マンデル=フレミング・モデルとは(IS-LM-BP分析)
30秒でわかるマンデル=フレミング・モデル
マンデル=フレミング・モデルは、IS-LM 分析に外国との取引を足したモデルです。財の輸出入に加え、資本(お金)が利子率の高い国へ動くとき、財政政策・金融政策が所得を動かせるかを為替制度ごとに調べます。図では IS 曲線・LM 曲線に BP 曲線(国際収支が釣り合う所得と利子率の組)を加えます。純輸出は輸出−輸入、介入は為替を保つために通貨当局が通貨を売り買いすることです。
たどる連鎖
結論(物価一定・資本移動が完全な小国)
先に読む論点IS・LM曲線財政・金融政策の効果
試験での出方
| 地方上級 | ★★★ | 特別区Ⅰ類 | ★★ |
|---|---|---|---|
| 市役所 | ★★★ | 国家総合職 | ★ |
| 国家一般職 | ★★ | 国家専門職 | ★★★ |
為替制度と政策の組で結論を問う文の正誤・組合せの問題が中心です。途中の連鎖(資本・為替・介入の向き)の1か所だけを入れ替えた選択肢がよく作られます。
よく出るタイプ
マンデル=フレミング・モデルの問題は、次の5つのタイプに分けられます。カードを押すと、そのタイプの解き方に切り替わります。
基本の図IS-LM-BP の図
IS-LM-BP の図の読み方(BP曲線とは)
このページの図は、次の「基本の経済」から描いています(物価は一定。利子率 は%)。
| 式 | 意味 |
|---|---|
| 消費()。所得()が1増えると0.6増える | |
| 投資()。利子率()が1上がると25減る | |
| 政府支出() | |
| 純輸出(=輸出−輸入)。為替レート()が1上がると5増え、所得が1増えると輸入が0.1増える | |
| 貨幣需要()。貨幣供給()は200 |
為替レート は、外国通貨1単位が自国通貨でいくらかです(1ドル= 円。基本の経済は )。 が上がるのは自国通貨安(減価)、下がるのは自国通貨高(増価)です。円高は「1ドル何円」の数が減ることです。
財市場の均衡 に表の式を入れ、 を左にまとめると 、両辺を2倍して (IS 曲線)です。貨幣市場の均衡 からは (LM 曲線)です。・・ なら、IS0 は 、LM0 は です。
- ISとLM:IS0(財市場の均衡)は右下がり、LM0(貨幣市場の均衡)は右上がりわかること外国と取引しない経済なら、この2本の交点で所得と利子率が決まる
- BP:資本移動が完全な小国では、国内の利子率は世界の利子率 r* から離れられないわかることBP は r* の高さの水平な線
- 均衡E0:3本が1点で交わるわかること財市場・貨幣市場・国際収支がそろって釣り合う(所得400、利子率4%)
- 点A:BP より上では、国内の利子率が r* より高いわかること資本が流れ込み、自国通貨高の圧力がかかる
- 点B:BP より下では、国内の利子率が r* より低いわかること資本が流れ出し、自国通貨安の圧力がかかる
図の見方
- 小国(自国の動きでは世界の利子率が変わらない国)で資本移動が完全(利子率が少しでも違えば資本がいくらでも動く)なら、国内の利子率は世界の利子率 (ここでは4%)から離れられず、BP 曲線は の高さの水平な線です。外国と財や資本を取引する経済を開放経済といいます。
- 均衡 E0 は3本の交点で、所得400・利子率4%、純輸出は です。
- 点が BP の線より上(利子率が高い)なら資本が流れ込んで国際収支(ここでは純輸出と資本の流出入の合計。流入で黒字)は黒字、下なら流れ出て赤字です。この圧力が為替か介入を動かし、最後は必ず BP の線の上の点(国際収支が釣り合う点)に戻ります。
今の国際収支統計では、資本の流入は負債の増加なので、金融収支(資産の増加−負債の増加)を減らす向きに数えます。このページの「国際収支の黒字・赤字」はモデルの上の言い方です。
タイプ1為替の表示と動く曲線
為替レートの表示と、為替で動く曲線(自国通貨高・自国通貨安)
見分け方:問題文に「 の上昇は自国通貨の減価」のような表示の約束や、「点が BP より下」「為替の変化で IS・LM に起きること」が書かれ、政策の効果の結論までは問いません。
なぜそうなるか為替で動くのは IS(と BP)だけ
純輸出は財の需要の一部なので、為替が動くと IS が動きます。貨幣需要も投資も為替を含まないので、LM は動きません。
- 最初:3本が E0 で交わる(1ドル=100円)
- 通貨安:e が100から120へ上がる(自国通貨安)わかること輸出品は外国通貨で測って安く、輸入品は自国通貨で測って高くなる
- 純輸出:輸出が増え輸入が減るわかること純輸出が増え、同じ利子率でも財の需要が増える
- ISが右へ:IS が IS0 から IS1 へわかること同じ利子率で所得が200大きい位置
- LMは不動:貨幣の需要も供給も e では変わらないわかることLM はそのまま。水平な BP も動かない
判定のしかた
- 1
点と BP の上下
点が BP の線より上なら資本が流れ込んで自国通貨高の圧力、下なら流れ出て自国通貨安の圧力です(基本の図の点A・点B)。 - 2
e の向きを読む
が上がるのは自国通貨安(減価)、下がるのは自国通貨高(増価)です。円なら、1ドル何円の数が減るのが円高です。 - 3
純輸出の向きを読む
自国通貨安では、輸出品が外国通貨で測って安くなり、輸入品が自国通貨で測って高くなるので、純輸出が増えます(このモデルではそうなると置きます。マーシャル=ラーナー条件)。自国通貨高では逆です。 - 4
動く曲線を決める
純輸出が増えれば IS が右へ、減れば左へ移ります。LM は動きません。右上がりか垂直の BP(タイプ4)も同じ向きへ移ります。純輸出が増えると、同じ利子率で国際収支が釣り合う所得が大きくなるからです(水平の BP は動かない)。
例で確かめる1ドル=100円から120円への自国通貨安
基本の経済で、為替レートが から に上がった(円安になった)とします。
1,200円の品物はドルで12ドルから10ドルに安くなり、10ドルの品物は円で1,000円から1,200円に高くなります。純輸出の式の の係数は5なので、 が20上がると、同じ所得で純輸出は 増えます。IS 曲線は、同じ利子率で所得が 大きい位置()へ移ります。2は乗数です。所得が1増えると、消費に回らない0.4(=1−0.6)は貯蓄に、0.1は輸入に回って国内の需要から抜けるので、 です。
為替レートの例題(自国通貨高と動く曲線)
自分で解いてみるマンデル=フレミング・モデルの例題1(為替の表示と動く曲線)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 3
- 1: の数が小さくなるのは円高です。表示を取り違えた文です。
- 2:1,200円の品物は10ドルから12ドルに高くなり、輸出は減ります。円高と円安の効果を取り違えた文です。
- 3:純輸出が減るので IS は左へ移ります。正解は3です。
- 4:貨幣需要は為替レートを含まないので、LM は動きません。
- 5:純輸出が減ると、国際収支を釣り合わせる所得は小さくなるので、BP は左へ移ります。
| 円安( が上がる) | 円高( が下がる) | |
|---|---|---|
| 純輸出 | 増える | 減る |
| IS 曲線 | 右へ | 左へ |
| 右上がりの BP | 右へ | 左へ |
タイプ2変動相場制の政策の効果
変動相場制の財政政策と金融政策(マンデル=フレミング)
見分け方:問題文に「変動相場制」「資本移動が完全」があり、IS か LM が動いた直後の図で、その後の資本・為替・所得の動きを問います。外国の利子率が変わって BP が上下に動く問題もこのタイプです。
なぜそうなるか変動相場制で財政政策が効かない理由
財政拡大で IS が右へ動くと利子率が より上がりかけ、資本が流れ込んで自国通貨高になり、純輸出が減って IS が押し戻されます。LM は動かないので、利子率が に戻った点は LM 上の E0 しかなく、所得は Y0 です。基本の経済で を40から140にすると、IS の より (自国通貨高)で、純輸出は です。
- 最初:3本が E0 で交わる(所得 Y0、利子率 r*)
- 財政拡大:政府支出が増え、IS が IS0 から IS1 へ右に動く
- 利子率:IS1 と LM の交点 E1 は r* より上わかること国内の利子率が世界の利子率より上がりかける
- 資本流入:高い利子率を求めて、外国から資本が流れ込む
- 通貨高:外国為替市場で自国通貨が買われ、自国通貨高になる(e が下がる)
- 純輸出:輸出が減り輸入が増えて、純輸出が減る
- ISが戻る:純輸出が減って IS が左へわかることr* に戻る IS0 の位置で止まる
- 結論:所得は Y0 のままわかること政府支出の増加を、純輸出の減少がちょうど打ち消す(財政政策は効かない)
判定のしかた
- 1
政策で動く曲線
財政拡大は IS が右へ、金融緩和は LM が右へ動きます(縮小・引締めは左へ)。図があれば、曲線が動いた向きから政策を読みます。 - 2
利子率は r* の上か下か
新しい交点が より上なら国内の利子率が上がりかけ、下なら下がりかけています。外国の利子率が上がったときは、BP が上へ動いて今の点が BP より下になったと読みます(流出 → 自国通貨安 → IS が右で所得が増える)。下がったときは逆です。 - 3
資本の向き
上なら資本が流れ込み、下なら流れ出ます。 - 4
為替の向き
流入では自国通貨が買われて自国通貨高、流出では売られて自国通貨安です。 - 5
純輸出の向き
自国通貨高で純輸出が減り、自国通貨安で増えます。 - 6
IS が r* に戻るまで動く
交点が に戻るまで IS が動きます。所得は LM と の交点で決まるので、財政政策と金融政策のうち所得を動かせるのは、LM を動かす金融政策だけです( が変われば、新しい と LM の交点へ所得が動きます)。
使える条件:変動相場制で、資本移動が完全な小国のとき(BP から利子率は 。連立の解き方はマクロで使う計算)。
例で確かめる基本の経済で貨幣供給を200から300に増やす
- 最初:E0 で所得400、利子率4%(1ドル=100円)
- 金融緩和:貨幣供給が200から300へ増え、LM が LM0 から LM1 へ右に動く
- 利子率:IS0 と LM1 の交点 E1 は利子率2%わかること世界の利子率4%より下がりかける
- 資本流出:低い利子率を嫌って、資本が外国へ流れ出す
- 通貨安:外国為替市場で自国通貨が売られ、1ドル100円から120円の円安になる
- 純輸出:輸出が増え輸入が減って、純輸出が0から80に増える
- ISが右へ:IS が IS0 から IS1 へわかることLM1 上で利子率4%に戻る E2 で止まる
- 結論:所得は400から600へ増える(変動相場制の金融政策はよく効く)
LM1 は より です。為替が動く前の交点 E1 は IS0 との交点で、 より利子率2%・所得500です。
- BP:利子率は4%
- LM1:
- IS: より (1ドル100円から120円への円安)
純輸出は で、0から80に増えました。所得は400から600へ増え、金融政策はよく効きます。
変動相場制の例題(為替レートの計算)
自分で解いてみるマンデル=フレミング・モデルの例題2(変動相場制の財政政策)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
、、、、、
世界の利子率は3%である。政府支出が50から70に増えたとき、新しい均衡の為替レート はいくらか。
正解は 4
BP から利子率は3%、LM の より所得は500で、政府支出を変えても変わりません。所得500・利子率3%では 、、 です。 なら より 、 なら です。正解は4です。
- 95:為替の向きを逆にした値()
- 90:為替が動かないとした値(固定相場制の考え方)
- 88:IS(式を入れて 、2.5倍して )で の係数2.5を掛け忘れ、 の変化を とした値
- 70:純輸出の減少20を の係数4で割り忘れ、 の変化を とした値()
| 政府支出50 | 政府支出70 | |
|---|---|---|
| 所得・利子率 | 500・3% | 500・3% |
| 為替レート | 90 | 85 |
| 純輸出 | −15 | −35 |
タイプ3固定相場制・介入・不胎化
固定相場制の政策の効果と為替介入・不胎化・トリレンマ
見分け方:問題文に「固定相場制」「平価」「介入」「不胎化」「トリレンマ」のどれかがあります。図では IS と LM の両方が動いていることが多く、LM の動きは政策ではなく介入の結果です。
固定相場制は、為替レートを決めた水準(平価)に保つ制度で、通貨当局は平価を守る為替介入をしなければなりません。日本では為替介入は財務大臣の権限で、日本銀行が代理で実務を担います。
なぜそうなるか固定相場制で財政政策がよく効く理由
財政拡大で IS が右へ動くと利子率が より上がりかけ、資本が流れ込んで自国通貨高の圧力がかかります。平価を守る自国通貨売りの介入で貨幣供給が増えて LM も右へ移るので、利子率は のまま、所得は E1 より大きく増えます。
- 最初:3本が E0 で交わる(所得 Y0、利子率 r*)
- 財政拡大:政府支出が増え、IS が IS0 から IS1 へ右に動く
- 利子率:IS1 と LM0 の交点 E1 は r* より上わかること国内の利子率が世界の利子率より上がりかける
- 資本流入:資本が流れ込み、自国通貨高の圧力がかかる
- 介入:平価を守るため、通貨当局が自国通貨を売り外貨を買う
- 貨幣供給:売った自国通貨が市中に出て、貨幣供給が増える
- LMが右へ:LM が LM0 から LM1 へわかることr* に戻る E2 で止まる
- 結論:所得は Y0 から Y2 へ大きく増える(固定相場制の財政政策はよく効く)
判定のしかた
- 1
政策で動く曲線
財政政策は IS、金融政策は LM を動かします。 - 2
利子率は r* の上か下か
新しい交点が より上か下かを見ます。 - 3
資本の向き
上なら流入して自国通貨高の圧力、下なら流出して自国通貨安の圧力がかかります。 - 4
介入の向き
自国通貨高の圧力には自国通貨を売って外貨を買い、自国通貨安の圧力には自国通貨を買って外貨を売ります。外貨準備(通貨当局が持つ外国通貨の蓄え)は、外貨を買えば増え、売れば減ります。 - 5
貨幣供給の向き
売った自国通貨は市中に出て貨幣供給が増え、買った自国通貨は市中から消えて減ります。為替は平価のままなので、純輸出は動きません。 - 6
LM が r* に戻るまで動く
交点が に戻るまで LM が動きます。所得は IS と の交点で決まるので、財政政策と金融政策のうち所得を動かせるのは、IS を動かす財政政策だけです。
例で確かめる固定相場制の基本の経済で貨幣供給を200から300に増やす
- 最初:E0 で所得400、利子率4%(1ドル=100円に固定)
- 金融緩和:貨幣供給が200から300へ増え、LM が LM0 から LM1 へ右に動く
- 利子率:交点 E1 は利子率2%で、世界の利子率4%より下
- 資本流出:資本が流れ出し、自国通貨安の圧力がかかる
- 介入:1ドル=100円を守るため、通貨当局が自国通貨を買い外貨を売る
- 貨幣供給:買い取った自国通貨が市中から消え、貨幣供給が減る
- LMが戻る:貨幣供給が200に戻るまで LM が左へわかることLM0 の位置の E0 に戻る
- 結論:所得は400のまま(固定相場制の金融政策は効かない)
交点 E1(2%・500)は より下なので、1ドル=100円を守る自国通貨買いの介入で外貨準備も貨幣供給も減り、LM が LM0 に戻ります。所得は400のままです。
不胎化は、介入で動いた貨幣供給を、逆向きの公開市場操作で打ち消すことです。自国通貨売りの介入で増えた貨幣は、中央銀行が国債を売って代金を吸い上げる売りオペで減らし、自国通貨買いの介入で減った貨幣は、国債を買って代金を払い出す買いオペで補います。不胎化すれば LM は動きませんが、資本の流出入と介入は続きます。
国際金融のトリレンマ:「自由な資本移動」「固定相場(為替の安定)」「自由な金融政策(独立した金融政策)」の3つのうち、同時に選べるのは2つまでです。自由な資本移動と固定相場を選ぶと、金融政策は介入に打ち消されます(上の例)。変動相場制なら、自由な資本移動と自由な金融政策を両立できます。
固定相場制の例題(介入と不胎化)
自分で解いてみるマンデル=フレミング・モデルの例題3(固定相場制の介入と不胎化)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 3
- 1:利子率が低ければ資本は流れ出ます。資本の向きを逆にした文です。
- 2:自国通貨安を止めるには自国通貨を買います。介入の向きを逆にした文です。
- 3:外貨を売るので外貨準備は減り、買い取った自国通貨が市中から消えて貨幣供給も減ります。正解は3です。
- 4:減った貨幣を補うので買いオペです。不胎化の向きを逆にした文です。
- 5:固定相場制では為替は平価のままで、純輸出は動きません。変動相場制の連鎖を持ち込んだ文です。
| 圧力 | 介入 | 貨幣供給・外貨準備 | 不胎化 |
|---|---|---|---|
| 自国通貨高 | 自国通貨売り・外貨買い | どちらも増える | 売りオペ |
| 自国通貨安 | 自国通貨買い・外貨売り | どちらも減る | 買いオペ |
タイプ4BP曲線の形と資本移動
BP曲線の形と、資本移動がゼロ・不完全のとき
見分け方:BP 曲線が右上がりか垂直に描かれ、「資本の移動は不完全」「資本移動が無い」と書かれています。BP の形だけが違う2つの経済を比べる問題もあります。
なぜそうなるかBP の傾きは資本移動の自由さで決まる
所得が増えて増えた輸入の分を、利子率の上昇で呼び込む資本で埋めるので、BP は右上がりです。資本が自由に動くほど緩やかで、完全なら水平、資本が動かなければ垂直です。
- 完全:資本移動が完全なら、BP は r* の高さで水平
- 不完全:資本移動に限りがあると BP は右上がりわかること所得が増えて増えた輸入の分を、利子率を上げて呼び込む資本で埋める
- 上下の読み:点Hと、所得が同じ BP 上の点Kを比べるわかることHは利子率が低く資本の流入が少ないので、国際収支は赤字
- ゼロ:資本が動かないと BP は垂直わかること利子率は国際収支に効かず、BP より左は黒字、右は赤字
判定のしかた
- 1
BP の形から資本移動を読む
水平なら完全、右上がりなら不完全(緩やかなほど自由)、垂直ならゼロです。 - 2
点の上下を読む(右上がり)
点と、所得が同じ BP 上の点を比べます。利子率が高ければ資本の流入が多く黒字、低ければ赤字です。 - 3
点の左右を読む(垂直)
BP より左は輸入が少なく黒字、右は赤字です。利子率は関係しません。 - 4
為替か介入をたどる
赤字なら自国通貨安の圧力です。変動相場制なら純輸出が増えて IS と BP が右へ、固定相場制なら自国通貨買いの介入で LM が左へ移ります。黒字ならすべて逆です。 - 5
結論の表を入れ替える
資本移動がゼロなら、変動相場制では財政も金融も効き(IS と BP が右へ移ったまま)、固定相場制ではどちらも効きません(LM が左へ戻る)。
例で確かめる資本移動ゼロ・固定相場制で政府支出を40から140に増やす
基本の経済で資本がまったく動かないとすると、国際収支は純輸出だけです。 のとき より、BP は所得400の垂直な線です。
- 最初:資本移動ゼロで、BP は所得400の垂直な線。E0 で利子率4%
- 財政拡大:政府支出が40から140へ増え、IS が IS0 から IS1 へ右に動く
- 赤字:交点 E1 は所得500で BP より右わかること輸入が増え、純輸出は−10の赤字
- 介入:自国通貨安の圧力に、通貨当局が自国通貨を買い外貨を売るわかること貨幣供給が減る
- LMが左へ:LM が LM0 から LM1 へわかることBP の線と交わる E2 で止まる
- 結論:所得は400のまま、利子率だけ4%から8%へ上がる(財政政策は効かない)
IS1()と LM0 の交点 E1 は利子率6%・所得500で、純輸出は の赤字です。自国通貨の買い支えで貨幣供給が減り、所得が400に戻るまで LM が左へ移ります。新しい均衡 E2 は、IS1 の より利子率8%で、貨幣供給は LM の式に入れて です。
BP曲線の例題(資本移動がゼロのとき)
自分で解いてみるマンデル=フレミング・モデルの例題4(資本移動ゼロの金融政策)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 2
LM が右へ移ると、利子率が下がって投資が増え、所得が増えます。
- 1:資本が動かないので、利子率が下がっても資本は流れ出ません。BP を水平か右上がりと読んだ文です。
- 2:基本の経済で貨幣供給を200から300に増やすと、交点は所得500・利子率2%で純輸出は−10の赤字です。買い支えで貨幣供給が200に戻るまで LM が左へ移り、所得は400に戻ります。正解は2です。
- 3:資本移動がゼロでも、固定相場制の金融政策は介入に打ち消されて効きません。
- 4:変動相場制の連鎖です。固定相場制では為替は平価のままです。
- 5:BP より右は所得が大きく輸入が多いので、赤字です。
| 資本移動ゼロ | 財政拡大 | 金融緩和 |
|---|---|---|
| 変動相場制 | 所得が増える | 所得が増える |
| 固定相場制 | 所得は変わらない(利子率だけ上がる) | 所得は変わらない |
タイプ5ポリシー・ミックスの割当
ポリシー・ミックス(マンデルの政策割当)と図の領域
見分け方:「国内均衡」「対外均衡」「政策割当」の語と、財政支出 と利子率 を軸にした2本の線の図があります。IB は完全雇用(国内均衡)が成り立つ と の組、EB は国際収支が均衡する(対外均衡の)組です。
前提は、固定相場制で資本移動が不完全なことです(完全なら、固定相場制の小国は利子率を動かせない)。金融政策の手段は利子率の上げ下げとします。
なぜそうなるか国内に財政、対外に金融を割り当てる理由
利子率は投資を通じて所得に効くだけでなく、資本の流出入を通じて国際収支にも直接効きます。そのため、財政支出で増えた輸入の分は利子率を少し上げるだけで埋まり、EB は IB より緩やかです。利子率(金融政策)は財政支出に比べて国際収支に相対的に強く効きます。財政支出は総需要を直接動かすので国内の均衡に充てます。この割当なら交点 F に近づき、逆に割り当てると、1回ごとに交点からのずれが広がります。
- IB:完全雇用になる G と r の組わかることG を増やして増えた所得を、r を上げて投資を減らし打ち消すので右上がり
- EB:国際収支が均衡する組わかることG で増えた輸入の分を、r を上げて呼び込む資本で埋めるので右上がり。IB より緩やか
- 両方の上:IB と EB の両方より上わかること失業と黒字。G を増やし、r を下げる
- 左の間:IB より上で EB より下わかること失業と赤字。G を増やし、r を上げる
- 右の間:IB より下で EB より上わかることインフレと黒字。G を減らし、r を下げる
- 両方の下:IB と EB の両方より下わかることインフレと赤字。G を減らし、r を上げる
- 割当:G は IB、r は EB に合わせて動かすわかることどの領域からも交点 F に近づく
判定のしかた
- 1
軸を確かめる
横軸が ・縦軸が か、その逆かを見ます。軸が入れ替わると、線の上下の意味も入れ替わります。 - 2
IB の上下を決める
横に ・縦に なら、IB より上は利子率が高すぎて投資が足りず失業(デフレ・ギャップ)、下はインフレ(インフレ・ギャップ)です。 - 3
EB の上下を決める
EB より上は資本の流入が多く黒字、下は赤字です。 - 4
政策の向きを決める
失業なら財政支出を増やし、インフレなら減らします。黒字なら利子率を下げ(金融緩和)、赤字なら上げます(金融引締め)。
例で確かめるインフレと赤字が重なる点Pで政策を決める
- 点P:IB より下でインフレ、EB より下で赤字
- 財政:インフレには財政支出を減らすわかること図の左へ
- 金融:赤字には利子率を上げて資本を呼び込むわかること図の上へ
- 向き:どちらの動きも、交点 F に近づく向き
点Pはインフレと赤字なので、財政支出を減らし(左へ)、利子率を上げます(上へ)。どちらも F に近づく向きです。
ポリシー・ミックスの例題
自分で解いてみるポリシー・ミックスの例題(政策割当と図の領域)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 3
点Qは IB より下なのでインフレ、EB より上なので黒字です。インフレには財政支出を減らし、黒字には利子率を下げて資本の流入を減らします。正解は3です。
- 1:EB の上下を逆に読んでいます。
- 2:IB の上下を逆に読んでいます。
- 4:割当を逆にしています(インフレに利子率の引上げ、黒字に財政支出の拡大)。
- 5:2本の線の上下を両方とも逆に読んでいます。
| 領域 | 状態 | 財政支出 | 利子率 |
|---|---|---|---|
| 両方の線より上 | 失業・黒字 | 増やす | 下げる |
| IB より上・EB より下 | 失業・赤字 | 増やす | 上げる |
| IB より下・EB より上 | インフレ・黒字 | 減らす | 下げる |
| 両方の線より下 | インフレ・赤字 | 減らす | 上げる |
まとめ覚えることと間違いやすい点
覚えることの表(変動相場制・固定相場制と財政政策・金融政策)
| 為替制度 | 財政政策 | 金融政策 |
|---|---|---|
| 変動相場制 | 効かない(自国通貨高で純輸出が減り、IS が戻る) | よく効く(自国通貨安で純輸出が増え、IS も右へ) |
| 固定相場制 | よく効く(自国通貨売りの介入で貨幣供給が増え、LM も右へ) | 効かない(自国通貨買いの介入で貨幣供給が減り、LM が戻る) |
資本移動が完全な小国(BP が世界の利子率 で水平)で、物価が一定のときの表です。縮小・引締めでも、効くか効かないかは同じです(向きが逆になるだけ)。
| 資本移動がゼロ(BP が垂直) | 財政政策 | 金融政策 |
|---|---|---|
| 変動相場制 | 効く(赤字で自国通貨安、IS と BP が右へ) | 効く(財政と同じ経路) |
| 固定相場制 | 効かない(赤字で自国通貨買いの介入、LM が左へ。利子率だけ上がる) | 効かない(LM が戻る) |
資本移動が不完全(BP が右上がり)のときは、表をそのまま使わず、点が BP の線より上か下かから連鎖を1つずつたどります。
よくある間違い
| 誤りの文 | 正しくはこう |
|---|---|
| 変動相場制では財政政策がよく効き、金融政策は効かない | 逆。資本移動が完全な小国の変動相場制では、財政が効かず金融がよく効く |
| が上がると自国通貨は高くなる(円高は1ドル何円の数が増えること) | が上がるのは自国通貨安。円高は1ドル何円の数が減ること |
| 為替の変化は投資を通じて IS を、貨幣需要を通じて LM を動かす | 経路は純輸出だけ。投資も貨幣需要も為替を含まず、LM は動かない |
| 変動相場制の財政拡大では、利子率が高いまま投資が減って所得の増加が打ち消される | 利子率は に戻る。打ち消すのは自国通貨高による純輸出の減少 |
| 自国通貨高の圧力には自国通貨を買い、貨幣供給が減る | 自国通貨を売る介入で、貨幣供給は増える |
| 自国通貨売りの介入で増えた貨幣は、買いオペで不胎化する | 売りオペ。不胎化は介入で動いた貨幣と逆向きの公開市場操作 |
| 変動相場制では、自由な資本移動と自由な金融政策は両立しない | 両立する。手放すのは固定相場 |
| 資本移動がゼロでも、固定相場制なら財政政策は効く | 資本移動ゼロの固定相場制では、財政も金融も効かない |
| 国内均衡に金融政策、対外均衡に財政政策を割り当てる | 国内に財政、対外に金融 |
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