2期間の消費とは・異時点間の予算制約
30秒でわかる2期間の消費
2期間の消費(2期間モデル)は、今期と来期の2つの時期に分けて、所得をいつ使うかを決める問題です。今期に使わずに残した分が貯蓄で、利子が付いて来期に使えます。今期の所得より多く使えば、その差は借入で、来期に利子を付けて返します。2つの時期(異なる時点)の予算をまとめて1本にした式を、異時点間の予算制約と呼びます。
異時点間の予算制約
貯蓄
- ・ は今期・来期の消費、・ は今期・来期の所得、 は利子率、 は貯蓄です(問題では小文字の ・ と書かれることが多いです)。
- 右辺は、来期の所得を で割って今の値打ちに直し、今期の所得に足したものです。利子率30%なら、今の50万円を貯めると来期に 万円になるので、来期の65万円は今の 万円と同じ値打ちです。この右辺を生涯所得と呼びます。
先に読む論点効用最大化
来期の所得を で割って今の値打ちに直すことを割り引くと言い、直した額を現在価値(今の価値)と呼びます。今期の所得はもともと今の価値なので、割り引きません。
このページでは、今期の所得210万円・来期の所得65万円・利子率30%の家計を「基本の家計」と呼び、図と例で使います。生涯所得は 万円です。どれだけ満足できるか(効用)は式(効用関数) で表し、効用最大化の論点と同じように、効用がいちばん大きくなる消費の組を選びます。
試験での出方
| 地方上級 | ★★★ | 特別区Ⅰ類 | ★★ |
|---|---|---|---|
| 市役所 | ★★ | 国家総合職 | ★★★ |
| 国家一般職 | ★★★ | 国家専門職 | ★★★ |
どの受験先でも出ていて、とくに国家公務員と地方上級でよく出ます。ほとんどが数値を選ぶ計算問題で、効用関数が の形(・ の右肩に小さく書いた数 ・ を指数と呼び、この形を指数型と呼びます)なら、早解きの式で数行で解けます。
よく出るタイプ
2期間の消費の問題は、次の2つのタイプに分けられます。カードを押すと、そのタイプの解き方に切り替わります。
基本の図予算線と貯蓄・借入
2期間モデルの図の読み方(予算線・貯蓄と借入)
横軸に今期の消費、縦軸に来期の消費をとります。右へ行くほど今期に多く使い、上へ行くほど来期に多く使う組です。
- 所得の点:今期210万円・来期65万円をそれぞれの期にそのまま使う点Aわかること貸し借りをしない点。消費税が無ければ、どんな利子率でも予算線はAを通る
- 予算線:Aを通る右下がりの線で、傾きの大きさは1+利子率=1.3わかること今期を1万円がまんして貯めると、来期は1.3万円多く使える。横軸との交点は生涯所得の210+65÷1.3=260万円
- 接点:無差別曲線が予算線に接する点Eで効用が最大わかること今期130万円・来期169万円を消費する
- 貯蓄:EはAより左上わかること今期の所得のうち210−130=80万円を貯蓄し、来期は65+80×1.3=169万円を使う
- 借入:所得の点がB(今期60万円・来期260万円)でも同じ予算線の上なので、Eは変わらないわかることEはBより右下で、130−60=70万円を借りる
図の見方
- 点Aは、所得をそれぞれの期にそのまま使う点(貸し借りをしない点)です。消費税が無ければ、どんな利子率でも、予算線は必ずAを通ります。
- 予算線は、使い切れる消費の組を結んだ線です。右下がりで、傾きの大きさは です。今期を1万円がまんすると来期は1.3万円多く使えます。横軸との交点は、来期の所得まで借りて全部を今期に使うときの 万円(生涯所得)、縦軸との交点は、今期の所得を全部貯めたときの 万円です。
- 無差別曲線(効用が同じになる組を結んだ線)が予算線に接する点Eで、効用が最大になります。
- EがAより左上なら貯蓄、右下なら借入で、額はAとEの横の差です(消費税が無いとき。今期に消費税がかかると、貯蓄は今期の所得−今期の税込みの支出で出します)。
- 最後の段の点B(今期60万円・来期260万円)のように、所得の点が同じ予算線の上にあれば生涯所得は同じ260万円なので、Eも同じです。Bから見るとEは右下なので、 万円を借ります。
タイプ1貯蓄・借入額を求める
貯蓄・借入額の求め方(2期間モデル)
見分け方: の形の効用関数と、今期・来期の所得、利子率が与えられ、「今期の貯蓄額はいくらか」「借り入れる額はいくらか」と聞かれます。
なぜそうなるか生涯所得を指数の比で分ける理由
来期に1万円分を消費するには、今 万円を貯めておけば足ります。つまり来期の消費1単位は、今の値打ちで の値段です。そう読むと、予算制約 生涯所得 は、値段が1と の2つの財を所得(生涯所得)で買う、ふつうの予算制約と同じ形です。効用最大化の論点で見たとおり、効用関数が の形なら、所得のうち の金額を1つ目の財に払うのがいちばんよい選び方です。基本の家計の は肩に何も書いていないので で、半分ずつ使います。
- 予算線:横軸との交点260万円は、来期を0にして生涯所得を全部今期に使うときの消費
- 接点:効用が最大の点Eわかること今期の消費は130万円
- 割合:130は260のちょうど半分わかること指数が1対1なので、生涯所得を今期と来期に半分ずつ使う。来期の分130(今の価値)は、来期には130×1.3=169万円
図の見方:接点Eの横の130は、横軸との交点(生涯所得)260のちょうど半分です。残りの130(今の価値)は来期に回り、来期には 万円の消費になります。
使える条件:効用関数が の形(指数型。コブ=ダグラス型とも呼びます)で、消費財の値段がどちらの期も1、利子率で自由に貯蓄も借入もできるとき。ほかの形の効用関数では、効用最大化の論点の「限界代替率(今期の消費を1減らしたとき、同じ満足を保つのに来期の消費がいくら要るか)=値段の比」を使います。今期の値段1を来期の値段 で割ると、値段の比は です。
導き方:今期は 、来期は です。2本目を で割ると で、1本目と足すと と が打ち消し合い、異時点間の予算制約になります。
解き方の手順
- 1
来期の所得を割り引いて生涯所得を出す
来期の所得を で割り、今期の所得に足します。今期の所得は割り引きません。 - 2
指数の比で今期の消費を出す
今期の消費は生涯所得の です。 は の右肩の数、 は の右肩の数です(何も書いていなければ1)。問題によって大きいほうの指数が今期にも来期にも来るので、どちらが今期かを確かめます。 - 3
今期の所得から引く
貯蓄=今期の所得−今期の消費。マイナスなら借入で、借入額はその大きさです。 - 4
来期の消費を聞かれたら
生涯所得の に を掛けます(今の価値から来期の額に戻す)。
例で確かめる来期に所得が多い学生の借入
効用関数 、今期の所得100万円、来期の所得130万円、利子率30%の学生の借入額を求めます。
- 所得の点:今期100万円・来期130万円の点A
- 予算線:Aを通る右下がりの線で、傾きの大きさは1.3わかること横軸との交点は生涯所得の100+130÷1.3=200万円
- 接点:今期の指数3・来期の指数1なので、今期に生涯所得の4分の3の150万円を使う点E
- 借入:EはAより右下わかること150−100=50万円を借り、来期に50×1.3=65万円を返す
図の見方:点Aは所得の点(今期100・来期130)、点Eは接点(今期150・来期65)です。EはAより右下にあり、横の差の50万円が借入です。
生涯所得は 万円です。今期の指数が3、来期の指数が1( の肩には何も書いていないので1)なので、今期の消費は 万円です。今期の所得100万円より50万円多く使うので、50万円の借入です。来期は借りた分を利子付きで返して 万円を使います。手順の4段目の式で出しても 万円で、一致します。
2期間モデルの例題(貯蓄額)
自分で解いてみる2期間の消費の例題1(貯蓄額)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 5
生涯所得は 万円です。今期の指数が1( の肩には何も書いていないので1)、来期の指数が4なので、今期の消費は 万円、貯蓄は 万円で、正解は5です。
- 80万円は今期の消費で、貯蓄ではありません。
- 100万円は、指数を無視して生涯所得を半分ずつ使った値です()。
- 204万円は、今期の所得に1.2を掛けて来期の額に直し、来期の所得に足した (来期の額で数えた生涯所得)の5分の1の96を、今期の所得から引いた値です。今期の消費は、今の値打ちで数えた生涯所得400から分けます。
- 216万円は、来期の所得を割り引かずに足した値です()。
タイプ2消費税・利子率の変化
消費税・利子率と貯蓄の求め方
見分け方:「今期の消費にだけ消費税が課される」「税込み価格は1.1」のように消費税が入るか、「利子率が上がると貯蓄はいくら増えるか」のように利子率が変わる問題です。聞かれるのは、消費量・貯蓄・その変化の大きさです。
なぜそうなるか消費税をかけても貯蓄が変わらない理由
消費税は、課税された期の消費の値段を(1+税率)倍にするだけで、所得は変えません。指数型の効用関数では、生涯所得のうち今期に回すお金の割合 は値段に関係なく決まるので、今期の税込みの支出は課税前と同じです。同じお金で買える量が 倍に減るだけで、貯蓄(今期の所得−今期の税込みの支出)は変わりません。
- 課税前:基本の家計の予算線と接点Eわかること今期130万円・来期169万円
- 課税:今期の値段が1.25倍わかること予算線は縦軸との交点338を軸に内側へ回り、横軸との交点は260÷1.25=208になる
- 新しい接点:課税後の接点E′(イー・ダッシュ)はEの真左わかること来期の消費は169のまま、今期の消費量は130÷1.25=104に減る
- 貯蓄:今期の税込みの支出は104×1.25=130で課税前と同じわかること貯蓄も210−130=80万円のまま
図の見方:灰色の破線が課税前、橙の線が課税後の予算線です。今期の値段だけが上がるので、縦軸との交点338は動かず、横軸との交点が260から208へ左に動きます。E′(イー・ダッシュ)は課税後の接点で、Eの真左にあるので、来期の消費は169のまま、今期の消費量だけが104に減ります。
利子率が上がるときは、来期の所得の今の価値(来期の所得÷(1+利子率))が小さくなって生涯所得が減ります。今期に使うのは生涯所得の決まった割合なので今期の消費が減り、その分だけ貯蓄が増えます。
使える条件:効用関数が指数型で、税が消費にだけかかる(所得にはかからない)とき。生涯所得は税と関係なく のままです。
解き方の手順
- 1
生涯所得を出す(税は入れない)
来期の所得を で割って今期の所得に足します。所得を税込み価格で割りません。 - 2
指数の比で各期の支出を出す
今期の税込みの支出は生涯所得の 、来期の支出(今の価値)は です。税率はここには入りません。 - 3
税込み価格で割って消費量にする
来期の分は、先に を掛けて来期の額に戻してから、来期の税込み価格で割ります。 - 4
貯蓄は税込みの支出で出す
貯蓄=今期の所得−今期の税込みの支出。消費量を引くのではありません。 - 5
利子率が変わるときは前後で出し直す
変わる前と後の利子率で、それぞれ生涯所得から今期の消費と貯蓄を出し、差を取ります。
例で確かめる基本の家計の今期だけに税率25%の消費税
基本の家計(今期210万円・来期65万円・利子率30%・)で、今期の消費にだけ税率25%の消費税をかけます。
| 項目 | 課税前 | 課税後 |
|---|---|---|
| 生涯所得 | 260万円 | 260万円 |
| 今期の税込みの支出 | 130万円 | 130万円 |
| 今期の消費量(単位) | 130 | 104 |
| 貯蓄 | 80万円 | 80万円 |
| 来期の消費量(単位) | 169 | 169 |
消費量は、税抜き価格1万円の財を何単位買うかです。今期の税込みの支出は生涯所得の半分の130万円のままで、課税後は1単位に1.25万円払うので、買えるのは 単位です。貯蓄は80万円のままなので、来期の消費量も で変わりません。
例で確かめる利子率を上げると貯蓄が増える
今期の所得240万円・来期の所得210万円・ の家計で、利子率を動かします。
利子率25%:生涯所得408万円・今期の消費204万円・貯蓄36万円
図の見方:利子率を上げると、予算線は点Aを中心に回って急になり、横軸との交点(生涯所得)が左へ動きます。接点Eも左上へ動き、Eの横からAの横(240)までの貯蓄の区間が広がります。
利子率が25%から50%に上がると、来期の所得の今の価値は 万円から 万円に下がり、生涯所得は408万円から380万円に減ります。今期の消費はその半分なので204万円から190万円に減り、貯蓄は36万円から50万円へ14万円増えます。来期の所得が0なら生涯所得は利子率で変わらないので、貯蓄も変わりません。
2期間モデルの例題(消費税)
自分で解いてみる2期間の消費の例題2(消費税と消費量)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 3
生涯所得は です。来期に回すのはその半分の160(今の価値)で、来期の額に戻すと 、来期の税込み価格1.25で割って です。正解は3です。今期の消費と貯蓄は課税しない場合と同じ160と40です。
- 課税前:予算線と接点Eわかること今期160・来期240
- 課税後:来期の値段が1.25倍わかること縦軸との交点が480÷1.25=384に下がり、課税後の接点E′はEの真下。来期の消費量は240÷1.25=192
図の見方:来期の値段だけが上がるので、横軸との交点320は動かず、縦軸との交点が480から384に下がります。課税後の接点E′はEの真下で、今期の消費160は変わらず、来期の消費量が240から192に減ります。
- 128は、1.5を掛けて来期の額に戻すのを忘れ、160をそのまま1.25で割った値です。
- 160は今期の消費量です。
- 228は、来期の所得を割り引かずに足した380の半分190を、来期の額に戻して1.25で割った値です。
- 240は、税込み価格で割り忘れた値(来期の税込みの支出)です。
まとめ覚えることと間違いやすい点
覚えることの表(変化と貯蓄の向き)
効用関数が指数型 で、利子率で自由に貯蓄も借入もできる場合です。
| 何が変わるか | 予算線 | 今期の消費量 | 貯蓄 |
|---|---|---|---|
| 利子率が上がる | 所得の点Aを軸に急になる | 減る(来期の所得が0なら変わらない) | 増える(来期の所得が0なら変わらない) |
| 今期だけに消費税 | 縦軸との交点を軸に内側へ回る | 倍に減る | 変わらない |
| 来期だけに消費税 | 横軸との交点を軸に内側へ回る | 変わらない | 変わらない |
| 今期の所得が増える | 外へ平行に移る | 増える | 増える |
| 来期の所得が増える | 外へ平行に移る | 増える | 減る(借りている人は借入が増える) |
指数型でない効用関数で、今期と来期の消費がどちらも正常財(暮らしが豊かになると増える財)なら、利子率が上がったときの向きは貸し借りで分かれます。利子率が上がると、今期に1万円使うことは来期の 万円をあきらめることになり、今期の消費が割高になります。この値段の変化による代替効果は、だれでも今期の消費を減らします。暮らし向きの変化による所得効果は、借りている人には利払いが増えて貧しくなるので今期の消費を減らし、貯蓄している人には利子収入が増えて豊かになるので今期の消費を増やします。このため、借りている人は今期の消費が減り、借入も減ります。貯蓄している人は2つの効果が逆向きなので、貯蓄が増えるか減るかは決まりません。
よくある間違い
| 誤りの文 | 正しくはこう |
|---|---|
| 生涯所得は今期と来期の所得の合計 | 来期の所得は で割ってから足す |
| 来期の所得に (または )を掛けて今の価値にする | で割る。 と は別の値 |
| 今期の所得も で割る | 割り引くのは来期の分だけ |
| 生涯所得を来期の価値(今期の所得に を掛けて来期の所得に足す)で作り、そのまま今期の消費に分ける | 今期の消費は、今の価値の生涯所得から分ける |
| 指数に関係なく、生涯所得を半分ずつ使う | 今期は 。どちらの期の指数が大きいかを確かめる |
| 貯蓄を聞かれて、今期の消費を答える | 貯蓄=今期の所得−今期の(税込みの)支出 |
| 今期に消費税をかけると、貯蓄は減る(増える) | 指数型なら税込みの支出が変わらないので、貯蓄も変わらない。変わるのは課税された期の消費量 |
| 消費税の分だけ支出が増えるので、税込み価格を支出に掛ける | 支出は変わらず、消費量=支出÷税込み価格 |
| 来期の消費量は、来期に回す支出を税込み価格で割るだけ | 今の価値の支出に を掛けて来期の額に戻してから割る |
| 利子率が上がれば、だれでも貯蓄は増える | 指数型で来期に所得があれば増える。一般には(今期・来期の消費が正常財なら)、借りている人は借入が減るが、貯蓄している人の向きは決まらない |











