した数です。B社の攻めは 、守りは 。等しくおいて 、 です。
- 期待利得:(百人)。B社の期待利得は で、2社の合計は0です。
混合戦略の例題
自分で解いてみる混合戦略の例題(均衡の確率)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
A社とB社が、主力を「新製品」か「改良品」から同時に1回だけ選ぶ。各マスの左の数はA社、右の数はB社の利得である。このゲームには純粋戦略のナッシュ均衡が存在しない。混合戦略のナッシュ均衡において、A社が新製品を選ぶ確率はいくらか。
| B社:新製品 | B社:改良品 | |
|---|---|---|
| A社:新製品 | (4, 1) | (1, 4) |
| A社:改良品 | (2, 3) | (3, 1) |
正解は 4
A社の確率 は、B社の2つの戦略を同じ得にする値です。B社の新製品は 、改良品は 。等しくおいて 、 です。正解は4です。
横はA社の確率、縦はB社の期待利得です。(点E)では、B社は新製品でも改良品でも同じ を得ます。
はA社が改良品を選ぶ確率、 はA社の2つの戦略を等しくして出るB社の確率です。 は自分(A社)の利得(左の数)で自分の確率の式を立てた値、 はそれを1から引いた値です。
タイプ4逐次手番と後ろ向き帰納法
逐次手番ゲームの解き方(後ろ向き帰納法・部分ゲーム完全均衡)
見分け方:「一方が先に選び、もう一方がそれを見てから選ぶ」とあり、ゲームの木(手番の順に枝分かれし、終点に利得を書いた図)が付いています。先に選ぶ人を先手、後に選ぶ人を後手と呼びます。
なぜそうなるか先手は後手の反応を読み込んで選ぶ
後手は先手の選択を見てから自分の得になるほうを選ぶので、先手は各枝で後手が何を選ぶかを先に読み、その結果どうしを比べます。最後の手番から順にさかのぼるこの解き方を後ろ向き帰納法、こうして求めた戦略の組を部分ゲーム完全均衡と呼びます。木のどの分かれ目から始めても、その先で両者が自分の得になる選び方をしている、という意味です。
次の木では、A社が先に販売の形を選び、B社がそれを見て選びます。終点は(A社, B社)の利得です。
B社の手番で選ばれない枝(1と0)を灰で消し、残った (5, 2) と (2, 4) をA社が比べて店舗型を選びます。橙の枠がたどり着く終点です。
判定のしかた
- 1
終点の利得の順を確かめる
(左, 右)がだれの利得かを、但し書きで読みます。 - 2
後手の手番で選ぶ
先手の各枝のあとで、後手が自分の数の大きいほうを選びます。選ばれない枝は消します。 - 3
先手が残った終点を比べる
残った終点の先手の数を比べ、大きい枝を選びます。これが部分ゲーム完全均衡の道筋です。 - 4
脅しに頼る均衡を除く
逐次手番のゲームのナッシュ均衡には、後手が実際にはしない行動(信憑性のない脅し)に頼るものがあり、それは部分ゲーム完全均衡になりません。同じ表を同時手番で読んだ均衡と一致するとは限らないので、必ず木を後ろから解きます。
例で確かめる同じ表を同時手番で読むと均衡は2つ
上のゲームを、2社が同時に選ぶ利得表にすると、印がそろうマスは2つあります。
| B社 | ||
|---|---|---|
| A社 | 店舗型 | ネット型 |
| 店舗型 | (5,2) | (1,1) |
| ネット型 | (0,0) | (2,4) |
マスの数は(A社の利得,B社の利得)
- A社に印:B社が店舗型なら店舗型(5>0)、B社がネット型ならネット型(2>1)
- B社に印:A社が店舗型なら店舗型(2>1)、A社がネット型ならネット型(4>0)わかること印がそろうマスは2つ
逐次手番では、B社が「A社がどちらを選んでもネット型」(店舗型でもネット型にする、という脅しを含む)という戦略をとり、A社がそれを前提にネット型を選ぶ組も、ナッシュ均衡です。しかし、A社が実際に店舗型を選べば、B社はネット型の1より店舗型の2を選ぶので、この脅しは実行されません。部分ゲーム完全均衡の経路は (店舗型, 店舗型) の (5, 2) だけです。
逐次手番の例題
自分で解いてみる逐次手番ゲームの例題(部分ゲーム完全均衡)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 3
後手のB社から考えます。大のあとは参入1・見送り2で見送り、中のあとは参入4・見送り3で参入、小のあとは参入5・見送り0で参入です。A社はその結果の4・3・2を比べて大を選びます。部分ゲーム完全均衡は「A社は大、B社は大なら見送り・中なら参入・小なら参入」で、経路は (大, 見送り)、A社の利得は4です。正解は3です。なお、同じ表を同時手番で読むと均衡は (中, 参入) で、答えは一致しません。
7はB社の反応を読まずに終点(中・見送り)を選んだ値で、実際は中のあとB社が参入するので3です。6は小のあとB社が見送ると思い込んだ値、2は均衡の終点 (4, 2) の右の数(B社の利得)です。
タイプ5繰り返しゲームと協調
繰り返しゲームとトリガー戦略(割引因子の求め方)
見分け方:「無限回くり返す」「トリガー戦略」「割引因子 」の語があり、協調が続く の最小値を聞かれます。
トリガー戦略は、2社とも協調している限り協調し、どちらかが一度でも裏切ったら次の期から永久に裏切る(1回きりのゲームの均衡の行動をとる)戦略です。割引因子 ()は、1期先の利得を今の価値に直すときに掛ける数です。 なら、来期の10は今の9に当たります。今期から毎期 をずっと受け取ると、今の価値の合計は (等比数列の和)、翌期から受け取り始めるなら全体に が1つ掛かって です。
なぜそうなるか将来の損が今期の得以上なら協調が続く
裏切ると今期だけ得をしますが、次の期から相手も裏切り続けるので、毎期「協調の利得 − 罰の利得」を失います。基本の利得表で、今期の得(赤の水平線。両社とも3)と、翌期から失う額を今の価値に直した合計(青の曲線)を比べました。曲線が水平線以上になる なら協調を続けるほうが得です。
- 今期の得:裏切ると今期だけ、A社は9−6=3、B社は7−4=3 得をする
- A社の損:翌期から毎期 6−3=3 を失うわかること翌期からなので δ が1つ掛かり、今の価値の合計は 3δ÷(1−δ)。今期の得3と δ=1/2 で等しくなる(点A)
- B社の損:翌期から毎期 4−3=1 を失うわかること今の価値の合計は δ÷(1−δ)。δ=3/4 で3に届く(点B)
- 両社:δが3/4以上なら、どちらも将来の損が今期の得以上わかることトリガー戦略で協調が続く
B社の曲線のほうが低いので、2社とも協調するには B社の境目の 以上が要ります。
2社とも協調したときの利得を 、自分だけ裏切ったときの利得を 、2社とも裏切ったとき(罰の期間)の利得を とすると、協調が続く条件は次の式です。
使える条件:ゲームを無限回(終わりの期が決まっていない形で)くり返し、トリガー戦略で、罰が「次の期から永久に、2社とも裏切る」とき。1回きりの均衡が1つだけのゲームを有限回くり返すなら、最終期から後ろ向きに解くと毎期裏切りになり、協調は続きません。
導き方:協調を続けた合計 と、今期に裏切った場合の合計(今期 、翌期から罰の が続くので )を比べます。両辺に を掛けると 、整理すると です。
解き方の手順
- 1
R・T・Pを表から読む
協調・協調のマス、自分だけ裏切るマス、裏切り・裏切りのマスから、自分の数を拾います。 - 2
今期の得と毎期の損を出す
今期の得は 、翌期から毎期失う額は です。 - 3
2社とも確かめる
2社の値のうち大きいほうが、協調が続く最小の です。
例で確かめる基本の利得表をくり返す
基本の利得表で、据え置きを協調、値下げを裏切りとします。
| A社 | B社 | |
|---|---|---|
| 協調の利得 | 6 | 4 |
| 自分だけ裏切る | 9 | 7 |
| 罰の利得 | 3 | 3 |
| の下限 |
A社は 、B社は なら協調を続けます。2社とも協調が続くのは のときです。
繰り返しゲームの例題
自分で解いてみる繰り返しゲームの例題(割引因子の最小値)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
A社とB社が、毎期「協調」か「裏切り」を同時に選ぶ次のゲームを無限回くり返す。各マスの左の数はA社、右の数はB社の利得である。両社は、第1期は協調し、どちらかが一度でも裏切ったら次の期から永久に裏切るトリガー戦略をとる。割引因子を ()とし、各社は第 期の利得に を掛けた合計を最大にする。協調を続けることが部分ゲーム完全均衡となる の最小値はいくらか。
| B社:協調 | B社:裏切り | |
|---|---|---|
| A社:協調 | (11, 11) | (1, 14) |
| A社:裏切り | (14, 1) | (4, 4) |
正解は 3
、、 なので、 です。表はA社とB社を入れ替えても同じ形(B社の ・・ も11・14・4)なので、B社の条件も同じです。正解は3です。
| 比べるもの | 式 |
|---|---|
| 協調を続ける合計 | |
| 今期に裏切る合計 |
は罰の期間の利得を0とした値、 は罰の期間に自分だけ協調したときの1を使った値、 は罰の4を裏切ったその期から受け取るとした値( を解く)、 は毎期失う額を でなく罰の利得4とした値です。
まとめ覚えることと間違いやすい点
覚えることの表(支配戦略均衡・ナッシュ均衡・パレート最適の関係)
| 考え方 | 決め方 | ほかとの関係 |
|---|---|---|
| 支配戦略均衡 | 両者が、相手が何を選んでも最適な戦略を選んだ組 | 必ずナッシュ均衡。支配戦略が片方にしか無ければ存在しない |
| ナッシュ均衡 | 両者が互いに最適反応になっている組 | 純粋戦略では0個も複数もある。プレイヤーと戦略の数が有限なら、混合戦略まで含めれば必ずある |
| パレート最適 | 両者とも下がらず一方が上がるマスが無い | 均衡かどうかと別に、全マスと比べる。囚人のジレンマの均衡はパレート最適でない |
| マクシミン戦略 | 各戦略の最小の利得がいちばん大きい戦略 | 一般には、ナッシュ均衡とも支配戦略均衡とも一致するとは限らない。2人ゼロサムゲームでは、混合戦略まで含めるとナッシュ均衡と一致する |
| 部分ゲーム完全均衡 | すべての部分ゲームでナッシュ均衡になっている戦略の組。有限の完全情報ゲームなら後ろ向き帰納法で求める | そのゲームのナッシュ均衡でもある。信憑性のない脅しに頼るナッシュ均衡を除く |
よくある間違い
| 誤りの文 | 正しくはこう |
|---|---|
| 行の人の利得を右の数で読む | 但し書きで確かめる。行の人は左の数を同じ列の中で縦に比べる |
| ナッシュ均衡ならパレート最適 | 均衡でもパレート最適とは限らない(囚人のジレンマ) |
| 支配戦略が無ければナッシュ均衡も無い | 支配戦略が無くても、印がそろうマスがあれば均衡 |
| 一方が得をする移動があれば、もう一方が損をしても、パレート最適でない | 他方が下がる移動は数えない。両者とも下がらず一方が上がる移動があるときだけ、パレート最適でない |
| マクシミン戦略は各戦略の最大を比べる | 最小(最悪)を比べる。保証される利得と実際に得る利得は別 |
| 混合戦略の自分の確率は、自分の期待利得を等しくして出す | 相手の2つの戦略の期待利得を等しくして出す |
| 逐次手番でも、同時手番の均衡をそのまま答える | 後ろから解く。信憑性のない脅しに頼るナッシュ均衡は部分ゲーム完全均衡にならず、答えが同時手番の均衡と一致するとも限らない |
| トリガー戦略の罰の利得は、自分だけ協調したときの利得 | 2社とも裏切ったときの利得を、次の期から永久に受け取る |
| 罰の利得を、裏切ったその期から受け取るとして計算する | 裏切った期は 、罰の は次の期から受け取る(だから と が掛かる) |
| 有限回くり返しても、 が大きければトリガー戦略で協調が続く | 1回きりの均衡が1つだけなら、後ろから解くと毎期裏切り。協調が続きうるのは無限回のとき |
次にやること
先に読む論点
次に読む論点











