不確実性とは・期待値と期待効用の違い
30秒でわかる不確実性
不確実性の論点では、結果がいくつかに分かれ、それぞれが起こる確率は分かっている(これをリスクと呼びます)ときに、人がどれを選ぶかを考えます。人は所得の平均ではなく、効用(その所得から得られる満足の大きさ)の平均が大きいほうを選ぶ、と考えるのが出発点です。このページでは、確率で所得が決まるものを「くじ」と呼びます。
期待値(所得の平均)
期待効用(効用の平均)
確実性等価
リスクプレミアム
先に読む論点効用最大化
このページでは、所得を (万円)、効用を と書きます(泉の問題では所得を 、効用を と書くことが多いです)。図の人の効用は で、持っているくじは「確率 で0万円、 で100万円」です。
- 期待値は 万円です。所得の平均で、単位は万円です。
- 期待効用は です(、)。効用の平均で、金額ではありません。
- 期待効用は「期待値50万円の効用」(=約7.1)ではありません。このページでは、この2つをいつも分けて書きます。
試験での出方
| 地方上級 | ★★★ | 特別区Ⅰ類 | ★★ |
|---|---|---|---|
| 市役所 | ★★ | 国家総合職 | ★★★ |
| 国家一般職 | ★★★ | 国家専門職 | ★★★ |
計算の問題(確実性等価・リスクプレミアム・保険料の上限)と、文の正誤の問題(危険への態度・保険・リスク分担)の両方が出ます。
よく出るタイプ
不確実性の問題は、次の4つのタイプに分けられます。カードを押すと、そのタイプの解き方に切り替わります。
基本の図効用の曲線と確実性等価
期待効用のグラフの読み方(確実性等価とリスクプレミアム)
- 効用曲線:所得M(万円)を確実にもらったときの効用 U=√Mわかること右へ行くほど効用は増えるが、増え方はだんだん小さくなるので、曲線は上に出っ張る
- 2つの結果:確率2分の1で0万円(点A・効用0)、2分の1で100万円(点B・効用10)のくじ
- 期待値:所得の平均は 0×1/2+100×1/2=50万円わかること横軸の50の位置。これは所得の平均で、まだ効用ではない
- 期待効用:効用の平均は 0×1/2+10×1/2=5わかること線分ABの上で、横が50の点Eの高さ
- 確実な所得:50万円を確実にもらうと効用は約7.1(点F)わかること点Fは点Eより上。期待値が同じなら、この人は確実なほうを好む(危険回避的)
- 確実性等価:点Eの高さ5から左へ進み、曲線にぶつかる点Cわかること√M=5 より25万円。確実な25万円は、このくじと同じ効用
- プレミアム:点Cから点Eまでの横の長さが、期待値と確実性等価の差 50−25=25万円わかること危険を避けられるなら、平均より25万円少なくてもよいと考える額(リスクプレミアム)
図の見方
- 横は所得(右へ行くほど多い)、縦は効用(上へ行くほど大きい)です。曲線は、その所得を確実にもらったときの効用を表します。
- くじの期待効用は、2つの結果の点A・Bを結んだ線分の上で、横が期待値になる点Eの高さで読みます。線分ABの上の点は、横も縦も「AとBの平均」になっているからです。確率が ずつなら、横は所得の平均(期待値)、縦は効用の平均(期待効用)で、どちらも線分の真ん中です。確率が偏ると、確率の大きい結果の点の側に寄ります。
- 曲線が上へ出っ張る形(上に凸)だと、点Eは曲線より下に来ます。期待値と同じ50万円を確実にもらうほう(点F)が、くじより効用が大きくなります。
所得が1万円増えたときの効用の増え方を限界効用と呼びます。上に凸の曲線は、所得が増えるほど限界効用が小さくなる形です。これを限界効用逓減(ていげん:だんだん減ること)と呼びます。
確実性等価(確実性同値額とも呼びます)は、点Eの高さのまま左(または右)へ進んで曲線にぶつかる点Cの所得です。基本の図では より25万円で、「くじを持つ」ことと「25万円を確実にもらう」ことが同じ効用になります。リスクプレミアムは、横軸の上での期待値と確実性等価の差 万円です。危険を避けられるなら、平均より25万円少ない確実な所得でもよい、と考える額です。
タイプ1期待効用と危険への態度
危険回避的・危険中立的・危険愛好的の見分け方(くじの選択)
見分け方:問題文に効用関数(「」「」「」など)と、2つ以上のくじが書いてあります。聞かれるのは「危険に対する態度と、くじの選択の組合せ」です。
なぜそうなるか曲線の出っ張りの向きで態度が決まる理由
期待値が同じくじと確実な所得を比べると、くじの期待効用は線分の上の点E、確実な所得の効用は曲線の上の点Fの高さです。曲線が上に凸ならFが上(確実なほうを好む=危険回避的)、直線ならFとEが重なり(同じだけ好ましい=危険中立的)、下へ出っ張る形(下に凸)ならFが下(くじを好む=危険愛好的)です。
- 2つの結果:確率2分の1で0万円(点A)、2分の1で100万円(点B)。期待値は50万円、期待効用は線分ABの真ん中の点Eの高さ
- 上に凸:U=√M では、確実な50万円の効用(点F)が約7.1で、Eの高さ5より高いわかること確実なほうを好む(危険回避的)
- 直線:U=M÷10 は線分ABと重なり、確実な50万円の効用も5わかることくじと確実な所得は同じだけ好ましい(危険中立的)
- 下に凸:U=M²÷1000 では、確実な50万円の効用(点F)が2.5で、Eの高さ5より低いわかることくじのほうを好む(危険愛好的)
解き方の手順
- 1
効用関数の形から態度を決める
( の0.5乗)・ のように の何乗かが1より小さいものと、 は上に凸で危険回避的です。 や のように に正の数を掛けた形(定数を足してもよい)は直線で危険中立的、 のように1より大きい乗は下に凸で危険愛好的です。迷ったら限界効用を見ます。限界効用は効用を所得で微分したもので、べき乗の微分( を微分すると )を使います。 なら で、所得とともに大きくなるので下に凸です。 - 2
くじごとに期待値を出す
期待値が等しくなるように作られた問題が多いです。等しければ、態度だけでくじが決まります。 - 3
期待値が違えば期待効用を比べる
期待値が違うときは、態度だけで決めず、くじごとに期待効用を出して大きいほうを選びます。危険回避的な人が期待値の小さいくじを選ぶこともあります。 - 4
組合せの選択肢に当てる
態度とくじの選択の両方が合う選択肢が正解です。
例で確かめる期待値の大きいくじを選ばない人
効用が の人が、くじA「確実に60万円」と、くじB「確率 で9万円、 で121万円」のどちらかを選びます。
は上に凸なので、この人は危険回避的です。くじBの期待値は 万円で、くじAの60万円より大きくなります。それでも期待効用は、くじBが 、くじAが =約7.7で、くじAのほうが大きいので、この人はくじAを選びます。
| くじ | 期待値 | 期待効用 | 同じ効用の確実な所得 |
|---|---|---|---|
| A(確実) | 60万円 | 約7.7 | 60万円 |
| B(くじ) | 65万円 | 7 | 49万円 |
くじBの期待効用7は、確実な49万円の効用()と同じです。
期待効用の例題(危険への態度とくじの選択)
自分で解いてみる不確実性の例題1(危険への態度とくじの選択)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 3
くじの期待値は 万円で、確実な34万円と同じです。期待値が同じなので、態度だけで選ぶものが決まります。
| 人(効用) | くじの期待効用 | 確実な34万円の効用 | 選ぶもの |
|---|---|---|---|
| A(・上に凸) | 5 | 約5.8 | 確実な34万円 |
| B(・直線) | 170 | 170 | どちらでも同じ |
| C(・下に凸) | 2056 | 1156 | くじ |
Aのくじの期待効用は 、Cは です。正解は3です。
1は上に凸と下に凸を逆に取った組合せ、2は「期待値が同じだから、だれにとっても同じ」とした組合せです。4は直線のBを危険回避的、5は危険愛好的と取り違えた組合せです。
タイプ2確実性等価とリスクプレミアム
確実性等価とリスクプレミアムの求め方
見分け方:効用関数と、所得ごとの確率が与えられ、「確実性等価はいくらか」「リスクプレミアムはいくらか」と聞かれます。言葉を使わず「期待効用と同じ効用をもたらす確実な所得はいくらか」と書かれることもあります。
なぜそうなるか危険愛好的だとリスクプレミアムが負になる理由
確実性等価は、点Eの高さのまま横へ進んで曲線にぶつかる所です。上に凸の曲線には点Eの左でぶつかる(期待値より小さい)ので、プレミアムは正です。下に凸の曲線には右でぶつかり、確実性等価が期待値より大きくなるので、プレミアムは負です。直線なら曲線が点Eを通るので、0です。
- 2つの結果:U=M²÷100 の人に、確率2分の1で10万円(点A)、2分の1で70万円(点B)のくじわかること期待値40万円、期待効用(1+49)÷2=25(点E)
- 確実性等価:点Eの高さ25から横へ進むと、曲線にぶつかるのは右の点CわかることM²÷100=25 より50万円
- プレミアム:期待値40−確実性等価50で−10万円わかること負になる。確実な所得が期待値より10万円多くないと、くじを手放さない
確実性等価は「その所得の効用 = 期待効用」を所得について解いた値です。効用が なら期待効用を2乗、 なら3乗、 のように係数があれば先に係数で割ってから戻します。 なら、確率 で 万円、 で 万円のとき、確実性等価は です(期待効用 が とまとまるためです。覚えてしまってよい式です)。
解き方の手順
- 1
各所得の効用を出す
なら、各所得の平方根です。 - 2
確率を掛けて足し、期待効用にする
ここで出るのは効用の値で、金額ではありません。 - 3
所得に戻す
期待効用を足し終えてから、2乗(3乗)を1回だけ当てます。これが確実性等価です。 - 4
期待値から引く
期待値を出し、確実性等価を引いた差がリスクプレミアムです。
例で確かめる確率3分の2で16万円、3分の1で169万円
効用が の人の所得が、確率 で16万円、 で169万円になります。
- 2つの結果:確率3分の2で16万円(点A・効用4)、3分の1で169万円(点B・効用13)
- 期待効用:4×2/3+13×1/3=7わかること線分ABの上で、横が期待値67万円の点Eの高さ。確率の大きいAの側に寄る
- 確実性等価:高さ7で左へ進み、曲線にぶつかる点Cわかること√M=7 より49万円
- プレミアム:期待値67−確実性等価49で18万円わかること点Cから点Eまでの横の長さ
期待効用は で、確実性等価は 万円です。期待値は 万円なので、リスクプレミアムは 万円です。点Eは確率の大きいAの側に寄るので、線分の真ん中ではありません。
確実性等価の例題(リスクプレミアム)
自分で解いてみる確実性等価・リスクプレミアムの例題
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 1
期待効用は 、確実性等価は 万円です。期待値は 万円なので、リスクプレミアムは 万円です。正解は1です。
| 量 | 値 | 出し方 |
|---|---|---|
| 期待効用 | 10 | 効用の平均 |
| 確実性等価 | 100万円 | 期待効用10を2乗 |
| 期待値 | 112万円 | 所得の平均 |
| リスクプレミアム | 12万円 | 112−100 |
100万円は確実性等価をそのまま答えた値、102万円は期待効用の10を金額とみなして期待値から引いた値です。36万円は最小の所得64万円から、156万円は最大の所得256万円から確実性等価までを測った値で、どちらも期待値から測っていません。
タイプ3保険にいくらまで払うか
保険料の上限の求め方(保険に入る条件)
見分け方:問題文に「196万円の資産」「確率 で事故にあい、192万円の損失」「損失の全額を補償する保険」のように、資産・事故の確率・損失の額がそろって書かれています。聞かれるのは「支払ってもよい保険料の最大値」か「事故の確率がいくら以上なら加入するか」です。
なぜそうなるか保険料の上限が「資産 − 確実性等価」になる理由
損失の全額を補償する保険に入ると、事故があってもなくても所得は「資産 − 保険料」に決まり、曲線の上の1点(点G)になります。保険料を上げると点Gは曲線を左へ下がり、入らないときの期待効用(点Eの高さ)と同じになった所が上限です。そのときの所得が確実性等価です。
保険料96万円:入ると確実に100万円で効用10、入らないと期待効用10 → どちらでも同じ(ここが上限)
期待損失は、事故の確率に損失を掛けた額です。
使える条件:損失の全額を補償する保険で、保険料は事故がなくても払う(戻ってこない)とき。保険に入らないときの所得の期待値は「資産 − 期待損失」なので、資産 − 確実性等価 =(資産 − 期待値)+(期待値 − 確実性等価)= 期待損失 + リスクプレミアム になります。危険回避的な人はリスクプレミアムが正なので、期待損失より多く払ってもよいと考えます。
解き方の手順
- 1
入らないときの期待効用を出す
事故のときの所得は「資産 − 損失」、事故がないときは資産のままです。確率と所得の組を取り違えないようにします。 - 2
確実性等価に戻す
なら期待効用を2乗します。 - 3
資産から引く
資産 − 確実性等価が、保険料の上限です。 - 4
確率を聞かれたら不等式にする
入ったときの効用(確率によらず一定)が、入らないときの期待効用(確率の一次式)以上になる条件を、確率について解きます。
例で確かめる資産196万円、確率3分の1で192万円の損失
効用が の人が196万円の資産を持ち、確率 で事故にあって192万円を失います。損失の全額を補償する保険に、いくらまで払うでしょうか。
事故のときの資産は 万円です。入らないときの期待効用は 、確実性等価は 万円なので、保険料の上限は 万円です。
| 項目 | 入らない | 入る(保険料96万円) |
|---|---|---|
| 事故のときの所得 | 4万円 | 100万円 |
| 事故がないときの所得 | 196万円 | 100万円 |
| 期待値 | 132万円 | 100万円 |
| 期待効用 | 10 | 10 |
期待損失は 万円、リスクプレミアムは 万円で、 万円が上限と一致します。
保険の例題(加入する事故の確率)
自分で解いてみる保険に入る条件の例題(事故の確率)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 2
事故のときの資産は 万円で効用3、事故がないときは225万円で効用15です。入らないときの期待効用は です。入ると資産は確実に 万円で、効用は12です。 より で、正解は2です。
点Kより右(事故の確率が4分の1より大きい)では、入ったときの効用12のほうが高くなります。
は期待損失で比べた値()、 はそれを事故がない側の確率と取り違えた値です。 は事故の確率と事故がない確率を取り違えた値、 は事故のときの効用3を0とみなした値()です。
タイプ4リスク分担と保険
リスク分担と保険(危険回避と大数の法則)
見分け方:数字が無く、「リスクの分担と保険に関する記述」「依頼人と代理人」「大数の法則」「保険料が保険金の期待値に等しい保険」のような文が5つ並びます。
なぜそうなるか公正な保険なら、危険回避的な人は全額を補償する
保険料が保険金の期待値に等しい保険を公正な保険と呼びます。全額を補償する保険なら、保険金の期待値は期待損失(タイプ3の例なら 万円)と同じです。全額を補償する公正な保険に入ると、所得は期待値のまま決まった額になり、点Eと同じ横の位置にある曲線の上の点Fへ移ります。上に凸なら点Fは点Eより上で効用が上がるので入り、直線なら同じ、下に凸なら下がるので入りません。
- 保険なし:事故(確率3分の1)なら4万円(点A)、なければ196万円(点B)わかること期待値132万円、期待効用10(点E)
- 公正な保険:保険料を期待損失の64万円にして全額を補償わかること所得は確実に132万円で、点Eの真上の点F(効用 約11.5)へ移る。Eより高いので、危険回避的な人は入る
- ほかの態度:効用が線分ABと同じ直線の人では、確実な132万円の効用は点Eの高さと同じわかること入っても入らなくても同じ(危険中立的)。下に凸の効用の人では、確実な132万円の効用は点Eより低く → 入らない(危険愛好的)
判定のしかた
- 1
だれの態度かを確かめる
期待値だけで比べるのは危険中立的な人だけです。危険回避的な人は期待値が同じなら確実な所得(平均を変えずに変動を減らしたほう)を、危険愛好的な人は変動の大きいくじを好みます。 - 2
保険は保険料と期待損失を比べる
公正な保険なら、危険回避的な人は全額の補償を選び、危険中立的な人はどちらでも同じ、危険愛好的な人は入りません。全額を補償する保険で、保険料が期待損失を上回ると、危険中立的な人は入りませんが、危険回避的な人は上回る分がリスクプレミアム以下なら入ります。 - 3
変動の分け方を見る
2人の所得の合計が確率で変わるとき、その合計をどう分けるかを考えます。危険中立的な人と危険回避的な人なら、危険中立的な人が変動をすべて負う(危険回避的な人の所得を確実な額に決める)のが効率的です。ここで効率的とは、分け方を変えても、だれかを損させずにだれかを得させることがもうできない状態のことです。2人とも危険回避的なら、一般に2人とも変動の一部を負います(割合は危険を嫌う度合いで変わり、半分ずつとは限りません)。 - 4
依頼人と代理人
仕事を頼む側を依頼人、引き受ける側を代理人と呼びます。代理人がどれだけ努力したかを依頼人が見られるなら、努力の量を契約で決め、一定の報酬を払えば済みます。見られないなら、一定の報酬では代理人が怠けても報酬が変わらないので、成果に応じて額が変わる報酬にして努力させる必要があります。すると代理人の所得に変動が生まれるので、代理人が危険回避的なら、その変動を我慢してもらう分だけ報酬の期待値を上乗せしなければなりません(危険中立的な代理人なら上乗せは要りません)。 - 5
大数の法則
ある人の事故が、ほかの人の事故の起こりやすさに影響しない(互いに独立な)加入者を多く集めると、事故にあう人の割合が事故の確率に近づくので、1人あたりの保険金が期待値の近くに集まり、変動が小さくなります。事故の確率や、1人あたりの保険金の期待値は変わりません。
例で確かめる危険回避的な人と危険中立的な人の所得の分け方
Aは効用が (危険回避的)、Bは (危険中立的)です。2人の所得の合計は、確率 で100万円、 で200万円です。
| 分け方 | 合計100万円のとき(A・B) | 合計200万円のとき(A・B) | 2人の期待効用 |
|---|---|---|---|
| ア | 36万円・64万円 | 100万円・100万円 | A 8、B 82 |
| イ | 68万円・32万円 | 68万円・132万円 | A 約8.2、B 82 |
| ウ | 64万円・36万円 | 64万円・136万円 | A 8、B 86 |
Bは なので、Bの期待効用は所得の期待値(万円)と同じ数になります。
アからイへ、Aの期待値68万円を変えずに変動をBへ移すと、Aの期待効用は8から約8.2に上がり、期待値で比べるBは82のままです。ウのように、Aの所得をアのときのAの確実性等価(期待効用8を2乗した64万円)に決めれば、Aはアと同じ効用のまま、Bの期待値が4万円増えます。変動を危険中立的な人に寄せるほうが、だれも損をせずに得をする人が出ます。
リスク分担の例題(文の正誤)
自分で解いてみるリスク分担と保険の例題
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 4
- 1:誤り。上回る分がリスクプレミアムより小さければ入ります。タイプ3の例(期待損失64万円)では、保険料が96万円までなら入ります。危険中立的な主体の性質を当てはめた文です。
- 2:誤り。危険愛好的な主体は確実性等価が期待値より大きいので、リスクプレミアムは負です。
- 3:誤り。変動をすべて負うのが効率的なのは、危険中立的な主体のほうです。負う側を逆にした文です。
- 4:正しい。効用が直線なら、期待効用は期待値の効用に等しく、確実性等価は期待値そのものです。正解は4です。
- 5:誤り。 は下に凸で危険愛好的なので、公正な保険でも入りません。全額の補償を選ぶのは危険回避的な主体です。
| 態度 | 確実性等価と期待値 | リスクプレミアム |
|---|---|---|
| 危険回避的 | 期待値より小さい | 正 |
| 危険中立的 | 期待値に等しい | 0 |
| 危険愛好的 | 期待値より大きい | 負 |
依頼人と代理人の話は、情報の非対称性の論点で、行動が観察できない問題として詳しく扱います。
まとめ覚えることと間違いやすい点
覚えることの表(危険への態度と曲線の形)
効用は所得が多いほど大きく、人は期待効用を最大にするように選ぶとします。
| 項目 | 危険回避的 | 危険中立的 | 危険愛好的 |
|---|---|---|---|
| 効用の曲線 | 上に凸(上へ出っ張る) | 直線 | 下に凸(下へ出っ張る) |
| 限界効用 | 所得とともに小さくなる | 一定 | 所得とともに大きくなる |
| 効用関数の例 | ・・ | ||
| 期待値が同じなら | 確実な所得を好む | どちらでも同じ | くじを好む |
| 確実性等価 | 期待値より小さい | 期待値に等しい | 期待値より大きい |
| リスクプレミアム | 正 | 0 | 負 |
| 公正な保険(全額補償) | 入る | どちらでも同じ | 入らない |
| 保険料の上限(全額補償) | 期待損失より大きい | 期待損失に等しい | 期待損失より小さい |
よくある間違い
| 誤りの文 | 正しくはこう |
|---|---|
| 期待効用は、期待値を効用関数に入れた値 | 各結果の効用に確率を掛けて足した値(効用の平均) |
| 期待値が等しいくじは、だれにとっても同じだけ好ましい | 同じだけ好ましいのは危険中立的な人だけ |
| は下に凸、 は上に凸 | ・ は上に凸(危険回避的)、 は下に凸(危険愛好的) |
| 危険愛好的なら、いちばん変動の大きいくじを選ぶ | 期待値が違えば、期待効用を計算して比べる |
| 期待効用の値を、そのまま確実性等価として答える | 効用の値を所得に戻す( なら2乗) |
| 確実性等価で、項ごとに2乗してから足す | 期待効用を足し終えてから1回だけ2乗する |
| リスクプレミアムを、最大(最小)の所得と確実性等価の差で出す | 期待値と確実性等価の差 |
| 保険料の上限は期待損失 | 期待損失+リスクプレミアム(=資産−確実性等価) |
| 加入者が増えると、大数の法則で事故の確率や保険金の期待値が下がる | 小さくなるのは1人あたりの保険金の変動だけ |
| 2人とも危険回避的でも、一方が変動をすべて負うのが効率的 | 2人の所得の合計が変動するなら、一般に2人とも変動の一部を負う(割合は危険を嫌う度合いで決まり、半分ずつとは限らない) |
| 危険中立的な人も、割高な保険に入ることがある | 期待値で比べるので、保険料が期待損失を上回れば入らない |
次にやること
先に読む論点
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