貿易政策とは・小国の関税と自由貿易の利益
30秒でわかる貿易政策
貿易政策は、関税・輸入割当・補助金で、輸入の量や国内の価格を変える政策です。試験では、余剰分析の図で「だれが得をし、だれが損をし、総余剰がいくら減るか」を測ります。
前提のほとんどは小国です。小国とは、自国がどれだけ輸入しても輸出しても、世界価格(世界の市場で決まる価格)が変わらない国のことです。小国の国内価格は、自由貿易なら世界価格と同じになります。
輸入量
自由貿易の利益
関税
この図の国(需要曲線 、供給曲線 。 は価格〔円〕、 は数量〔個〕)の市場を、このページでは「基本の市場」と呼びます。総余剰の増加は 円です。消費者余剰・生産者余剰の意味は、余剰分析の論点と同じです。
試験での出方
| 地方上級 | ★★★ | 特別区Ⅰ類 | ★★ |
|---|---|---|---|
| 市役所 | ★★ | 国家総合職 | ★ |
| 国家一般職 | ★ | 国家専門職 | ★★ |
地方上級で出やすい論点です。計算も図の面を選ぶ問題も、余剰分析の図の読み方で解けます。
よく出るタイプ
貿易政策の問題は、次の4つのタイプに分けられます。カードを押すと、そのタイプの解き方に切り替わります。
基本の図関税と余剰
関税の余剰分析の図(関税収入と死荷重)
- 閉鎖経済:貿易をしないと、国内の需要曲線と供給曲線が交わる点Eで、30個が70円で取引される
- 世界価格:この国は小国なので、どれだけ買っても世界価格40円は変わらないわかること40円で輸入品が買えるので、国内の売り手も40円より高くは売れず、国内価格も40円まで下がる
- 輸入量:40円では国内の生産は点Aの15個、需要は点Bの60個わかること足りない60−15=45個を輸入する
- 貿易の利益:点Eを頂点とする三角形の675円だけ総余剰が増えるわかること消費者の得が生産者の損を上回る
- 関税:輸入1個に10円の関税をかけるわかること国内価格は40+10=50円に上がり、生産は点Cの20個、需要は点Kの50個、輸入は30個に減る
- 消費者:50円と40円の線の間で需要曲線より左の台形の分、消費者余剰が550円減る
- 移る分:減った550円のうち、台形の左の部分175円は生産者余剰の増加、真ん中の長方形は関税収入で、10円が30個ぶんで300円わかることどちらも国内に残る
- 死荷重:両脇の三角形は、だれの得にもならないわかること割高な国内生産に置き換わった分25円と、消費が減った分50円で、合わせて75円
図の見方
- 世界価格40円と関税後の国内価格50円の線は、小国はその価格でいくらでも輸入できるので、どちらも水平な線になります。
- 価格の線と供給曲線が交わる点(A・C)が国内の生産量、需要曲線と交わる点(B・K)が国内の需要量で、その間の横の長さが輸入量です。関税で輸入は45個から30個に減ります。
- 40円と50円の2本の線にはさまれ、縦軸から需要曲線までの細長い台形が、消費者余剰の減った分です。この台形を、左から順に次の4つに分けます。
| 面 | 何か | 基本の市場 |
|---|---|---|
| 供給曲線より左の台形 | 生産者余剰の増加 | 175円 |
| 真ん中の長方形 | 関税収入(政府へ) | 300円 |
| 左の三角形 | 死荷重(割高な国内生産) | 25円 |
| 右の三角形 | 死荷重(消費が減った分) | 50円 |
| 合計 | 消費者余剰の減少 | 550円 |
左の三角形は、40円で輸入すれば済んだ5個(生産15個→20個)を、40円より高い費用で国内で作るようになった損失です。右の三角形は、50円では買わなくなった10個(需要60個→50個)の、払ってもよい額と世界価格の差です。関税収入は政府の収入として国内に残り、国民のために使われるので、総余剰に入れて数えます。そのため、関税で減る総余剰は2つの三角形の75円だけです。
タイプ12国の自由貿易
2国の自由貿易:世界価格と貿易の利益の求め方
見分け方:「A国とB国の国内需要曲線と国内供給曲線」が4本の式で与えられ、「世界にはこの2国しかなく」と書かれています。聞かれるのは世界価格・貿易量・輸出国・総余剰の増加です。この2国はどちらも世界価格を動かすので、小国ではありません。泉の問題では、需要量を 、供給量を と書いた「数量=」の式が多いです。
なぜそうなるか世界価格が2国の価格の真ん中にならない理由
世界価格は、A国の輸出したい量(その価格での供給量−需要量)とB国の輸入したい量(需要量−供給量)が等しくなる価格です。価格が1円動くと、A国は4個、B国は2個変わり、A国のほうが価格に強く反応します(図ではA国の線がゆるやか)。世界価格は、反応の強いA国の閉鎖経済の価格(30円)の側に寄ります。
- A国:閉鎖経済の価格30円より高ければ、作る量が使う量を上回り、余りを輸出したいわかること価格が1円上がるごとに、輸出したい量は4個増える
- B国:閉鎖経済の価格60円より安ければ、使う量が作る量を上回り、不足を輸入したいわかること価格が1円下がるごとに、輸入したい量は2個増える
- 世界価格:2本が交わる点Wの40円で、A国の輸出40個とB国の輸入40個が一致するわかること価格に強く反応するA国の30円の側に寄り、真ん中の45円にはならない
使える条件:需要曲線・供給曲線が直線で、輸送費がかからないとき。
解き方の手順
- 1
「数量=」の形にそろえる
2国の数量を足すため、「価格=」で書かれた国は に直します。 - 2
閉鎖経済の価格を出す
各国で需要量=供給量とおきます。価格の低い国が輸出国、高い国が輸入国です。安い国の売り手は、世界価格なら国内より高く売れるからです。 - 3
4本を足して世界価格を出す
2国の需要量の和=2国の供給量の和を解きます。 - 4
貿易量と三角形
世界価格で各国の需要量と供給量を出し、差が貿易量です(輸出量と輸入量は等しい)。各国の総余剰の増加は、自国の閉鎖経済の均衡点を頂点とする三角形です。
例で確かめるA国が輸出国になる2国
A国(需要量 、供給量 )とB国(需要量 、供給量 )が自由に貿易を始めます。
閉鎖経済の価格は、A国が より30円、B国が より60円で、A国が輸出国です。世界価格は 、つまり より40円です。下の図はA国の市場です(価格の式に直すと、需要曲線 、供給曲線 )。
- 閉鎖経済:点Eで40個が30円
- 世界価格:40円で売れるようになるわかることA国の国内の価格も40円まで上がる
- 輸出量:40円では需要は点Hの20個、生産は点Jの60個わかること余る60−20=40個を輸出する
- 貿易の利益:点Eを頂点とする三角形わかること10円の高さ・40個の幅の三角形で200円。生産者余剰が500円増え、消費者余剰が300円減った差
40円でA国は需要量20個・供給量60個で40個を輸出し、B国は需要量90個・供給量50個で40個を輸入します。総余剰の増加は、A国が 円、B国が 円です。
2国の自由貿易の例題
自分で解いてみる2国の自由貿易の例題(総余剰の増加)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
ある財について、A国とB国の国内需要曲線と国内供給曲線が次の式で表される。
A国:、
B国:、
ここで、、 は需要量、、 は供給量、 は価格である。世界にはこの2国しかなく、両国の間でこの財の自由な貿易が始まったとする。貿易によって、この財の輸入国の総余剰はどれだけ増加するか。ただし、輸送費はかからないものとする。
正解は 3
閉鎖経済の価格は、A国が より40、B国が より54です。価格の高いB国が輸入国です。
世界価格は より 、 です。44ではB国の需要量60・供給量40で、輸入量は20です。
B国の総余剰の増加は、高さ 、底辺20の三角形で です。正解は3です。
40は輸出国A国の三角形、140は2国の合計、200は の付け忘れです。49は、世界価格を2国の価格の平均47とし、B国の輸入量14で三角形を計算した値です。
タイプ2関税・輸入割当・補助金の図
関税・輸入割当・生産補助金の図の読み方
見分け方:需要曲線・供給曲線と水平線の間が a、b、c…の面に分けてある図で、「消費者余剰の減少分」「関税収入」などに当たる面を選びます。「どれだけ輸入しても世界価格は変わらない」とあれば小国です。
なぜそうなるか関税と輸入割当で余剰の形が同じになる理由
輸入割当は、輸入量に上限を決める政策です。輸入が30個までなら、世界価格より高い価格では、国内で売られる量は「国内の生産量+30個」になり、供給曲線がその範囲で右へ30個ずれます。その線と需要曲線の交点Kで国内価格が決まり、関税10円のときと同じ50円になります。国内価格が同じなら、余剰の分かれ方も同じです。
- 自由貿易:世界価格40円で45個を輸入している
- 割当:輸入は30個までわかること世界価格より高い価格では、国内で売られる量は国内の生産量に30個を足した量になり、供給曲線がその範囲で右へ30個ずれる
- 国内価格:ずれた線と需要曲線の交点Kで決まり50円わかること国内の生産は点Cの20個、需要は50個で、関税10円のときと同じ
- 長方形:輸入業者は40円で仕入れて50円で売るわかること10円が30個ぶんで300円が輸入業者の利益。関税なら政府の関税収入になる長方形
- 死荷重:両脇の三角形は関税のときと同じ25円と50円わかること余剰の形は関税と同じで、違うのは長方形の持ち主だけ
小国で、国内の生産者も輸入業者も価格を動かせない(完全競争の)ときは、関税と同じ輸入量の割当なら結果が同じになります。これを同値定理と呼びます。違うのは真ん中の長方形の持ち主だけです。国内の生産者が独占のときは、割当のほうが国内価格が高くなり、同値は成り立ちません。
| 項目 | 関税10円 | 輸入割当30個 |
|---|---|---|
| 国内価格・余剰の増減 | 関税と同じ | 関税と同じ |
| 長方形300円の持ち主 | 政府(関税収入) | 輸入業者 |
| 死荷重 | 75円 | 75円 |
輸入業者(割当の権利を持つ業者)は、40円で仕入れて50円で売るので、10円が30個ぶんの300円を得ます。政府が割当の権利を競売で売れば、この長方形は政府の収入になり、関税と同じ形になります。
判定のしかた
- 1
価格の水平線を2本引く
世界価格と、政策の後の国内価格(関税なら世界価格+関税、割当なら割当後の供給曲線と需要曲線の交点の高さ)です。 - 2
縦の線で帯を区切る
2つの価格での生産量と需要量に縦の線を下ろし、帯を「台形・左の三角形・長方形・右の三角形」に分けます。 - 3
移る面と消える面を分ける
台形は生産者余剰の増加、長方形は関税収入(割当なら輸入業者の利益)で、どちらも国内に残ります。両脇の三角形が死荷重です。長方形の中を割当後の供給曲線が通っていても、長方形は1つにまとめて読みます。 - 4
生産補助金は消費者の側が動かない
生産補助金(国内の生産者に、1個つくるごとに政府が払うお金)は、生産者の費用を下げるだけで、国内価格は世界価格のままです。そのため消費者余剰は変わらず、死荷重は生産側の三角形だけです。
例で確かめる基本の市場に1個10円の生産補助金を出す
国内の生産者に1個10円の生産補助金を出し、輸入には何もかけません。
- 自由貿易:世界価格40円で、国内の生産は点Aの15個
- 補助金:1個つくるごとに10円もらえるわかること同じ量をつくるのに10円安い価格でよくなり、供給曲線が10円下へずれる
- 生産量:国内価格は世界価格40円のままわかること生産は点Jの20個に増え、輸入は60−20=40個に減る。消費者の価格は変わらない
- 総額:10円が20個ぶんで200円わかること2本の供給曲線の間の、20個までの平行四辺形
- 内訳:40円の線より下の175円は生産者余剰の増加、上の三角形25円は失われるわかること損失は生産側の三角形だけで、関税10円の75円より小さい
同じ量を10円安い価格でつくれるようになり、供給曲線は から に下がります。40円では より20個つくります。補助金の総額は 円です。補助金は政府が税金から払うので、総余剰では政府の支出として引きます。生産者余剰(40円の線と供給曲線の間の三角形)は、225円(底辺15個・高さ30円)から400円(底辺20個・高さ40円)に広がり、175円増えます。総余剰は で25円減ります。生産量は関税10円のときと同じ20個ですが、消費側の三角形が無いので、損失は関税の75円より小さくなります。
関税と輸入割当の図の例題
自分で解いてみる関税と輸入割当の図の例題(面を選ぶ)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
図は、ある小国のある財の国内需要曲線Dと国内供給曲線Sを表したものである。この国は世界価格で自由に輸入していたが、政府が輸入量に上限(割当)を設けた。S′ は、国内の供給量に割当量を加えた供給曲線であり、割当の後の国内価格は図の「国内価格」の線の高さになった。図中の a〜g は線で囲まれた面を表す。輸入業者は割当量を世界価格で仕入れて国内価格で売るものとし、この国がどれだけ輸入しても世界価格は変わらない。
輸入業者の利益をア、自由貿易のときと比べた総余剰(消費者余剰、生産者余剰、輸入業者の利益の合計)の減少分をイとするとき、ア・イの組合せとして、妥当なのはどれか。
正解は 4
輸入業者の利益は、価格差に割当量を掛けた額で、2本の水平線と2本の縦の破線で囲まれた長方形 c+d です(S′ が対角線として中を通っても1つの長方形)。
消費者余剰は a+b+c+d+e+f から f に減り、a+b+c+d+e だけ減ります。生産者余剰は g から a+g に、a だけ増えます。消費者の減少から、生産者へ移る a と輸入業者へ移る c+d を引くと、総余剰の減少は b+e です。正解は4です。
選択肢1は S′ を面の境と読んで c だけを利益とした組、2は生産側の損失 b を落とした組、3は台形全体を利益とした組、5は国内に残る利益 c+d まで損失に数えた組です。
タイプ3関税・輸入割当の計算
関税の死荷重と輸入割当の国内価格の求め方
見分け方:小国の需要曲線と供給曲線が式で与えられ、「輸入1単位当たり一定額の関税」か「輸入量の上限を決める輸入割当」の数が書かれています。聞かれるのは輸入量・死荷重・国内価格・同じ効果の関税額や割当量です。
なぜそうなるか関税を2倍にすると死荷重が4倍になる理由
両脇の三角形は、高さ(関税)も底辺も関税に比例して伸びるので、面積は関税の2乗に比例します。関税収入の長方形は、高さが伸びても輸入量が縮むので、山の形になります。
関税10円:輸入30個・関税収入300円・死荷重75円
価格が1円上がったときに輸入が何個減るかを「輸入の減り方」と呼びます。需要量の減る数と供給量の増える数の和です(基本の市場なら 個)。
使える条件:小国で、需要曲線・供給曲線が直線で、世界価格で国内の生産が0より多く(供給曲線の縦軸の切片が世界価格より低く)、関税が輸入を0にしない大きさのとき。
解き方の手順
- 1
「数量=」の形にする
「価格=」の式なら に直します( なら )。数量の式の の前の数が、1円あたりの需要量の減り方・供給量の増え方です。 - 2
2つの価格で需要量と供給量を出す
国内価格は、関税なら世界価格+関税、割当なら需要量=供給量+割当量の解です。割当は自由貿易の輸入量より少ないときだけ効きます。 - 3
三角形を2つ足す
高さは2つの価格の差、底辺は供給量の増加と需要量の減少です。真ん中の長方形(関税収入・輸入業者の利益)は足しません。 - 4
同じ効果の関税・割当に直す
割当と同じ国内価格にする関税は、割当後の国内価格−世界価格。関税と同じ国内価格にする割当量は、関税後の輸入量そのものです。
例で確かめる基本の市場で関税10円と輸入割当30個を比べる
基本の市場を数量の式にすると、需要量 、供給量 です。価格が1円上がると、需要量は1個減り、供給量は0.5個増えるので、輸入の減り方は1.5個です。
- 関税10円:輸入は 個、死荷重は 円です。
- 割当30個: を解くと 円で、関税10円と同じ国内価格です。
関税収入を最大にする関税
関税収入は関税と輸入量の積で、山の形になります(考え方は余剰分析の税収を最大にする税額と同じ)。輸入は、関税0円で45個、関税30円(閉鎖経済の価格70円−世界価格40円)で0個になり、その間はまっすぐ減ります。関税と輸入量の積が最も大きくなるのは、そのちょうど真ん中の関税で、輸入は半分になります。
使える条件:小国が輸入している財で、需要曲線・供給曲線が直線で、世界価格で国内の生産が0より多いとき。基本の市場なら 円です。この問題は余剰分析の論点の演習に入っています(問題を解く)。
輸入割当の例題
自分で解いてみる輸入割当の死荷重の例題
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
ある小国における、ある財の国内需要曲線と国内供給曲線が次の式で表される。
、
ここで、 は需要量、 は供給量、 は価格である。この国はこの財を世界価格20で自由に輸入していたが、輸入量を42までに制限する輸入割当を行うことにした。自由貿易のときと比べて、この輸入割当によって生じる死荷重(総余剰の減少分)はいくらか。ただし、輸入業者の利益は国内の総余剰に含め、この国の輸入量が変わっても世界価格は変わらないものとする。
正解は 2
世界価格20では需要量100・供給量30で、輸入は70です。割当42はこれより少ないので効きます。
国内価格は より 、 です。
死荷重は、高さ の2つの三角形で、生産側が 、消費側が 、合わせて56です。正解は2です。早解きの式なら、輸入の減り方は で、 です。
| 項目 | 自由貿易 | 割当の後 |
|---|---|---|
| 国内価格 | 20 | 24 |
| 需要量 | 100 | 80 |
| 供給量 | 30 | 38 |
| 輸入量 | 70 | 42 |
16は生産側の三角形だけ、112は2つの三角形の を付け忘れた値、168は輸入業者の利益(価格差4に割当量42を掛けた額)です。896は、割当量を需要の側に足して から とし、高さ16で計算した値です。この割当と同じ国内価格にする関税は4です。
タイプ4一般均衡と貿易
生産可能性フロンティアと貿易三角形の読み方
見分け方:問題文に「生産可能性フロンティア」「社会的無差別曲線」の2つの言葉と、横軸・縦軸に2つの財をとった図があれば、このタイプです。
- 生産可能性フロンティア:国が持つ資源で作れる2財の組合せの限界。外側にふくらんだ曲線です。
- 社会的無差別曲線:国全体で同じ満足になる2財の組合せ。原点に向かってふくらんだ(原点に対して凸の)曲線で、原点から遠いほど満足(効用)が大きくなります。
- 直線の傾きの大きさは、X財の相対価格(X財1個がY財何個と交換されるか。価格比とも言います)です。直線が急なほどX財が高く(X財1個を手放すとY財をたくさん受け取れる)、ゆるやかなほどX財は安く、Y財が高いことを表します。
なぜそうなるか貿易でフロンティアの外の組合せを消費できる理由
自由貿易では、作る点と使う点を分けられます。世界価格比で生産額が最も大きくなる点で作り、余った財を世界価格比で売って足りない財を買えば、フロンティアの外の点で消費できます。
- フロンティア:この国が持てる資源で作れるX財とY財の組合せの限界わかること外側にふくらんでいて、X財を増やすほどあきらめるY財が増える
- 閉鎖経済:貿易をしないと、作ったものしか使えないわかることフロンティアと無差別曲線が接する点Aで生産し、消費する。点Aでの接線(破線の直線)の傾きが、貿易をしないときの価格比
- 生産点:世界価格比の直線がフロンティアに接する点Bで作るわかること世界価格で測った生産額が最も大きくなる
- 消費点:点Bを通る世界価格比の直線が、買える組合せの限界になるわかることその上で無差別曲線に接する点Cで消費し、点Aより高い無差別曲線に乗る。これが貿易の利益
- 貿易三角形:点Bと点Cの差わかること横の辺がX財の輸出、縦の辺がY財の輸入。斜辺の傾きが世界価格比なので、輸出額と輸入額が等しい
判定のしかた
- 1
生産点:生産者が直面する価格比
その価格比の直線がフロンティアに接する点が生産点です。自由貿易なら世界価格比、関税の後なら関税込みの国内の価格比です。 - 2
消費点:世界価格比の直線の上
外国とは世界価格比で取引し、輸出額と輸入額が等しいので、消費点は生産点を通る世界価格比の直線の上です(関税収入は国内に戻す前提)。自由貿易ならこの直線と無差別曲線が接する点です。関税の後は、消費者が関税込みの国内価格で買うので、この直線の上で無差別曲線の傾きが国内の価格比と同じになる点で、無差別曲線は直線を横切ります。 - 3
輸出財と輸入財
生産点と消費点を比べ、生産のほうが多い財を輸出、消費のほうが多い財を輸入します。直角三角形(貿易三角形)の横の辺がX財、縦の辺がY財の貿易量です。 - 4
関税で動く向き
生産点は輸入財を多く作る側へ動き、無差別曲線は自由貿易のときより原点に近くなります。
例で確かめるY財を輸入する国がY財に関税をかける
X財を輸出しY財を輸入している小国が、Y財の輸入に関税をかけます。関税収入はすべて国内の消費者に戻すとします。
- 自由貿易:世界価格比の直線に沿って、点Bで生産し点Cで消費する。X財を輸出し、Y財を輸入している
- 関税:Y財の輸入に関税をかけると、国内ではY財が割高になるわかること国内の価格比の直線(X財の相対価格)がゆるやかになる
- 生産点:生産者は国内の価格比で作るので、その直線がフロンティアに接する点Fへわかること点Bから左上、輸入財のY財を多く作る側に移る
- 取引:外国とは世界価格比で取引し、輸出額と輸入額が等しいわかること消費点は、点Fを通る世界価格比の直線の上にある
- 消費点:消費者は国内の価格比に直面するわかること世界価格比の直線の上で、無差別曲線の傾きが国内の価格比に等しい点G。無差別曲線はこの直線を横切る。点Gの短い線は、点Gでの無差別曲線の傾き
- 効用:点Gを通る無差別曲線は、点Cを通る無差別曲線より原点に近いわかること関税で効用は下がり、Y財の輸入も減る
国内ではY財が割高になる(X財が割安になる)ので、国内の価格比の直線は世界価格比の直線よりゆるやかになります。生産点はBからFへ、消費点はCからGへ移り、Gを通る無差別曲線はCを通る無差別曲線より原点に近くなります。
一般均衡と貿易の例題
自分で解いてみる一般均衡と貿易の例題(関税と生産点・消費点)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
図は、ある小国の生産可能性フロンティアと社会的無差別曲線(破線)を、横軸にX財の量、縦軸にY財の量をとって描いたものである。点Bと点Cは、この国が自由貿易を行うときの生産点と消費点である。この国がX財の輸入に関税を課すと、生産点は点F、消費点は点Gになった。直線1は関税を課した後の国内でのX財の相対価格を、直線2は世界価格でのX財の相対価格を傾きとし、どちらも点Fを通る。世界価格は関税によって変わらず、関税収入はすべて国内の消費者に還元されるものとする。
この国が関税を課すときの記述として、妥当なのはどれか。ただし、無差別曲線は原点から遠いものほど効用が高い。
正解は 2
- 1:消費点Cは生産点Bより右にあり、X財を輸入しています。位置を逆に読んだ文です。
- 2:直線1は直線2より急で、関税でX財が国内で割高です。生産点Fは直線1がフロンティアに接する点で、Bより右なのでX財の生産は増えます。正解は2です。
- 3:点Gでの無差別曲線の傾きは国内の価格比(直線1)に等しく、直線2を横切ります。2つの価格比を取り違えた文です。
- 4:点Gの無差別曲線は点Cのものより原点に近く、効用は下がります。遠近を逆に読んだ文です。
- 5:生産点は右へ、消費点は左へ動くので、X財の消費と生産の差である輸入量は減ります。
まとめ覚えることと間違いやすい点
覚えることの表(政策ごとの余剰の動き)
完全競争の小国が輸入している財の市場で、需要曲線が右下がり・供給曲線が右上がりの場合です(輸出国の行だけは、その財を輸出している国)。
| 政策 | 国内価格 | 余剰の動き | 死荷重 |
|---|---|---|---|
| 自由貿易(輸入国) | 世界価格まで下がる | 消費者が増え、生産者が減る。消費者の増加のほうが大きい | なし。総余剰は三角形の分増える |
| 自由貿易(輸出国) | 世界価格まで上がる | 生産者が増え、消費者が減る。生産者の増加のほうが大きい | なし。総余剰は三角形の分増える |
| 関税 | 世界価格+関税 | 消費者が減り、生産者が増え、政府に関税収入 | 両脇の2つの三角形 |
| 輸入割当(関税と同じ輸入量) | 関税と同じ | 関税と同じ。長方形は輸入業者の利益 | 関税と同じ2つの三角形 |
| 生産補助金 | 世界価格のまま | 消費者は変わらない。生産者が増え、政府は補助金を払う | 生産側の三角形だけ |
| 場面 | 生産点 | 消費点 |
|---|---|---|
| 閉鎖経済 | フロンティアと無差別曲線が接する点 | 生産点と同じ点 |
| 自由貿易 | 世界価格比の直線がフロンティアに接する点 | その直線が無差別曲線に接する点 |
| 関税の後 | 国内の価格比の直線がフロンティアに接する点 | 生産点を通る世界価格比の直線の上で、無差別曲線の傾きが国内の価格比に等しい点 |
よくある間違い
| 誤りの文 | 正しくはこう |
|---|---|
| 2国の世界価格は、2つの閉鎖経済の価格の平均 | 2国の需要量の和=供給量の和で決める。輸出・輸入したい量が価格に強く反応する国の、閉鎖経済の価格の側に寄る |
| 閉鎖経済の価格が高い国が輸出国 | 低い国が輸出国(世界価格なら国内より高く売れる) |
| 関税の死荷重は、関税収入の長方形か、片側の三角形だけ | 両脇の2つの三角形(割高な国内生産と、消費が減った分)。長方形は政府に移るだけ |
| 関税収入は、2本の価格の線の間の台形全体 | 関税と関税後の輸入量を掛けた長方形だけ |
| 輸入割当では、国内価格は世界価格のまま | 割当後の供給曲線と需要曲線の交点まで上がる |
| 輸入割当と関税では、死荷重の大きさが違う | 同じ輸入量なら同じ(完全競争のとき)。違うのは長方形の持ち主 |
| 生産補助金で、消費者余剰も減る | 国内価格は世界価格のままで、消費者余剰は変わらない |
| 関税で生産が増えるのは輸出財 | 増えるのは関税をかけた輸入財 |
次にやること
次に読む論点











