フィリップス曲線とは・自然失業率仮説
30秒でわかるフィリップス曲線
フィリップス曲線は、横軸に失業率()、縦軸にインフレ率(物価の上昇率。)をとった右下がりの曲線です。失業率が低いほどインフレ率が高い、という関係(トレード・オフ)を表します。もとは「名目賃金の上昇率と失業率」の関係として見つかったもので、物価の版はそれを書き換えたものです。
賃金の版から物価の版へ
期待付きフィリップス曲線
長期(期待が実際に追いついたとき)
1つ目の帯は変化率の計算です。2つの数の比(ここでは実質賃金=名目賃金÷物価)の変化率は、分子の変化率から分母の変化率を引いた値で近似できます(くわしくはマクロで使う計算)。実質賃金が労働生産性と同じ率で伸びるなら「名目賃金上昇率 − 物価上昇率 = 労働生産性の上昇率」で、移項すると帯の式です。
自然失業率()は、労働市場で需要と供給が一致しているときにも残る失業率です。働く気がありながら職に就けない非自発的失業は無く、仕事を探している途中の摩擦的失業などは残るので、0%ではありません。図の点Eでインフレ率が0%なのは、期待インフレ率を0%にした図だからです。
試験での出方
| 地方上級 | ★ | 特別区Ⅰ類 | ★★ |
|---|---|---|---|
| 市役所 | ★★ | 国家総合職 | ★★ |
| 国家一般職 | ★★ | 国家専門職 | ★ |
文の正誤(短期と長期・期待のつくり方・学派の組)と、期待付きの式やインフレ需要・供給の計算の両方が出ます。
よく出るタイプ
フィリップス曲線と期待の問題は、次の4つのタイプに分けられます。カードを押すと、そのタイプの解き方に切り替わります。
基本の図短期と長期のフィリップス曲線
長期のフィリップス曲線が垂直になる理由(図で見る)
ここでは の経済を使います。自然失業率は5%です。曲線の名前は、SPC(短期のフィリップス曲線。S は短期の short)、LPC(長期のフィリップス曲線。L は長期の long)と書きます。
拡張的な政策は、財政支出を増やす・金融を緩めるなどして総需要を増やす政策で、物価が上がりやすくなり、インフレ率が上がります。
- 短期:期待インフレ率が0%のときの短期のフィリップス曲線(SPC0)。右下がりわかること失業率が低いほどインフレ率が高い
- 自然失業率:失業率5%に立つ垂直な線(LPC)が長期のフィリップス曲線わかること期待が当たっている点Eでは、失業率は自然失業率の5%
- 政策:拡張的な政策でインフレ率を3%に上げるわかること人々はまだ0%と予想しているので、SPC0の上を左上へ動き、失業率は2%に下がる(点A)
- 期待:人々が3%のインフレに気づき、期待インフレ率も3%になるわかること短期の曲線が3ポイント上へ動く(SPC1)
- 長期:失業率は5%に戻り、インフレ率だけが3%のまま残る(点B)わかること長期には、政策で失業率を自然失業率より下げられない
図の見方
- 短期の曲線(SPC0・SPC1)は期待インフレ率を一定にした曲線で、期待が上がると曲線ごと上へ動きます(シフト)。点Eから点Aへは、同じ SPC0 の上の移動です。
- 点Aで失業率が下がるのは、人々が実際のインフレ率3%をまだ0%と思っている間だけです。期待が3%に追いつくと、労働者は実質賃金が上がっていなかったと気づいて働く量を元に戻すので、失業率は自然失業率に戻り(点B)、インフレ率だけが高く残ります(くわしくはタイプ2)。
- 期待が当たっている点(E・B)を結ぶと、自然失業率の高さに立つ垂直線になります。これが長期のフィリップス曲線です。縦軸の0より下はインフレ率が負(デフレ。物価が前の年より下がる)の所です。
タイプ1フィリップス曲線とオークンの法則
フィリップス曲線の形とオークンの法則
見分け方:「フィリップス曲線とオークンの法則に関する記述」「総供給曲線との関係」のような文が並びます。期待インフレ率の話が出てこないのがこのタイプです。
なぜそうなるか右下がりで、高インフレほど急になる理由
失業率が低い → 人手が足りない(労働市場) → 名目賃金が上がりやすい → 賃金の上昇が価格に上乗せされる(財市場) → インフレ率が高い、の順で右下がりになります。インフレ率が高い局面では企業が価格をしきりに改定するので、需要が増えても生産はあまり増えず、価格ばかり上がります。失業率は少ししか下がらないのにインフレ率は大きく上がる → 図では縦に大きく横に小さく動く、急な曲線になります。
- 曲線:右下がりで、インフレ率が高い左上ほど急、低い右下ほど緩やか
- 高い所:インフレ率を8%から6%へ2ポイント下げるわかること失業率は2%から2.4%へ、0.4ポイント上がるだけ
- 低い所:インフレ率を2%から0%へ同じ2ポイント下げるわかること失業率は4%から6%へ、2ポイントも上がる
オークンの法則は、所得と失業率の関係です。「失業率が自然失業率から1ポイント上がると、国民所得は完全雇用国民所得(。失業率が自然失業率のときの国民所得)より何%か下がる」という負の関係です。GDPギャップ(実際の国民所得が完全雇用国民所得から何%離れているか。()÷ × 100)を使うと、式は次のとおりです(問題によっては左辺を所得の差 そのもので書きます。変化の形で「実質GDPの成長率が高い年ほど失業率は下がる」とも言います)。
判定のしかた
- 1
形は右下がり
失業率とインフレ率(賃金の版なら名目賃金上昇率)は負の関係です。「正の相関」「右上がり」は誤りです。 - 2
傾きは高インフレで急
インフレ率が高い所ほど急、低い所ほど緩やかです。緩やかな所では、インフレ率を1ポイント下げるのに失業率を大きく上げる必要があります。 - 3
縦軸は「率」
インフレ率が下がっても、正である限り物価水準は上がり続けています。物価が下がるのはインフレ率が負のときだけです。 - 4
オークンの法則は負
所得が完全雇用国民所得を上回る → 失業率は自然失業率を下回ります。 - 5
総供給曲線と左右が逆
横軸は、総供給曲線が所得、フィリップス曲線が失業率です。オークンの法則で所得が大きいほど失業率は低いので左右が逆になり、右上がりの総供給曲線は右下がりのフィリップス曲線に当たります。総供給曲線が右へ動く → 同じインフレ率で失業率が低い → フィリップス曲線は左(下)へ。逆になるのは傾きの向きだけで、総供給曲線が急ならフィリップス曲線も急です(オークンの法則の係数が同じとき)。
例で確かめるオークンの法則で所得を出す
完全雇用国民所得が480兆円、自然失業率が4%、 の経済です。失業率が1ポイント上がるごとに、所得は完全雇用より2.5%ずつ下がります。
| 失業率 | GDPギャップ | 国民所得 |
|---|---|---|
| 3% | +2.5% | 492兆円 |
| 4% | 0% | 480兆円 |
| 5% | −2.5% | 468兆円 |
| 6% | −5% | 456兆円 |
フィリップス曲線の例題(定義とオークンの法則)
自分で解いてみるフィリップス曲線の例題(定義とオークンの法則)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 2
正解は2です。物価上昇率は %です(実質賃金の変化率 = 名目賃金上昇率 − 物価上昇率 が生産性の上昇率2%に等しい)。
| 選択肢 | 正しくはこう |
|---|---|
| 1 | もとは名目賃金上昇率と失業率の関係で、物価の版はあとから作られた。順番を逆にした文 |
| 2 | 正しい |
| 3 | インフレ率1%は正なので、物価は1%上がっている。率と水準の取り違え |
| 4 | 所得が上回れば、失業率は自然失業率を下回る。符号の取り違え |
| 5 | 横軸が所得から失業率に変わるので、フィリップス曲線は左へ |
タイプ2自然失業率仮説と期待
自然失業率仮説とは(貨幣錯覚と期待のつくり方)
見分け方:「短期」「長期」「期待インフレ率」「貨幣錯覚(労働者錯覚)」「合理的期待」「マネタリスト」のような語が選択肢に並びます。図の点を選ぶ問題もあります。
なぜそうなるか短期だけ失業率が下がる理由(貨幣錯覚)
フリードマンの説明では、貨幣錯覚は、労働者が、物価の上昇に気づかずに、名目賃金の上昇を実質賃金の上昇だと思いこむことです。期待インフレ率が実際に追いつくまでの短期だけ起こります。企業は物価を正しく見ています。
- 完全雇用:労働需要と労働供給が交わる点Eで、雇用量50・実質賃金14わかることこのときの失業率が自然失業率
- 錯覚:物価が予想より上がり、名目賃金も上がるわかること労働者は物価の上昇に気づかず、実質賃金が上がったと思って多く働こうとするので、労働供給曲線が右へ動く
- 短期:新しい交点Aで雇用量60わかること実際の実質賃金は12に下がっているのに雇用が増え、失業率は自然失業率より下がる
- 長期:労働者が物価の上昇に気づくわかること労働供給曲線が元に戻り、雇用量は50に、失業率は自然失業率に戻る
期待インフレ率のつくり方は、次の3つです( は期、 は前の期の実際のインフレ率)。
- 静学的期待:(前の期の実績をそのまま予想に)
- 適応的期待:(前の期の外れ(実際 − 予想)の 倍を、前の期の予想に足す。実際が予想より高ければ予想を上げ、低ければ下げる。。 なら静学的期待と同じ)
- 合理的期待:使える情報(政策の予定も)をすべて使って予想する。外れることはあるが、前もって読める外れは残らない
判定のしかた
- 1
短期か長期か
短期は期待インフレ率が動かない間で、右下がりの短期の曲線の上にいます。長期は期待が実際に追いついた状態で、失業率は自然失業率です。 - 2
期待がずれる
実際のインフレ率が期待を上回る → 労働者の錯覚で労働供給が増える → 失業率が自然失業率を下回ります。 - 3
期待が追いつく
期待インフレ率が上がる → 短期の曲線が上へ動く → 失業率は自然失業率に戻り、インフレ率だけが高く残ります。それでも失業率を低く保とうとすると、インフレ率を上げ続けることになります(インフレの加速)。 - 4
期待のつくり方
静学的・適応的期待は実績を後から追うので、拡張的な政策は短期には失業率を下げ、長期には効きません。合理的期待で価格・賃金が伸縮的なら(合理的期待形成学派)、予想された政策には人々がすぐ期待インフレ率を上げる → 短期の曲線がすぐ上へ動く → 錯覚が起きず、失業率は自然失業率のままです。期待が追いつかない予想外の政策だけが、短期に効きえます。 - 5
学派の組
マネタリスト(フリードマン)=自然失業率仮説・適応的期待・k%ルール。合理的期待形成学派(ルーカスら)=予想された政策は短期でも無効。ケインジアン=右下がりの曲線は安定・裁量の政策。スタグフレーション(失業率もインフレ率も高い状態)は、原材料などの費用の上昇で供給曲線が左上へ動いて起こると説明。ニュー・ケインジアン=価格の硬直性を企業の合理的な行動(メニュー・コスト)で説明。
k%ルールは、貨幣供給を毎年決まった率(k%)で増やし続け、景気に合わせて政策を変えること(裁量の政策)をやめるルールです。ルーカス批判は、政策が変わると人々の予想も変わるので、過去のデータの式で政策の効果を測ると誤る、という批判です。メニュー・コストは値札の書き換えなど価格を変えるのにかかる費用、所得政策は政府が賃金や価格の上がり方を直接おさえる政策、ミクロ的基礎は企業や家計の合理的な行動から理由を説明することです。
例で確かめる適応的期待で予想を更新する
、第1期の期待インフレ率が2%の経済で、実際のインフレ率が第1期2%・第2期7%・第3期1%でした。
| 期 | 実際 | 期待(適応的) | 次の期の期待の出し方 |
|---|---|---|---|
| 第1期 | 2% | 2% | 外れ0なので2%のまま |
| 第2期 | 7% | 2% | |
| 第3期 | 1% | 4% | |
| 第4期 | — | 2.8% | — |
静学的期待なら第4期の期待は第3期の実績の1%です。適応的期待は外れの4割だけを取り込むので、実績より遅れて動きます。
自然失業率仮説の例題(貨幣錯覚と期待)
自分で解いてみる自然失業率仮説の例題(貨幣錯覚と期待)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 3
正解は3です。静学的期待では、今期の期待は前期の実績なので、政策でインフレ率が上がった期には実際が期待を上回り、短期には失業率が下がります。
| 選択肢 | 正しくはこう |
|---|---|
| 1 | フリードマンの自然失業率仮説で取り違えるのは企業ではなく労働者(主体のすり替え) |
| 2 | 非自発的失業がないだけで、摩擦的失業などは残る。0%ではない |
| 3 | 正しい |
| 4 | 無効なのは予想された政策。予想外の政策は短期に効きうる |
| 5 | 自然失業率は総需要政策では下がらない。k%ルールは裁量をやめるためのルール |
タイプ3期待付きフィリップス曲線の計算
期待付きフィリップス曲線の計算
見分け方: のような式か、「名目賃金上昇率 と失業率の関係」と「労働の限界生産性」が与えられ、インフレ率・失業率・自然失業率を数で問われます。
なぜそうなるか長期の条件から先に置く理由
長期均衡では期待が当たっている()ので、式の右辺の が0になり、 が決まります。未知の自然失業率は、まずこの条件で決めます。下の図は、このあとの例(、第0年が長期均衡)を描いたものです。
- 第0年:長期均衡なので期待=実際の2%で、そのときの失業率6%がそのまま自然失業率(点E)
- 第1年:期待は前年の2%。失業率を5%にすると、自然失業率より1ポイント低いわかること2+0.6=2.6%(点A1)
- 第2年:期待が前年の2.6%に上がり、短期の曲線が0.6上へわかること失業率5%のままなら 2.6+0.6=3.2%(点A2)
使える条件:1本目は期待付きフィリップス曲線が直線の式で与えられたとき。2本目は、実質賃金が労働生産性(働く人1人あたりの生産量。問題文では「労働の限界生産性」とも)と同じ率で伸びるとき、または企業が賃金の費用に一定の割合を上乗せして価格を決めるときで、どちらも賃金の伸びのうち生産性の伸びで吸収できない分だけが価格に出ます。
解き方の手順
- 1
長期の条件を置く
「長期均衡だった年」があれば、その年の失業率が自然失業率です。無ければ、期待が分かる年の「実際 − 期待」を で割り、符号を逆にします。それが「失業率 − 自然失業率」です(実際が期待を上回っていれば、失業率は自然失業率より低い)。 - 2
その年の期待を決める
静学的期待なら前の年の実績、期待が数で与えられればその値です。 - 3
式に代入して解く
分かっている値を入れて、残った1つの未知を出します。 - 4
次の年へ進む
今年の実績が来年の期待になります(静学的期待のとき)。 - 5
賃金の式なら物価に直す
を出してから生産性の上昇率を引きます。生産性が水準で与えられたら、増えた分÷前の年の水準で上昇率に直します。
例で確かめる長期均衡から失業率を下げた2年間
、人々は前の年の実績を今年の予想とします。第0年は長期均衡で、インフレ率2%・失業率6%でした。第1年から失業率を5%に保ちます。
- 長期均衡なので
- 第1年:期待は2%、 なので %
- 第2年:期待は2.6%、 %
失業率を自然失業率より1ポイント低く保つ間、インフレ率は毎年0.6ポイントずつ上がり続けます。
賃金の式の例:、労働生産性の上昇率が2%、失業率5%なら、 %、物価上昇率は %です。
期待付きフィリップス曲線の計算の例題
自分で解いてみる期待付きフィリップス曲線の計算の例題(自然失業率を求める)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 4
実際は期待を ポイント上回っています。 より 、 %で、正解は4です。
2%は符号を逆にした値()、4%はその年の失業率をそのまま自然失業率とした値(期待と実際が違うので長期均衡ではありません)、5.28%は0.8で割らずに掛けた値()、9.75%は期待インフレ率を入れ忘れ、 とした値です。
タイプ4インフレ需要曲線・インフレ供給曲線
インフレ需要曲線・インフレ供給曲線と期を追う計算
見分け方:縦軸にインフレ率、横軸に国民所得をとった図か、 と のような2本の式が出ます( は名目マネーサプライの増加率=マネー成長率)。
インフレ需要曲線(IAD。動学的総需要曲線とも呼ぶ)は総需要曲線の、インフレ供給曲線(IAS。動学的総供給曲線とも呼ぶ)は総供給曲線の、物価水準をインフレ率に置き換えた版です。IAS は、期待付きフィリップス曲線の「失業率 − 自然失業率」をオークンの法則で「所得 − 完全雇用国民所得」に置き換えたもので、失業率が低いほど所得は大きいので符号が逆になり、 と右上がりです。
なぜそうなるかIAD が右下がりで、IAS は期待で上へ動く理由
インフレ率が高い → 実質マネーサプライの伸び()が小さい(貨幣市場) → 利子率が上がる → 投資が減る(財市場) → 所得が小さい、なので IAD は右下がりです。マネー成長率や政府支出が増えると IAD は右へ、期待インフレ率が上がると IAS は上へ動きます。
- 最初:インフレ需要曲線 IAD0 とインフレ供給曲線 IAS が、完全雇用国民所得200の上の点E0で交わる(インフレ率2%)
- 金融緩和:マネー成長率を6%に上げるわかること同じインフレ率でも所得が増えるので、IAD が右へ動く(IAD1)
- 静学的:期待は前期の2%のままわかることIAS は動かず、交点Aで所得もインフレ率も上がる(短期は効く)
- 合理的:価格・賃金が伸縮的で、予想された引上げなら、期待インフレ率がすぐ実際に追いつくわかること供給の線は Yf で垂直になり、点Bへ真上に動く。所得は200のまま
| 何が変わるか | 動く曲線 | 向き |
|---|---|---|
| マネー成長率 が上がる・政府支出が増える | IAD | 右へ |
| 前の期の所得 が増える | IAD | 右へ |
| 期待インフレ率が上がる | IAS | 上へ(傾きは同じ) |
| 合理的期待で価格が伸縮的、政策が予想されている | IAS | で垂直 |
解き方の手順
- 1
出発点を決める
問題文が「定常状態」(所得もインフレ率も、毎期同じ値のまま変わらない状態)と言っていれば、所得 = 、インフレ率 = 期待 = その期のマネー成長率です(IAD で なので )。 - 2
その期の期待を決める
静学的なら前の期の実績、適応的なら前の期の期待を外れの 倍だけ直した値です。 - 3
- 4
次の期へ持ち越す
求めた (期待の更新に)と (IAD の前の期の所得に)の2つを入れ替えて、同じことをくり返します。
例で確かめるマネー成長率を2%から6%に上げる
、、静学的期待の経済です。第0期は定常状態(所得200・インフレ率2%・マネー成長率2%)で、第1期からマネー成長率を6%にします。
- 第0期:定常状態。IAD0 と IAS0 が所得200・インフレ率2%の点E0で交わる
- 第1期:マネー成長率が6%になり IAD が右へ(IAD1)。期待は前期の2%なので IAS0 は動かないわかること交点A1で所得202、インフレ率4%
- 第2期:期待が4%に上がり IAS が2ポイント上へ(IAS2)。前期の所得が202になったので IAD もさらに右へ(IAD2)わかること交点A2で所得202、インフレ率6%
- その後:同じように1期ずつ進めるわかること第3期(201・7%)、第4期(200・7%)、第5期(199.5・6.5%)とうず巻くように動き、所得200・インフレ率6%の点E1に近づく
| 期 | 期待 | インフレ率 | 所得 |
|---|---|---|---|
| 第0期 | 2% | 2% | 200 |
| 第1期 | 2% | 4% | 202 |
| 第2期 | 4% | 6% | 202 |
| 第3期 | 6% | 7% | 201 |
| 第4期 | 7% | 7% | 200 |
第1期は、IAD を代入して 、つまり で4%、所得は です。第2期は期待が4%、前の期の所得が202なので で6%です。第4期は所得200でもインフレ率7%で、まだ定常状態ではありません。第5期(6.5%・199.5)に所得が200を下回り、うず巻きながら、インフレ率がマネー成長率と同じ6%・所得200の定常状態に近づきます。
インフレ需要・供給曲線の例題(期を追う計算)
自分で解いてみるインフレ需要・供給曲線の例題(期を追う計算)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 3
第1期:期待は2%(第0期は外れ0)。 より %、所得は です。
第2期:期待は %。 より 、 %、所得は で、正解は3です。
| 期 | 期待 | インフレ率 | 所得 |
|---|---|---|---|
| 第1期 | 2% | 4.5% | 310 |
| 第2期 | 3.5% | 6.5% | 312 |
307は第2期の前の期の所得を300のままにした値()、310は第1期で止めた値(前の期の実績4.5%をそのまま期待にした静学的期待でも、 で310になります)、315は期待を2%のまま更新しなかった値()、318は外れを引く向きに直して期待を0.5%とした値です。
まとめ覚えることと間違いやすい点
覚えることの表(期待のつくり方と学派)
拡張的な政策(財政でも金融でも同じ)で、失業率を自然失業率より下げられるかの表です。
| 期待のつくり方 | 短期の曲線 | 失業率を下げられるか | 学派 |
|---|---|---|---|
| 静学的・適応的(実績を後から追う) | フィリップス曲線は右下がり、IAS は右上がり | 短期は下げられる/長期は下げられない | マネタリスト(自然失業率仮説) |
| 合理的(予想された政策) | 垂直(、) | 短期も長期も下げられない | 合理的期待形成学派 |
| 合理的(予想外の政策) | その期は右下がり | 短期だけ下げうる | 合理的期待形成学派 |
合理的期待の2行は、価格・賃金が伸縮的なとき(合理的期待形成学派)です。価格が硬直的なら、予想された政策も短期に効きえます(ニュー・ケインジアン)。
| 学派 | 主張 |
|---|---|
| ケインジアン | 右下がりの曲線は安定。スタグフレーションは費用の上昇から。裁量の政策・所得政策 |
| マネタリスト | インフレの原因は過大な総需要政策。k%ルール |
| 合理的期待形成学派 | 予想された政策は短期でも無効。ルーカス批判 |
| ニュー・ケインジアン | 価格の硬直性にミクロ的基礎(メニュー・コスト) |
よくある間違い
| 誤りの文 | 正しくはこう |
|---|---|
| フィリップス曲線は右上がり(正の相関) | 右下がり(負の相関) |
| 傾きは高インフレで緩やか | 高インフレで急、低インフレで緩やか |
| オークンの法則で、所得が完全雇用国民所得を上回るほど失業率は上がる | 下がる(負の関係。成長率と失業率の変化で書く問題でも向きは同じ) |
| 総供給曲線が右へ動くとフィリップス曲線も右へ | 左(下)へ |
| 短期は垂直・長期は右下がり | 短期は右下がり・長期は垂直 |
| 期待インフレ率が上がると長期の曲線が上へ | 上へ動くのは短期の曲線 |
| 自然失業率仮説で、貨幣錯覚に陥るのは企業 | 労働者(フリードマンの説明) |
| 自然失業率は0% | 摩擦的失業などが残るので0%ではない |
| 自然失業率はインフレ率0%のときの失業率 | 期待が当たっているときの失業率。インフレ率が何%でも、期待と同じなら自然失業率(基本の図の点B) |
| 金融緩和で自然失業率が下がる | 構造的・制度的な要因で決まり、総需要政策では動かない |
| 合理的期待なら予想外の政策も短期に無効 | 予想外の政策は短期に効きうる |
| k%ルールはケインジアンの処方箋 | マネタリスト |
| 賃金の版のまま、生産性の上昇率を引かずに物価上昇率とする | 物価上昇率 = − 生産性の上昇率 |
| 期を追う計算で、期待か前の期の所得を第0期のままにする | 毎期、両方を前の期の値に入れ替える |
次にやること
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