労働供給とは・余暇と労働時間の関係
30秒でわかる労働供給
労働供給は、1日(や1週間)の使える時間を、働く時間(労働時間)と働かない時間(余暇)に分ける選び方です。余暇を「お金を払って買う財」と考えると、満足(効用)がいちばん大きい組を選ぶ効用最大化の論点と同じ図と計算で解けます。
時間の決まり
お金の決まり(余暇も買い物と見る)
は消費、 は余暇の時間、 は賃金率(1時間働いてもらえる額)、 は使える時間、 は働かなくても入る所得(仕送り・利子など。非労働所得)です。余暇を1時間増やすと賃金 をあきらめるので、余暇は「1時間 で買う財」です。左辺は消費と余暇を買った額の合計、右辺は 時間すべて働いたときの所得に を足した額(全所得)です。
図の個人(使える時間16時間・賃金率4・働かなくても入る所得32・効用関数 )の全所得は です。 のように消費と余暇の指数が同じ(どちらも1)ときは、全所得を半分ずつ消費と余暇に使うのがいちばん満足の大きい選び方です(効用最大化の論点の早解きの式。タイプ3でも使います)。余暇に使う額は 、余暇の価格4で割って余暇は 時間、労働時間は 時間です。このページでは、この個人を「基本の個人」と呼びます。
試験での出方
| 地方上級 | ★★★ | 特別区Ⅰ類 | ★★ |
|---|---|---|---|
| 市役所 | ★★ | 国家総合職 | ★★★ |
| 国家一般職 | ★★★ | 国家専門職 | ★★★ |
効用関数から労働時間を求める計算と、図を見て代替効果・所得効果の文の正誤を選ぶ問題の2つの形で出ます。
よく出るタイプ
労働供給の問題は、次の4つのタイプに分けられます。カードを押すと、そのタイプの解き方に切り替わります。
基本の図余暇と所得の図
労働供給の図の読み方(予算線と無差別曲線)
- 横軸:左から右へ余暇の時間を測る。右端の点Tの16時間が使える時間の全部わかること点Tから左へ測った長さが労働時間なので、余暇が1時間増えると労働は1時間減る
- 予算線:まったく働かないと所得は32だけ(点Tの真上)。左へ1時間進む(1時間働く)ごとに賃金率の4だけ所得が増えるわかること傾きの大きさが賃金率。16時間すべて働くと4の16倍の64に32を足した96
- 無差別曲線:満足(効用)が同じになる余暇と所得の組を結んだ線わかること右上にある曲線ほど満足が大きい
- 接点:予算線の上で満足がいちばん大きいのは、予算線と無差別曲線が接する点Eわかること余暇12時間・所得48
- 労働時間:点Eから右端の点Tまでの長さわかること16−12=4時間
図の見方
- 横軸は余暇です。右端の点Tが使える時間の全部で、点Tから左へ測った長さが労働時間です。最適な点が左へ動けば労働は増え、右へ動けば労働は減ります。
- 予算線は、手に入るお金をすべて使ったときの余暇と所得の組を結んだ線です。右端の縦の部分は、余暇を使える時間より増やせないことを表します。傾きの大きさが賃金率で、点Tの真上の高さが働かなくても入る所得、縦軸と交わる高さが全所得です。
- 無差別曲線は、満足の大きさ(効用)が同じになる組を結んだ線です。予算線と接する点で満足がいちばん大きくなります(効用最大化の論点と同じ考え方)。
賃金率を動かすと予算線が回る
賃金率4:余暇12時間・労働4時間
賃金率が上がると、予算線は点(16,32)を軸に回って急になります。まったく働かないときの所得32は、賃金率に関係しないからです。これは予算線の上を点が動くのではなく、予算線そのものが動く変化です。
基本の個人では、賃金率2のとき全所得は で、半分の32を2で割ると余暇16時間、つまり働きません。賃金率が2より低いと計算上の余暇が16時間を超えるので、やはり働きません(点Eが右端の角に止まる)。賃金率が2より高ければ、上がるほど労働時間が増えます。ただし、これは基本の個人の場合です。賃金率が上がると労働時間が減る個人もいます(タイプ1)。
タイプ1賃金率の変化と労働供給
賃金率の変化と代替効果・所得効果(労働供給曲線)
見分け方:問題文に「賃金率が上昇(低下)すると、予算線は直線アから直線イに変わり」とあり、「直線イに平行で、無差別曲線に接する直線」が図に描かれています。選択肢は「代替効果」「所得効果」「余暇は上級財(下級財)」を使った文です。
言葉を先に決めます。代替効果は、満足を変えずに、余暇と消費の値段の比(賃金率)が変わったことだけで起きる動きです。所得効果は、豊かになった(貧しくなった)ことで起きる動きです。所得が増えると多く選ぶ財を上級財、所得が増えると減らす財を下級財と呼びます。
なぜそうなるか労働供給曲線が途中から後ろに曲がる理由
賃金率が上がると余暇が割高になるので、代替効果はいつも労働を増やす向きです。余暇が上級財なら、豊かになった分で余暇を増やす所得効果は労働を減らす向きです。賃金率が1上がると、働いている時間の数だけ所得が増えます(5時間働く人なら5)。そのため長く働く人ほど所得効果が大きく、賃金率が高い範囲で所得効果が代替効果を上回ることがあります。そうなる賃金率(点K)より上では、曲線が左(労働が減る向き)へ反り返ります(後方屈曲)。必ず曲がるわけではなく、曲がるかは個人の好みしだいです。図の曲線は形の例で、基本の個人の曲線ではありません。
- 供給曲線:賃金率ごとに、この個人が選ぶ労働時間を結んだ線(労働供給曲線)
- 低い賃金:点Kより下では、賃金率が上がるほど右へわかること労働が増える。余暇が割高になる代替効果が、所得効果より大きい
- 高い賃金:点Kより上では左へ曲がるわかること長く働いている人ほど、賃金率が上がったときの所得の増え方が大きいので、余暇を増やす所得効果が代替効果を上回ることがある。この例ではKより上でそうなっている
判定のしかた
- 1
補助線を見つける
変化後の予算線に平行で、変化前の無差別曲線に接する直線を探します(補償予算線と呼びます)。その接点が、2つの効果の境目です。 - 2
前の点から補助線の接点までが代替効果
同じ無差別曲線の上の動きです。賃金率が上がれば余暇は減り(点が左へ)、下がれば余暇は増えます(点が右へ)。 - 3
補助線の接点から後の点までが所得効果
平行な2本の線の間の動きです。所得が増える向きの動きで余暇が増えていれば上級財、減っていれば下級財です。 - 4
点の左右の動きで余暇を読み、労働は逆向きに読む
余暇が左へ動けば労働は増え、右へ動けば減ります。全体の向きは、2つの動きの幅の大小で決まります。余暇が下級財なら、賃金率の上昇で2つの効果がそろって労働を増やすので、労働は減りません。
例で確かめる賃金率が4から16に上がる
基本の個人の賃金率が4から16に上がります。
- 変化前:賃金率4の予算線と無差別曲線Iの接点Eわかること余暇12時間・労働4時間
- 変化後:賃金率16になると、予算線は点(16,32)を軸に回って急になるわかること新しい接点Gは余暇9時間・労働7時間
- 補助線:変化後の予算線に平行で、変化前の無差別曲線Iに接する線を引くわかること接点Fは余暇6時間
- 代替効果:EからFへの動き(満足は同じで、余暇が割高になった分だけの動き)わかること余暇は12時間から6時間へ減り、労働は6時間増える
- 所得効果:FからGへの動き(平行な線の間の移動で、豊かになった分の動き)わかること余暇は6時間から9時間へ増え、労働は3時間減る。全体では労働が3時間増えるので、この個人では代替効果が勝つ
変化後は、全所得 の半分の144を余暇の価格16で割って、余暇9時間(点G)です。点Eの満足は なので、元の無差別曲線は です。補助線は新しい予算線と平行(傾き16)なので、点Fはこの曲線の傾きが16になる点です。 の無差別曲線の傾きの大きさは (効用最大化の論点で学ぶ限界代替率)なので で、これを に入れると から余暇6時間・所得96です。
| 動き | 余暇 | 労働時間 |
|---|---|---|
| 代替効果(EからF) | 12時間 → 6時間 | 6時間増える |
| 所得効果(FからG) | 6時間 → 9時間 | 3時間減る |
| 全体(EからG) | 12時間 → 9時間 | 3時間増える |
所得効果で余暇が増えているので、この個人にとって余暇は上級財です。2つの効果は逆向きで、この個人では代替効果のほうが大きいので、労働時間は増えます。
労働供給の例題(賃金率の変化)
自分で解いてみる労働供給の例題1(賃金率の変化)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 3
正解は3です。余暇が上級財なら、代替効果(労働を増やす)と所得効果(労働を減らす)は逆向きです。
- 1:代替効果の向きを逆にした文です。余暇が割高になるので、代替効果では余暇は減り、労働は増えます。
- 2:所得効果の向きを下級財のときと取り違えた文です。上級財なら、豊かになった分で余暇は増え、労働は減ります。
- 4:代替効果だけを見て全体を断定した文です。所得効果が勝てば労働時間は短くなります。
- 5:所得効果が勝つと賃金率が上がるほど労働は減るので、その範囲の労働供給曲線は右下がり(縦軸に賃金率をとると左へ曲がる形。後方屈曲)です。
| 効果 | 余暇 | 労働時間 |
|---|---|---|
| 代替効果 | 減る | 増える |
| 所得効果(上級財) | 増える | 減る |
| 全体 | 大小で決まる | 大小で決まる |
タイプ2税・働かなくても入る所得の変化
所得税・定額税・非労働所得で労働時間はどう変わるか
見分け方:問題文に「非労働所得だけが増える」「労働所得に一定の税率で課税される(比例的な労働所得税)」「所得や労働時間にかかわらず一定額を納める(定額税)」と書かれ、図の予算線の移り方を読みます。
なぜそうなるか予算線が平行に動くか、回るか
予算線の傾きは、余暇を1時間減らして1時間多く働いたときに、税を引いた後で手元に増える額(手取りの賃金率)です。働かなくても入る所得や定額税は、この額を変えないので予算線は平行に動き、代替効果は起きません。比例的な労働所得税は手取りの賃金率を下げるので、予算線は点Tの真上の点を軸に回り、代替効果も起きます。
- 元の線:賃金率4・働かなくても入る所得32の予算線
- 所得増:働かなくても入る所得が32から64に増えるわかること傾き(賃金率)はそのままで上へ平行に移る。代替効果は無く、所得効果だけ
- 定額税:働く時間に関係なく16を納めるわかること傾きはそのままで下へ平行に移る。これも所得効果だけ
- 比例税:労働所得の50%を納めるわかること1時間働いて残るのは4の半分の2。点(16,32)を軸に回って傾きが緩やかになるので、代替効果と所得効果の両方が起きる
判定のしかた
- 1
傾きが変わるかを見る
働かなくても入る所得の増減・定額税は平行移動で、所得効果だけです。比例的な労働所得税は、手取りの賃金率が(1−税率)倍になって予算線が回るので、代替効果と所得効果の両方が起きます。 - 2
平行移動は所得の向きだけで決まる
所得が増えて余暇が増えれば、余暇は上級財です。余暇が上級財なら、働かなくても入る所得が増えると労働は減り、定額税では労働は増えます。 - 3
比例税は2つの効果が逆向き
余暇が割安になる代替効果は余暇を増やし(労働を減らし)、手取りが減る所得効果は、余暇が上級財なら余暇を減らします(労働を増やす)。全体は図の点の左右で読みます。
例で確かめる労働所得に50%の比例税をかける
使える時間16時間・賃金率10・働かなくても入る所得20・効用関数 の個人の労働所得に、50%の比例税をかけます。働かなくても入る所得には税がかかりません。
- 課税前:賃金率10の予算線と無差別曲線Iの接点Eわかること余暇9時間・労働7時間
- 課税後:手取りの賃金率が5になり、予算線は点(16,20)を軸に回って緩やかになるわかること新しい接点Gは余暇10時間・労働6時間
- 補助線:課税後の予算線に平行で、無差別曲線Iに接する線わかること接点Fは余暇約12.7時間
- 代替効果:EからFわかること余暇が割安になったので、余暇は9時間から約12.7時間へ増える(労働は減る)
- 所得効果:FからGわかること手取りが減って貧しくなった分、余暇は約12.7時間から10時間へ減る(労働は増える)。全体では余暇が1時間増え、労働は7時間から6時間に減る
課税前は、全所得 の半分の90を10で割って余暇9時間です。課税後は手取りの賃金率が5になり、全所得 の半分の50を5で割って余暇10時間です。点Eの満足は です。補助線は課税後の予算線と平行(傾き5)なので、点Fは と を両方満たす点で、 から余暇は約12.7時間です。代替効果(EからF)で余暇は約3.7時間増え、所得効果(FからG)で約2.7時間減り、合わせて1時間増えます。労働時間は7時間から6時間に減ります。
労働供給の例題(定額税)
自分で解いてみる労働供給の例題2(定額税と予算線)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
図は、ある個人が使える時間 OT を余暇と労働に分け、労働で得た所得と働かなくても入る所得をすべて消費に充てる様子を、横軸に余暇、縦軸に消費をとって表したものである。労働時間は、OT から余暇を引いた長さである。政府がこの個人に定額税を課すと、予算線は直線アから直線イに変わり、最適点は点Eから点Fに移る。この図に関する記述として、妥当なのはどれか。
正解は 4
正解は4です。直線アとイは平行で、傾き(賃金率)は変わっていないので、点Eから点Fへの動きは所得効果だけです。点Fは点Eより左にあり、所得が減って余暇が減っているので、余暇は上級財です。
- 1:定額税は余暇の価格(賃金率)を変えません。
- 2:余暇と労働を同じ向きに読んだ文です。余暇が減れば、労働時間は長くなります。
- 3:平行移動を回転と読み違えた文です。定額税は手取りの賃金率を変えないので、代替効果は起きません。
- 5:図の個人だけで全員を断定した文です。余暇が下級財の個人なら、定額税で余暇が増え、労働時間は短くなります。
図は、使える時間16時間・賃金率5・働かなくても入る所得40・効用関数 の個人に、定額税30を課したものです。
| 項目 | 課税前(点E) | 課税後(点F) |
|---|---|---|
| 予算線の傾き | 5 | 5 |
| 余暇 | 12時間 | 9時間 |
| 労働時間 | 4時間 | 7時間 |
| 消費 | 60 | 45 |
タイプ3労働供給量の計算
労働時間の求め方(労働供給量の計算)
見分け方:「効用関数は 」のように効用関数と、使える時間・賃金率・働かなくても入る所得の数が与えられ、「労働時間はどれか」「労働供給関数(賃金率と労働時間の関係の式)として正しいのはどれか」と聞かれます。税率や消費税が付くこともあります。
なぜそうなるかコブ=ダグラス型の効用で、税をかけても労働時間が変わらない理由
(消費 と余暇 の掛け算に指数 ・ が付いた形。コブ=ダグラス型と呼びます)では、全所得のうち余暇に使う割合が と指数だけで決まり、値段に関係しません。働かなくても入る所得が0なら、比例的な労働所得税で全所得()も余暇の価格()も同じ割合で下がるので、割った余暇の時間は変わりません。消費税は消費財の値段を上げるだけで、余暇に使う額も余暇の価格も変えないので、働かなくても入る所得があっても労働時間は変わりません。
- 課税前:賃金率12。全所得192の半分の96を余暇に使い、余暇の価格12で割って余暇8時間(点E)
- 課税後:手取りの賃金率は9。全所得も144に減るが、半分の72を余暇の価格9で割るとやはり余暇8時間(点G)
- 理由:全所得も余暇の価格も同じ割合で下がるので、割った答えは変わらないわかること労働時間は8時間のまま
使える条件:効用関数がコブ=ダグラス型( も同じ)のときだけ。比例的な労働所得税で変わらないのは、さらに働かなくても入る所得が0のときです。
使える条件:効用関数がコブ=ダグラス型のときで、出した余暇が 以下のとき(余暇が を超えたら働かない、つまり労働時間0が答え)。余暇の価格は賃金率で、労働所得に税率 の比例税があれば手取りの です。 は手元に残る額で入れます( にも同じ税がかかるなら 、定額税は から引く)。 のように労働時間 で書かれていても、 を余暇と読めば同じ式が使えます。
導き方:予算 の を左へ移すと です。余暇を「価格 の財」とみなすと、コブ=ダグラス型では全所得のうち を余暇に使います(効用最大化の論点の早解きの式と同じ)。
解き方の手順
- 1
予算制約を余暇でまとめる
の形にします。消費税があれば、 に税込みの価格を掛けます。 - 2
余暇に回る割合を指数から出す
なら です。分子は余暇の指数です。 - 3
余暇の価格で割って時間にする
余暇への支出を余暇の価格で割ると、余暇の時間です。 - 4
使える時間から引く
労働時間 = − 余暇。賃金率が変わる問題は、前と後で労働時間を出して差を取ります。
例で確かめる税の有無で労働時間を比べる
使える時間20時間・賃金率10・働かなくても入る所得50・効用関数 の個人です。余暇に回る割合は です。
| 場合 | 全所得 | 余暇 | 労働時間 |
|---|---|---|---|
| 税なし | 5時間 | ||
| 労働所得に50% | 2時間 | ||
| 消費税25% | 250 | 15 | 5時間 |
労働所得税では余暇の価格が5に下がるので、余暇が増えて労働時間が減ります。消費税25%(税込み価格1.25)では、消費に使う額 で買える量が に減るだけで、余暇は15時間のままです。
労働時間の求め方の例題
自分で解いてみる労働時間の求め方の例題(比例的な所得税)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 2
手取りの賃金率は で、これが余暇の価格です。全所得は 、余暇に回る割合は なので、余暇への支出は 、余暇は 時間です。労働時間は 時間で、正解は2です。
| 選択肢 | どの間違いから出るか |
|---|---|
| 15時間 | 労働時間でなく余暇を答えた |
| 36時間 | 税を無視した(全所得 、余暇 ) |
| 38時間 | 全所得は課税後の300にしたが、割る価格を5のままにした(余暇 ) |
| 40時間 | 働かなくても入る所得を入れなかった(全所得 、余暇 ) |
タイプ4屈折した予算線
屈折した予算線の労働時間の求め方
見分け方:「所定の時間を超えて働いた分には割増賃金が付く」「所得のうち一定額を超える部分にだけ課税される」のように、働く時間や所得によって手取りの賃金率が途中で変わります。予算線が途中で折れ曲がる(屈折する)形です。
なぜそうなるか延ばした線の接点が選べるとは限らない理由
折れた予算線は、傾きの違う2本の直線のつなぎです。1本ずつ延ばして接点を出しても、その接点が自分の線の範囲(折れる点より左か右か)に無ければ、本当の予算線の上には無いので選べません。
- 予算線:所得が40になるのは4時間働いたとき(余暇16時間の点K)わかることそこまでは傾き10、40を超えると手取りが半分になり傾き5。点Kで折れる
- 税なしの線:税の無い線を延ばすと点P(余暇10時間)で接するわかること点Pは所得100で40を超えているので、本当の予算線の上には無く選べない
- 税ありの線:税のある線の式(c+5l=120)で接点を出すと点E(余暇12時間)わかること労働8時間は4時間以上で、税のある部分に入るので選べる。これが最適
解き方の手順
- 1
折れる点を出す
賃金率が変わる労働時間(所得が税のかからない上限に届く時間など)を求めます。 - 2
線ごとに式を作る
折れた後の線は賃金率が変わった直線で、式にすると「働かなくても入る所得がある予算線」と同じ形になります。余暇でまとめて にします。 - 3
接点を出して範囲を確かめる
線ごとにタイプ3の式で接点を出し、その労働時間が自分の線の範囲に入るか確かめます。 - 4
候補を比べる
範囲に入る接点が候補です(どちらも外なら折れる点)。割増賃金のように折れる点から先の線のほうが急になる(予算線が外側へ折れる)ときは、両方の線に接点ができて候補が2つになることがあり、効用を計算して大きいほうを選びます。
例で確かめる40を超える所得に50%の税
使える時間20時間・賃金率10・効用関数 の個人です。働いて得た所得のうち40を超える部分にだけ、50%の税がかかります。所得が40になるのは4時間働いたときです。税なしの線は、全所得200の半分100を10で割って余暇10時間・労働10時間で、4時間を超えるので範囲の外です。
| 線 | 余暇でまとめた式 | 接点の労働時間 | 選べるか |
|---|---|---|---|
| 税なし(4時間まで) | 10時間 | 範囲の外 | |
| 税あり(4時間から) | 8時間 | 範囲の中 |
税ありの線は、4時間で40を得たあと1時間ごとに手取り5なので で、手取り5・働かなくても入る所得20の予算線と同じ式です。余暇で書くと になり、半分の60を5で割って余暇12時間、労働8時間です。念のため折れる点(労働4時間)と比べると、効用は で、8時間の より小さいので、最適は8時間です。
屈折した予算線の例題
自分で解いてみる屈折した予算線の例題(割増賃金)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 5
10時間までの線は、全所得が なので で、余暇9時間・労働9時間(範囲の中)、効用は です。10時間働くと を得て、そこから1時間ごとに10増えるので、10時間を超える線は で、余暇で書くと です。余暇6時間・労働12時間(範囲の中)、効用は です。折れる点(10時間)の効用は です。いちばん大きいのは12時間の360で、正解は5です。
点Kが折れる点、点Aが10時間までの線の接点、点Bが割増の線の接点です。灰色の破線は10時間までの線を延ばした線です。点Bを通る無差別曲線のほうが右上にあり、満足が大きくなります。
9時間は割増の線を調べずに答えた値、10時間は折れる点、6時間は最適な点の余暇、2時間は割増が付く時間()です。
まとめ覚えることと間違いやすい点
覚えることの表(変化ごとの代替効果と所得効果)
余暇が上級財の場合です。下級財なら、所得効果の向きが逆になります。
| 変化 | 予算線 | 代替効果(労働) | 所得効果(労働) |
|---|---|---|---|
| 賃金率の上昇 | 点Tの真上を軸に急になる | 増える | 減る |
| 賃金率の低下 | 点Tの真上を軸に緩やかになる | 減る | 増える |
| 働かなくても入る所得の増加 | 上へ平行 | なし | 減る |
| 定額税 | 下へ平行 | なし | 増える |
| 比例的な労働所得税 | 点Tの真上を軸に緩やかになる | 減る | 増える |
2つの効果が逆向きのとき、全体の向きは大小で決まります。余暇が下級財なら、賃金率の上昇で労働は減りません。
効用関数が のとき、労働時間は次のように変わります。
| 変化 | 働かなくても入る所得が0 | 働かなくても入る所得がプラス |
|---|---|---|
| 賃金率の上昇 | 変わらない | 増える |
| 労働所得への比例税 | 変わらない | 減る |
| 消費税 | 変わらない | 変わらない |
| 定額税 | 増える | 増える |
よくある間違い
| 誤りの文 | 正しくはこう |
|---|---|
| 賃金率が上がると、代替効果で余暇は増える | 余暇が割高になるので、代替効果で余暇は減り、労働は増える |
| 賃金率が上がれば、労働時間は必ず長くなる | 余暇が上級財なら2つの効果は逆向きで、大小で決まる |
| 余暇が下級財なら、全体の効果は決まらない | 賃金率の上昇では、2つの効果がそろって労働を増やす |
| 余暇が増えたので、労働時間も長くなった | 労働時間は使える時間から余暇を引いた長さ。余暇が増えれば労働は減る |
| 労働所得税は予算線を平行に下げるだけ | 手取りの賃金率が下がって予算線が回り、代替効果も起きる(平行は定額税) |
| 補助線は、変化前の予算線に平行に引く | 変化後の予算線に平行で、変化前の無差別曲線に接する |
| 税があっても、余暇の価格は課税前の賃金率 | 手取りの賃金率で、全所得も余暇の価格も書き直す |
| 働かなくても入る所得を、使える時間(時間)に足す | 全所得は「賃金率×使える時間+働かなくても入る所得」。お金どうしで足す |
| 余暇に回る割合に、消費の指数を使う | なら余暇の割合は |
| 消費税がかかれば、労働時間は必ず変わる | なら変わらない(変わるのは消費の量) |
| 延ばした線の接点を、範囲を見ずに答える | 自分の線の範囲に入るか確かめ、候補が2つなら効用を比べる |
| 労働時間を聞かれて余暇を答える | 最後に使える時間から引く |
次にやること
先に読む論点











