ミクロ経済学で使う計算とは
30秒でわかるミクロの計算
ミクロ経済学の計算問題で使う数学は、ほぼ次の5つです。微分も、使うのは決まった形だけです。言葉の意味は、それぞれのタブで説明します。
べき乗の微分
微分して0とおく
連立方程式
三角形・台形の面積
コブ=ダグラス型
各論点のページは、この計算を使う所で一言だけ説明しています。くわしい使い方と練習は、このページのタブで確かめてください。
この計算が出てくる論点
| 計算 | 出てくる論点(解説ページ) |
|---|---|
| べき乗の微分 | 費用と供給・独占・寡占・効用最大化・外部性 など13論点 |
| 微分して0とおく | 費用と供給・独占・寡占・余剰分析・外部性 など9論点 |
| 連立方程式 | 需給の均衡・余剰分析・寡占・2期間の消費 などほぼ全部 |
| 三角形・台形の面積 | 余剰分析・貿易政策・外部性・独占・費用逓減産業 |
| コブ=ダグラス型 | 効用最大化・労働供給・2期間の消費・生産要素の投入・所得の変化と財の分類・交換経済とパレート最適 |
弾力性の計算は弾力性、期待値の計算は不確実性のページで扱います。
計算の一覧
微分べき乗の微分
べき乗の微分(限界費用・限界効用の出し方)
ミクロ経済学の「限界」は、「もう1単位増やしたときに、どれだけ増えるか」です。限界費用(MC)なら、生産量を1個増やしたときの総費用(TC)の増え方です。この増え方は、総費用の線の傾き(横に1進んだとき、縦にいくら上がるか)で表せます。線のある1点での傾きを式で出す計算が微分です。
下の図の総費用は です( は生産量〔個〕、50は固定費用=つくる量に関係なくかかる費用)。
- 総費用:つくる量が増えるほど、増え方が大きくなる線
- 1個増やす:10個から11個にすると総費用は250円から281円へわかること31円ふえる。これがおよその限界費用
- 微分:点Aちょうどの傾きは 2×10+10=30わかること微分で出す限界費用は30円。1個ぶんで測った31円とほぼ同じ
図の見方
- 総費用の線は、つくる量が増えるほど急になります。急なほど、1個増やしたときの費用の増え方が大きいということです。
- 10個から11個へ1個増やすと、総費用は250円から281円へ31円増えます(点Aから点B)。ただ、線は曲がっているので、1個ぶんで測るとAとBの間の平均の傾きになり、点Aちょうどの傾きから少しずれます。
- 点Aちょうどの傾きを出すのが微分で、下の公式で を微分すると 、10個なら 円です。試験では、この微分で出した値を限界費用として使います。
は を3回掛けたもの(べき乗)で、右上の小さな数3を指数といいます。
微分するときは、式を項ごとに分けて、1つずつ微分してから足します。
解き方の手順
- 1
項ごとに分ける
なら、・・・ の4つに分けます。 - 2
指数を前に出して1減らす
は 、 は です。前に付いている数は、そのまま掛けて残します。 - 3
1乗の項は数だけ、数だけの項は0
は なので、指数1を前に出して です。どんな数も0乗は1なので になります。 のように の付かない項(固定費用など)は、 を増やしても変わらないので0になって消えます。
よく出る形をまとめると、次のとおりです。
| 元の式 | 微分した式 | ひとこと |
|---|---|---|
| 指数3を前に、指数は2に | ||
| 1乗は数だけ残る | ||
| 数だけの項は消える | ||
| と直してから | ||
| と直してから |
ルートと分数は、指数に直してから微分する
ルート()や分数の形は、そのままでは手順が使えません。先に「何乗か」の形に直します。
- (ルートは 乗)
- (分母の は 乗)
- (答えを元の形に戻すとき)
たとえば ( は労働の量)は です。指数 を前に出し、指数から1を引くと なので、微分すると です。 なら です。
も同じで、 の指数 を前に出し、 乗にして です。
文字が2つある式は、もう一方をただの数とみる
効用関数 のように文字が2つある式で、X財の限界効用(X財だけを1単位増やしたときの効用の増え方)を出すときは、 を決まった数とみて で微分します。 が になり、 はそのまま掛けて残るので です。Y財の限界効用は、 を数とみて で微分し、 です。
効用関数が (自然対数。問題では とも書く)の形で出ることもあります。 は微分すると になる、と決まった形だけ覚えておけば足ります。たとえば なら、X財の限界効用は です。
例で確かめる総費用から限界費用を出す
総費用が のとき、5個つくる所の限界費用を出します。
項ごとに微分すると です(固定費用の40は消える)。 を入れると 円です。
微分の例題
自分で解いてみるミクロの計算の例題1(べき乗の微分)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 3
項ごとに微分すると、 は 、 は 、 は なので、 です。 を入れて 円で、正解は3です。
| 選択肢 | どこから出る値か |
|---|---|
| 1:20円 | の微分を とし、前の2を掛け忘れた() |
| 2:25円 | 総費用150円を6個で割った平均費用。限界費用とは別 |
| 4:62円 | 固定費用の30を微分しても残した() |
| 5:150円 | 6個のときの総費用そのもの |
最大微分して0とおく
微分して0とおく(利潤最大化・効用最大化の求め方)
利潤や効用を最大にする量は、「最大にしたい式を微分して0とおく」と出ます。理由は、式の線が山の形のとき、山の頂上では線が平らになり、傾きが0になるからです。
利潤は (パイ)という文字で表します。価格50円で売る企業の総費用が なら、利潤は総収入 から総費用を引いて、 です。微分すると で、これがその量での利潤の線の傾きです。
- 利潤の山:つくる量を増やすと利潤は増え、20個を過ぎると減る
- 山の左:10個の所の傾きは −2×10+40=+20わかることまだ増やすと利潤が増える
- 山の右:30個の所の傾きは −2×30+40=−20わかること減らすと利潤が増える
- 頂上:傾きが0の所が最大わかること−2Q+40=0 より20個、利潤300円
図の見方
- 山の左(10個)では傾きが とプラスなので、まだ量を増やすと利潤が増えます。
- 山の右(30個)では とマイナスなので、減らすと利潤が増えます。どちらでもない傾き0の点Mが頂上です。
利潤の式を微分した を0とおくと 個で、利潤は 円です。
なぜそうなるか「限界収入=限界費用」と同じ計算になる理由
利潤は「総収入 − 総費用」なので、微分すると「総収入の微分(限界収入、MR)− 総費用の微分(限界費用)」です。これを0とおくのは、 とおくのと同じです。
売り手が多く、価格を自分で決められずに決まった値段で売る企業(完全競争)では、総収入は「価格 × 量」の で、 はただの数です。 で微分すると が残るので、限界収入は価格に等しく、 になります。上の例でも、 を価格50円と等しくおくと 個で、同じ答えです。
解き方の手順
- 1
最大にしたい式を1つの文字で書く
利潤なら「価格 × 量 − 総費用」。価格が量で変わる独占なら、需要曲線の式を価格に入れて、量だけの式にします。 - 2
その文字で微分して0とおく
べき乗の微分を使い、出た式を とおきます。 - 3
山か谷かを確かめる
利潤が のような2次式なら、 の前の数がマイナスで山(最大)、プラスで谷(最小)です。それ以外の形( や を含む式)でも、微分して0とおく計算は同じです。平均費用の最低点のように、最小を出したいときにも使います。 - 4
量を元の式に入れる
利潤・価格を聞かれたら、出した量を元の式に入れて出します。
例で確かめる独占企業の利潤を最大にする量を出す
需要曲線が 、総費用が の独占企業です(価格が量で変わる)。
総収入は「価格 × 量」で なので、利潤は です。微分すると で、0とおくと 個、価格は 円です。総収入 を微分した限界収入 と、限界費用 を等しくおいても、同じ40個です。
最大の例題
自分で解いてみるミクロの計算の例題2(微分して0とおく)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 3
利潤は です。微分して0とおくと より 個、利潤は 円で、正解は3です。
| 選択肢 | どこから出る値か |
|---|---|
| 1:15個・450円 | 量は正しいが、固定費用50円を引き忘れた |
| 2:20個・350円 | の項を落として とした |
| 4:30個・−50円 | の微分を とし、 とした |
| 5:15個・1,200円 | 総収入 を利潤とした |
連立連立方程式
連立方程式(需要と供給の交点・均衡価格の求め方)
2本の線の交点は、両方の式を同時に満たす点です。需要曲線と供給曲線の交点なら、そこでは2本の価格が等しいので、2本の式を「等しい」とおいて解きます。この計算を連立方程式を解くといいます。
- 2本の式:同じ数量でも、需要の式と供給の式で価格が違う
- 交点:2本の価格が等しい所わかること100−2Q=10+Q より30個、価格は40円
図の見方
- 同じ数量でも、需要の式と供給の式では価格が違います。交点Eだけで2本の価格が等しくなります。
- の を右、数を左に集めると 、 で 個です。どちらかの式に入れて価格は40円です。これが均衡(需要量と供給量が等しい状態)の数量と価格です。
解き方の手順
- 1
式の形をそろえる
「」のように数量を左に書いた式は、両方とも でそろえるか、 に直します。 を について解くなら、、両辺を2で割って です。 - 2
等しくおいて1つの文字を出す
そろえた右辺どうしを等しくおき、文字を左、数を右に集めて解きます。 - 3
もう一方の文字を出す
出た値をどちらかの式に入れます。両方の式に入れて同じ値になれば、計算は合っています。
例で確かめる数量の形の式どうしを解く
需要曲線 、供給曲線 の市場の均衡を出します。
両方とも の形なので、そのまま等しくおきます。 より 、 円です。需要の式に入れて 個、供給の式でも 個で合います。
文字が数量どうしのとき(寡占の反応関数)
寡占の論点では、A社の量 とB社の量 の式(反応関数:相手の量に対して自分の利潤が最大になる量)を連立します。、 なら、2本目の に1本目を入れます。 です。 を左へ移すと 、 です。これを1本目に入れて です。2社の費用が同じで式の形がまったく同じときは、答えも同じ量になるので、 とおいて を解くと早く出ます。費用が違うときは、この近道は使えません。
連立方程式の例題
自分で解いてみるミクロの計算の例題3(連立方程式)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 2
供給曲線を について解くと です。 より 、 個、価格は 円で、正解は2です。
| 選択肢 | どこから出る値か |
|---|---|
| 1:25個・15円 | を と読み違えた |
| 3:20個・10円 | 数量20を の に入れてしまった |
| 4:40個・50円 | を右に移すときの計算を誤り、 とした |
| 5:30個・20円 | 数量と価格を入れ違えた |
面積三角形・台形の面積
三角形と台形の面積(消費者余剰・死荷重の計算)
余剰(市場で売り買いしたことで買い手・売り手が得をした額)・死荷重・税収は、需要曲線と供給曲線の図の面積で出します。直線の図なら、形はほとんど三角形・台形・長方形のどれかです。余剰の意味は余剰分析でくわしく説明しています。
余剰の三角形は直角三角形になることが多いので、直角をはさむ2辺の「縦の辺(価格の差)× 横の辺(数量の差)÷ 2」で出します。縦の辺は値段の差なので、どこからどこまでかを図の目盛りで確かめます。
下の図は、需要曲線 ・供給曲線 の市場です(連立方程式のタブと同じ市場。交点Eは30個・40円)。
- 上の三角形:消費者余剰。縦の辺60円(100−40)と横の辺30個わかること60×30÷2=900
- 下の三角形:生産者余剰。縦の辺30円(40−10)と横の辺30個わかること30×30÷2=450
- 台形:供給の線の下(固定費用を除いた費用の合計)。平行な2辺は10円と40円、間の幅は30個わかること(10+40)×30÷2=750
- 死荷重:1個18円の税で供給の線が上へずれ、取引は24個にわかること縦の辺18円(52−34)と横の幅6個の三角形で 18×6÷2=54
図の見方
- 価格40円の線より上の三角形(消費者余剰=買い手の得)は、縦の辺が 円、横の辺が30個で900円です。
- 価格の線より下の三角形(生産者余剰=売り手の得)は、縦の辺が 円で450円です。
- 供給の線の下の台形(固定費用を除いた、30個ぶんの追加の費用の合計)は、平行な2辺が10円と40円、幅が30個で750円です。
- 最後の段の三角形は、下の例で出す死荷重です。
解き方の手順
- 1
交点と、区切りの線を出す
均衡や課税後の数量・価格を連立方程式で出し、面積の頂点の座標を決めます。 - 2
形を見分ける
三角形・台形・長方形のどれか。複雑な形は、三角形と長方形に切り分けるか、大きな三角形から小さな三角形を引きます。 - 3
辺の長さは座標の差で
縦の辺は価格の差、横の辺は数量の差です。三角形・台形は最後に÷2を忘れないようにします。
例で確かめる従量税の死荷重を出す
上の市場に1個18円の税をかけると、供給曲線が18円上へずれて になります。
より課税後は24個です。死荷重(税で取引が減ったために、だれの得にもならずに失われた余剰)は、24個の所に立てた縦の辺と、そこから交点Eまでの横の幅でできる三角形です。24個の所で、需要の線は 円、課税前の供給の線は 円なので、縦の辺は 円(税額と同じ)、横の幅は 個です。面積は 円です。
面積の例題
自分で解いてみるミクロの計算の例題4(台形の面積)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 3
需要量は、20円のとき40個、30円のとき30個です。減った消費者余剰は、価格20円と30円の線、縦軸、需要曲線で囲まれた台形で、平行な2辺が40個と30個、幅が10円なので 円です。正解は3です。上がる前の消費者余剰 円から、上がった後の 円を引いても同じです。
| 選択肢 | どこから出る値か |
|---|---|
| 1:50円 | 台形の右の小さな三角形()だけを数えた |
| 2:300円 | 上がった後の30個に値上がり分10円を掛けた長方形だけ |
| 4:400円 | 上がる前の40個に10円を掛け、三角形の分を引かなかった |
| 5:450円 | 上がった後の消費者余剰そのもの |
コブ=ダグラスコブ=ダグラス型の早解き
コブ=ダグラス型の公式(効用最大化の早解き)
効用関数が の形(X財の量 と、Y財の量 の何乗かを掛けた形)をコブ=ダグラス型といいます。この形なら、効用を最大にする買い方は、所得 を指数の比 で分けるだけで出ます。
記号:・ はX財・Y財の価格です。 は「価格 × 量」で、X財に使う額です。予算の式 は「2つの財に使う額の合計が所得 」という意味です。
導き方:効用が最大の所では、限界代替率(MRS:X財の限界効用 ÷ Y財の限界効用)が価格の比 と等しくなります(理由は効用最大化の論点)。 を数とみて微分したX財の限界効用は 、Y財は です。割ると と が1つずつ打ち消し合い、MRS は です。 の両辺に と を掛けると 、つまり です。
解き方の手順
- 1
形を確かめる
掛け算の形 か(前に数が掛かっていてもよい)。 と を足した の形も同じ公式が使えます。足し算の などは使えません。 - 2
指数の比で所得を分ける
X財に 、Y財に を使います。指数の和が1でなくても、比で分ければよいです。 - 3
それぞれの価格で割る
使う額をその財の価格で割ると、買う量になります。
例で確かめる効用を最大にする買い方を出す
効用関数 、所得1,000円、X財の価格20円、Y財の価格30円のとき、効用を最大にする と を出します。
指数の比は なので、X財に 円、Y財に600円を使います。量は 、 です。MRS が価格の比 と等しいことでも確かめられます。
同じ考え方は、ほかの論点でも使えます。余暇と消費の効用(労働供給)、今年と来年の消費の効用(2期間の消費)、生産関数 の費用を最小にする投入(生産要素の投入。資本と労働に使う額の比が )がコブ=ダグラス型なら、同じく指数の比で分けます。
コブ=ダグラス型の例題
自分で解いてみるミクロの計算の例題5(コブ=ダグラス型)
選択肢を押すと、正解と解説が出ます。
正解は 2
の指数は1、 の指数は3なので、X財に所得の の300円を使います。量は で、正解は2です(Y財は900円で30。予算 円にちょうど合います)。
| 選択肢 | どこから出る値か |
|---|---|
| 1:10 | X財に使う300円を、Y財の価格30円で割った |
| 3:60 | 所得を半分ずつに分けた(指数の比を使わなかった) |
| 4:90 | 指数の比を逆にして、X財に を使った |
| 5:300 | 使う額のまま、価格で割らなかった |
まとめ覚えることと間違いやすい点
覚えることの表
| 計算 | 式・手順 | 使う場面 |
|---|---|---|
| べき乗の微分 | 、数だけの項は0 | 限界費用・限界効用・限界収入 |
| ルート・分数 | 、 に直す | 生産関数・効用関数 |
| 微分して0 | 最大にしたい式を微分して | 利潤・効用・税収の最大 |
| 連立方程式 | 形をそろえて等しくおく | 均衡・反応関数の交点 |
| 三角形・台形 | 底辺 × 高さ ÷ 2、(2辺の和)× 幅 ÷ 2 | 余剰・死荷重 |
| コブ=ダグラス型 | 所得を指数の比で分け、価格で割る | 効用最大化・費用最小化 |
よくある間違い
| 誤りのしかた | 正しくはこう |
|---|---|
| を微分して | 指数2を前の2に掛けて |
| 固定費用の数も微分で残す | の付かない項は微分すると0 |
| 平均費用(総費用 ÷ 量)を限界費用として使う | 限界費用は総費用を微分した式 |
| を と読む | 左辺がどちらの文字かを見て、そろえてから等しくおく |
| 三角形の面積で ÷2 を忘れる | 三角形・台形は最後に ÷2 |
| にもコブ=ダグラス型の公式を使う | 掛け算の形 (と )のときだけ |
| 微分して0の点を、谷の形でも最大とする | 2次式なら、 の前の数がプラスで谷(最小) |
次にやること
計算に慣れたら、使う論点の解説ページで、問題の中での使い方を確かめてください。微分は費用と供給、連立方程式と面積は余剰分析、コブ=ダグラス型は効用最大化から読むのがおすすめです。ほかの論点はミクロ経済学の解説一覧にあります。











