総需要・総供給(AD-AS分析)とは
30秒でわかる総需要・総供給
AD-AS分析は、縦軸に物価(P)、横軸に国民所得(Y)をとり、2本の曲線の交点で物価と国民所得が同時に決まることを見る分析です。IS-LM分析は物価を一定としていましたが、ここでは物価も動きます。
総需要曲線(AD)
総供給曲線(AS)
動かし方
先に読む論点IS・LM曲線財政・金融政策の効果
総需要は1つの財の需要ではなく、経済全体で買われる財の量(消費+投資+政府支出)です。IS-LM の交点ではこれが国民所得と等しく、総需要曲線は物価ごとにその交点の所得を並べたものです。
このページの図と例は、次の「基本の経済」を使います。AD は 、AS は で、交点は物価10・所得250です(導き方はタイプ1・2)。
| 項目 | 式・値 |
|---|---|
| 消費(C) | |
| 投資(I) | (r は利子率〔%〕) |
| 政府支出(G) | |
| 貨幣市場 | 、名目の貨幣供給 |
| 生産関数 | (N は労働量)、名目賃金 |
| 完全雇用国民所得() | 300 |
貨幣市場の式は、左辺が実質の貨幣供給(名目の貨幣供給を物価で割ったもの)、右辺が貨幣需要で、両者が等しいことを表します。
試験での出方
| 地方上級 | ★★ | 特別区Ⅰ類 | ★★ |
|---|---|---|---|
| 市役所 | ★★★ | 国家総合職 | ★★★ |
| 国家一般職 | ★★ | 国家専門職 | ★★★ |
曲線を式から導く計算と、学派ごとの AS の形・曲線を動かす要因を問う文の正誤が出ます。
よく出るタイプ
問題は次の4つのタイプに分けられます。
基本の図総需要曲線と総供給曲線
総需要曲線の導き方の図(IS-LMから AD へ)
- 物価10:物価10のときの LM0 と IS の交点 E0わかること利子率4%・所得250。下の図の点 A(所得250・物価10)
- 物価が下落:物価が10から5へわかること実質の貨幣供給 M/P が 300÷10=30 から 300÷5=60 に増え、LM0 が右の LM1 へ動く
- 利子率が低下:新しい交点 E1わかること利子率が4%から1%に下がり、投資が30から45に増えて所得は325へ
- 下の図へ:所得325と物価5の組を点 B にわかること物価が低いほど所得が大きい
- 点を結ぶ:ほかの物価でも同じことをして点を結ぶわかること右下がりの総需要曲線 AD
図の見方
- 上の図は利子率(r)と国民所得の図で、IS 曲線(財市場が均衡する所得と利子率の組)と LM 曲線(貨幣市場が均衡する組)の交点で所得と利子率が決まります。下の図は物価と国民所得の図で、横軸は上の図とそろえてあります。
- 物価が下がると、同じ300の貨幣でも実質の貨幣供給 が増えるので、LM 曲線が右へ動きます。これは下の図では AD の上を点が動くことで、AD そのものは動きません。
AD-AS分析の図(学派で変わる総供給曲線)
- 総需要曲線:右下がりの AD0(物価が低いほど、財市場と貨幣市場が均衡する所得が大きい)
- 総供給曲線:ケインズ派の AS は Yf までは右上がり(物価が高いほど、雇う人と作る量が増える)わかること完全雇用に達すると名目賃金が上がり始め、Yf から先は垂直
- 均衡:交点 E0 で物価10・所得250わかること完全雇用の300に届かず、働きたいのに雇われない人がいる
- 古典派のAS:Yf の垂直な線。AD0 との交点は C0(物価6)わかることケインズ派の E0(物価10)とは別の点。同じ AD に2つの考え方の AS を重ねて比べる
- 財政拡大:政府支出が増え、AD0 が右の AD1 へ動く
- ケインズ派:AS に沿って E0 から E1 へわかること物価は約10.8、所得は約270に上がる
- 古典派:垂直な線の上で C0 から C1 へわかること所得は Yf の300のまま、物価だけが6から7.5に上がる
図の見方
- 古典派は賃金や物価が自由に動いて市場がすぐ釣り合うと考え、ケインズ派は名目賃金が下がりにくく失業が残りうると考えます(タイプ2)。
- **完全雇用国民所得()**は、働きたい人がその賃金でみな雇われているときの所得(ここでは300)です。ケインズ派の AS は までは右上がりで、そこから先は垂直です。E0 のように より左では、働きたいのに雇われない人(非自発的失業)がいます。
- 同じ AD に2つの考え方の AS を重ねた図です。古典派の交点 C0(物価6)は、ケインズ派の E0(物価10)とは別の点です。
タイプ1総需要曲線の導き方
総需要曲線の導き方(IS-LMから導出)と右下がりの理由
見分け方:消費関数・投資関数と のような貨幣市場の式から「総需要曲線の式」「物価がいくらのときの所得」を聞かれます。文の正誤では「右下がりになる理由」「右へ動かすもの」が並びます。
なぜそうなるか総需要曲線が右下がりになる理由
物価が下がると、次の順に所得が増えます。
- 物価が下がる → 同じ名目の貨幣でも買える量が増え、実質の貨幣供給 が増える(貨幣市場)
- 実質の貨幣供給が増える → 貨幣が余るので LM 曲線が右へ動く(貨幣市場)
- LM 曲線が右へ動く → 利子率が下がる(貨幣市場)
- 利子率が下がる → 投資が増える(財市場)
- 投資が増える → 乗数の分だけ所得が増える(財市場)
この連鎖はケインズ効果とも呼びます。物価の下落で貨幣など名目で持つ資産の実質的な価値(実質資産)が増え、消費が増える経路(ピグー効果・資産効果)は、「財政・金融政策の効果」で扱います。
使える条件:LM 曲線の左辺が実質の貨幣供給 の形のとき。物価で割るのは名目の貨幣供給 だけで、右辺の貨幣需要の式は割りません。
解き方の手順
- 1
利子率をそろえる
名目と実質の2つの利子率が出るときだけ、名目利子率 = 実質利子率 + 予想インフレ率(フィッシャー方程式(変化率の足し算はマクロで使う計算)。実質利子率は、約束どおりの名目利子率から人々が見込む物価の上昇率を引いたもの)で片方にそろえます。予想インフレ率2%なら です。 - 2
IS を利子率の式にする
に代入して整理し、「(利子率の項)=…」の形にします(基本の経済なら )。 - 3
- 4
Y について解いて確かめる
の形にします。答えは と だけの式で( が残れば誤り)、 の係数が正(物価が下がると所得が増える)かを確かめます。
例で確かめる基本の経済の総需要曲線を導く
IS 曲線は より 、つまり です。
LM 曲線 の に代入すると、 です。70を左へ移して両辺を0.4で割ると、総需要曲線は です(、)。
表の利子率は、IS 曲線 に所得を入れて出します。
| 物価 P | 実質の貨幣供給 M/P | 利子率 r | 所得 Y |
|---|---|---|---|
| 10 | 30 | 4% | 250 |
| 6 | 50 | 2% | 300 |
| 5 | 60 | 1% | 325 |
- 最初:物価10のとき、AD0 の上の点 A(所得250)
- 物価が上昇:物価が15に上がるわかることAD0 の上を点 B へ(所得225)。曲線そのものは動かない
- 政府支出:10増えるわかること同じ物価10で所得が275に → AD そのものが右の AD1 へ
政府支出を10増やすと、AD は になり、物価10での所得は です。物価も利子率も変わらなければ、所得は乗数 (c は限界消費性向)倍の 増えるはずです(乗数の分母はマクロで使う計算)。しかし所得が増えると貨幣の取引需要が増えて利子率が上がり、投資が一部減る(クラウディング・アウト)ので、増え方は25にとどまります。
総需要曲線を動かす要因は、IS 曲線か LM 曲線のどちらを動かすかで見分けます。
| 要因 | 動く曲線 | 総需要曲線 |
|---|---|---|
| 政府支出の増加・減税・投資意欲の高まり | IS が右へ | 右へ |
| 名目の貨幣供給の増加(買いオペレーション:中央銀行が債券を買い、貨幣を出す) | LM が右へ | 右へ |
| 売りオペレーション(中央銀行が債券を売り、貨幣を吸い上げる) | LM が左へ | 左へ |
| 物価の上昇 | LM が左へ | 動かない(AD の上を左上へ) |
資産効果(ピグー効果)を考えないとき、投資が利子率にまったく反応しない(IS 曲線が垂直)なら、物価が下がって利子率が下がっても投資が増えません。流動性のわな(利子率が下限まで下がり、増えた貨幣がすべて手元に持たれる状態。LM 曲線が水平)なら、実質の貨幣供給が増えても利子率が下がりません。どちらも所得が増えないので、総需要曲線は垂直になり、金融政策は AD を動かせず、財政政策は動かせます。ただしピグー効果が働けば、物価の下落で消費が増えて IS 曲線が右へ動くので、AD は右下がりに戻ります。
総需要曲線の例題(予想インフレ率がある形)
自分で解いてみる総需要曲線の導き方の例題(予想インフレ率)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 4
なので、投資は です。IS 曲線は より 、つまり です。
LM 曲線に入れると 、つまり で、 です。正解は4です(名目利子率4%・実質利子率2%・投資20)。
150は と符号を逆にした値、450は名目貨幣供給量240を物価で割らずに使った値、160は IS を と、 の係数を にせず0.6のまま使った値、175は予想インフレ率を入れ忘れた( と を同じとした)値です。
タイプ2総供給曲線と学派
総供給曲線の導き方と古典派の第一公準・第二公準
見分け方:「第一公準」「名目賃金の下方硬直性」「非自発的失業」の語が並ぶ文の正誤か、 のような生産関数と名目賃金から「総供給曲線の式」を聞かれます。
なぜそうなるか名目賃金が下がりにくいと総供給曲線が右上がりになる理由
縦軸は実質賃金 (名目賃金 W を物価 P で割った、賃金で買える財の量)です。1人多く雇って増える生産量(労働の限界生産力)が実質賃金より多いうちは、雇うほど利潤が増えるので、企業は限界生産力が実質賃金まで下がる所まで雇います(第一公準。労働需要 ND)。家計は、実質賃金が働くつらさ(労働の限界不効用)に見合う所まで働きます(第二公準。労働供給 NS)。
- 最初:企業が雇いたい量 ND(第一公準)と、家計が働きたい量 NS(第二公準)が点 F で交わるわかること雇用は完全雇用の Nf
- ケインズ派:名目賃金8が下がらず、物価10わかること実質賃金は8/10。企業が雇うのは ND の上の点 A の N0 だけ
- 失業:8/10 で働きたい量は NS の上の点 B の N1わかることN1 と N0 の差が、働きたいのに雇われない非自発的失業
- 物価が上昇:物価が12になると、名目賃金8のまま実質賃金は8/12に下がるわかること企業は雇用を Nf まで増やす
- 古典派:名目賃金が自由に下がるので、実質賃金はいつも点 F の高さわかること物価が変わっても雇用は Nf のまま
物価が高いほど実質賃金が下がって雇用と生産が増えるので、ケインズ派の AS は右上がりです(雇用が Nf に届くまで)。
古典派は第一公準・第二公準の両方を認め、ケインズ派は第一公準だけを認めます。ケインズ派の考え方では、労働者は名目賃金の引き下げに応じないので、名目賃金は下方硬直的(ある水準より下がらない)です。そのため働きたい人の数が雇われる人の数より多い状態(労働の超過供給)が残り、非自発的失業が生じます。ケインズ派が否定したのは「雇用量が NS の上で決まる」ことで、その実質賃金で働きたい人の数を表す NS の線そのものは、ケインズ派の図でも使います。
判定のしかた
- 1
どちらの公準か
労働需要(企業)の話なら第一公準、労働供給(家計)の話なら第二公準です。どちらも実質賃金で書かれます。「名目賃金 = 限界生産力」は誤りです。 - 2
名目賃金の前提
伸縮的(自由に上下する)なら古典派、下方硬直的ならケインズ派です。ケインズ派が否定したのは第二公準だけです。 - 3
物価が上がる
古典派では名目賃金も同じ割合で上がり、実質賃金は変わりません。ケインズ派では名目賃金がそのままで、実質賃金が下がります。 - 4
雇用と生産
実質賃金が下がる → 企業は雇用を増やす → 生産が増える(AS は右上がり)。実質賃金が変わらない → 完全雇用のまま(AS は で垂直)。 - 5
失業の種類
働く意思があるのに雇われないのが非自発的失業、今の実質賃金では働く意思がないのが自発的失業です。古典派の世界にも、自発的失業と、仕事を移る間の摩擦的失業はあります。
使える条件:名目賃金 W が一定(ケインズ派の考え方)で、求めた生産が完全雇用国民所得以下のとき。完全雇用に達すると名目賃金が上がり始めるので、そこから先の AS は で垂直です。限界生産力は生産関数を N で微分して出します(べき乗の微分: を微分すると 。 なら )。
例で確かめる基本の経済の総供給曲線を導く
生産関数 を N で微分すると、労働の限界生産力は です。
これを実質賃金 と等しくおくと より です。生産関数に戻すと、総供給曲線は です。
| 物価 P | 実質賃金 W/P | 労働量 N | 生産 Y |
|---|---|---|---|
| 8 | 1 | 100 | 200 |
| 10 | 0.8 | 156.25 | 250 |
| 12 | 0.67(8/12) | 225 | 300 |
物価が上がるほど実質賃金が下がり、雇用と生産が増えます。物価12で生産が完全雇用国民所得の300に届き、そこから先の AS は垂直です。
総供給曲線と学派の例題
自分で解いてみる総供給曲線と古典派の第一公準・第二公準の例題
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 4
正解は4です。古典派では名目賃金が伸縮的なので、実質賃金はいつも労働の需要と供給が等しくなる高さにあり、雇用は完全雇用のままです。
| 選択肢 | 判定 | どこが誤りか |
|---|---|---|
| 1 | 誤り | 第一公準は実質賃金 = 限界生産力。名目と実質の取り違え |
| 2 | 誤り | ケインズは第二公準を否定した。学派の入れ替え |
| 3 | 誤り | 物価が下がると実質賃金は上がり、雇用と生産は減る。向きの逆 |
| 4 | 妥当 | — |
| 5 | 誤り | AS が垂直なら物価だけが上がり、所得は変わらない。AS の形と政策の効き方の取り違え |
タイプ3完全雇用に要る政策
完全雇用に必要な政府支出の求め方(AD と AS の連立)
見分け方:IS・LM の式と生産関数・名目賃金がそろって与えられ、「完全雇用国民所得が300であるとき、政府支出(または貨幣供給)をいくら増やせばよいか」と聞かれます。
なぜそうなるか物価を固定した計算では足りない理由
- 最初:AD0 と AS の交点 E0 で所得250・物価10わかること完全雇用国民所得 Yf の300に50足りない
- 物価を固定:物価10のまま所得300になる点 F を通る AD1わかること政府支出を20増やす計算
- 物価が上昇:AS が右上がりなので、AD1 と AS の交点は E1わかること物価は約11.6に上がって実質の貨幣供給が減り、所得は約290で300に届かない
- 正しい量:AS の折れ目で所得300の点 E2(物価12)を通る AD2わかること政府支出は25増やす
AS が右上がりだと、物価を固定して出した量では、物価の上昇で所得が完全雇用に届きません。先に AS から完全雇用の物価を決めます。
解き方の手順
- 1
AD を文字のまま導く
IS・LM から、政府支出 (または貨幣供給 )を文字のまま残して総需要曲線を出します。 - 2
AS を導く
第一公準から総供給曲線を出します(タイプ2)。 - 3
完全雇用の物価を出す
完全雇用国民所得を AS に入れて、そのときの物価を出します。 - 4
AD に入れて逆算する
完全雇用国民所得とその物価を AD に入れ、(または )を求めます。聞かれているのが水準か、増やす量かを確かめます。
例で確かめる基本の経済で完全雇用に要る政府支出を求める
政府支出を のまま残すと、IS 曲線は 、つまり です。LM 曲線に入れると で、両辺を0.4で割ると総需要曲線は です( なら )。
総供給曲線は なので、完全雇用国民所得300のときの物価は です。総需要曲線に ・ を入れると より で、政府支出を 増やします。
物価を10に固定して とすると で、増やす量は20になります。しかし20増やしただけでは、物価が約11.6に上がって実質の貨幣供給が減り、利子率が上がって投資が減るので、所得は約290にとどまります(図の E1)。
完全雇用に要る政策の例題
自分で解いてみる完全雇用に必要な貨幣供給の例題
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 4
総供給曲線:限界生産力 を実質賃金 と等しくおくと で、 です。完全雇用の物価は です。
総需要曲線:IS 曲線は 、つまり です。LM 曲線に入れると です。・ を入れると より で、増やす量は です。正解は4です。
当初の均衡は、AS の を AD の に入れて です。両辺に を掛けて整理すると 、つまり で、物価は正なので 、 です。
210は物価を7のままにして から とし、 とした値、90は微分の を落として AS を (完全雇用の物価4)とした値、50は所得の差 、320は増やす量でなく水準を答えた値です。
タイプ4曲線を動かす要因と物価・所得
総需要・総供給のシフトとスタグフレーション
見分け方:「原材料価格の上昇」「技術進歩」「名目賃金の低下」「拡張的財政政策」などの出来事が並び、どちらの曲線がどちらへ動き、物価と所得がどうなるか、インフレの呼び名は何かを聞かれます。
なぜそうなるか原油価格が上がると物価が上がり所得が減る理由
- 最初:AD と AS0 の交点 E0 で物価10・所得250
- 原油高:原材料の費用が上がり、同じ物価で企業が作る量が減るわかることAS0 が左上の AS1 へ動く
- 新しい交点:AD の上を E0 から E1 へわかること物価は10から15に上がり、所得は250から225に減る(スタグフレーション)
原油などの原材料が値上がりすると、同じ物価では前と同じ量を作っても利潤が出にくくなるので、企業は作る量を減らします。右上がりの AS では、左へ動くことと上へ動くことは同じ動きで、このページでは「左上へ」と書きます。景気の停滞(所得の減少・失業の増加)と物価の上昇が同時に起きる状態をスタグフレーションと呼びます。
判定のしかた
- 1
需要側か供給側か
財市場・貨幣市場の話(政府支出・税・投資・消費・貨幣供給)なら需要側、労働市場・生産・費用の話(名目賃金・原材料・技術・資本)なら供給側です。 - 2
動く曲線と向き
需要側は AD を動かし、需要が増えれば右へ。供給側は AS を動かし、費用が下がる・生産力が上がるなら右下へ、費用が上がれば左上へ。交点は、動かない方の曲線の上を動きます。 - 3
呼び名を決める
AD の右への動きによる物価の上昇がディマンドプル・インフレ、費用の上昇による AS の左上への動きによる物価の上昇がコストプッシュ・インフレです。 - 4
2本とも動くとき
AD が右・AS が左上へ同時に動くと、物価は上がりますが、所得が増えるか減るかは2本の動く幅で決まり、理論だけでは決まりません。図の交点の位置で読みます。
例で確かめる出来事を需要側と供給側に振り分ける
基本の経済(AD は右下がり、AS は右上がり)で、ほかの条件は変わらないとします。
| 出来事 | 動く曲線 | 物価 | 所得 |
|---|---|---|---|
| 政府支出の増加 | AD が右へ | 上がる | 増える |
| 原材料の値上がり | AS が左上へ | 上がる | 減る |
| 名目賃金の低下・技術進歩 | AS が右下へ | 下がる | 増える |
| 物価の上昇そのもの | 動かない(曲線の上の移動) | — | — |
名目賃金の低下は、家計の所得が減る話に見えても、AS の側に振り分けます。同じ物価で実質賃金が下がり、企業が雇用と生産を増やすからです。
スタグフレーションの例題
自分で解いてみる総需要・総供給のシフトとインフレの例題
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 2
正解は2です。技術進歩は供給側の要因で、同じ物価でより多く生産できるので AS が右下方へ動き、交点は AD の上を右下へ動きます。
| 選択肢 | 判定 | どこが誤りか |
|---|---|---|
| 1 | 誤り | 費用なので動くのは AS(左上方へ)。物価は上がり所得は減る。需要側と供給側の取り違え |
| 2 | 妥当 | — |
| 3 | 誤り | ディマンドプル。呼び名の入れ替え |
| 4 | 誤り | AD の上の左上への移動で、シフトではない |
| 5 | 誤り | 所得は増えることもある。「必ず」が誤り |
まとめ覚えることと間違いやすい点
覚えることの表(学派と総供給曲線)
縦軸に物価、横軸に国民所得をとり、AD は右下がりの場合です。
| 学派 | AS の形 | 財政政策・金融政策で所得は | 非自発的失業 |
|---|---|---|---|
| 古典派 | で垂直(名目賃金が伸縮的) | 増えない(物価だけ上がる) | 無い |
| ケインズ派 | までは右上がり(名目賃金が下方硬直的) | 増える(物価も上がる) | に届かないうちはある |
| ケインズ派の極端な場合(物価が一定。45度線分析・IS-LM分析の世界) | 水平 | 増える(物価は上がらない) | ある |
マネタリスト(フリードマン)の考え方では、短期の AS は右上がり(労働者が物価の上昇に気づくのが遅れる)、長期の AS は垂直です。合理的期待形成学派(ルーカスら)の考え方では、人々が政策を正しく予想するので短期でも AS は垂直で、予想された財政・金融政策は所得を増やせません。
AD を動かす要因はタイプ1の表のとおりです。AS(労働市場と生産関数から導く)を右下へ動かすのは、技術進歩・資本の増加・名目賃金の低下・原材料の値下がりです。
よくある間違い
| 誤りの文 | 正しくはこう |
|---|---|
| 物価が下がると、実質の貨幣供給が減る | の分母が小さくなるので増え、LM が右へ。M のままや M と P の積では AD にならない |
| 物価が上がると、AD が左へシフトする | AD の上を左上へ動くだけ |
| 政府支出の増加は LM を右へ、売りオペレーションは AD を右へ動かす | 政府支出は IS を右へ。売りオペレーションは貨幣を吸い上げ、AD を左へ |
| 投資が利子率に全く反応しなくても、AD は右下がり | 資産効果を考えなければ、IS が垂直なので物価が下がっても所得は増えず、AD は垂直(ピグー効果が働けば右下がり) |
| 名目利子率 = 実質利子率 − 予想インフレ率 | + 予想インフレ率 |
| 第一公準は「名目賃金 = 限界生産力」で、ケインズは第二公準も認めた | 実質賃金 = 限界生産力。ケインズが認めたのは第一公準だけ |
| 古典派の AS が垂直でも、財政政策で所得が増える | 実質賃金と雇用が変わらないので、物価だけが上がる |
| ケインズ派の AS は、完全雇用国民所得を越えても右上がり | 完全雇用に達すると名目賃金が上がり始め、 から先は垂直 |
| 原材料の値上がりで AS が右へ動き、総需要の増加による物価の上昇はコストプッシュ | AS は左上へ(コストプッシュ)。総需要の増加による物価の上昇はディマンドプル |
次にやること
先に読む論点
次に読む論点











